2 様々な取組みから見えてくるもの  このように各地域では、その地域の現状と特色によって、地域の人々がアイデアを出し協働しながら、着実な取組みが行われている。  第1章と2章では、人口減少・少子高齢化が進みまた厳しい財政状況の中で、これまでの仕組みが通用しないこと・新たなことが求められていることをみてきたが、本章で取り上げた様々な取組みには、今後目指すべき方向のヒントが隠れている。  人口が減少し高齢者の割合が増える中、従来の公共でできることには限界がある。官と民が適切に役割分担し、住民やNPO、企業等のパワーをうまく取り込むことが大切である。岩手県西和賀町の高齢者宅の雪下ろしボランティアや広島市の違反広告物除去ボランティア、糸魚川市の建設業者による耕作放棄地の復元など、新たな主体が人やまちのサポートを始めている。また、厳しい財政状況の下では、新しいものをつくることは難しい。既存のものをうまく利用して乗り切ることも大切である。北海道当別町のコミュニティバスや伊勢市の道路の改良では、既存のものを地域のニーズに応じて再編して対応した。さらに、安曇野市のオンデマンドタクシーや高松市の子育てを支援するタクシーでは、既存のものに新しい仕組みをプラスしている。  困難なことを逆手にとって新しい魅力を見いだせれば、さらに価値は広がる。武雄市における空き家バンクでは、活用されていないものに新たな命を吹き込んだ。津軽の地吹雪ツアーでは、視点を変えることによって“厄介者”であった地吹雪に地域特有の魅力を生み出した。京町家の取組みは、日本らしさへの再認識が地域に新たな価値を生み、旭川市のニンニク栽培や福島市の公営住宅管理では既存の技術を別の分野に持ち込むことによって、事業者が地域に新たな貢献をしている。  もちろん、下り坂を堪えるだけではなく、新しいチャンスを目指すことも重要である。越後妻有の芸術祭、広島市の水辺のオープンカフェ、上毛電気鉄道のサイクルトレインなど、分野は全く異なるが、それぞれちょっとした知恵を足すことで生活や地域にプラスアルファを生み出している。網走市や箱根町における取組みは、外へうまく発信することにより新たな活力を取り込んでいる。また、富山市のコンパクトシティの取組みや大岡山駅の病院開設などでは、新しい形態のまちづくりも行われている。  人口減少、少子高齢化、財政制約、という厳しい状況におかれている今、これらの事例から学ぶものは多い。“地域を理解し、アイデアを出し、官・民が連携して行動し、そして新たな価値を生み出す”ことにより、今後の社会を切り開いていかなければならない。