第8章 我が国の持続的発展のための国際的な連携の強化、国際貢献と国際競争力強化 第1節 国際的な連携・協調メカニズムの構築とイニシアティブの発揮 (1)交通分野における地球環境・エネルギー等に関する国際連携について  世界全体のCO2排出量の23%を占める交通分野において、環境・エネルギー対策に関する国際的な取組みを強化するべく、2009年(平成21年)1月、東京において、世界各国の交通担当大臣と関係国際機関代表が一堂に会し、「交通分野における地球環境・エネルギーに関する大臣会合」を開催し、「低炭素・低公害交通システムの実現」という長期ビジョンの共有やベストプラクティス(優良事例)の共有・キャパシティビルディングの強化等による途上国の取組み促進等を盛り込んだ大臣宣言が採択された。これを受け、同年6月、函館において高級事務レベルでのフォローアップ会合を開催し、大臣宣言の方向性を具体化するため、「戦略」「資金」「能力向上」の視点から各国の取組み促進に向けて活発な議論を行い、今後は各国の交通政策当局が意見交換ネットワークをさらに発展させることで一致した。第2回大臣会合はイタリアにて開催予定である。  また、52箇国の交通大臣が一堂に会し、交通政策に関する方向性を打ち出す国際枠組みであるITF(国際交通フォーラム)においては、2008年(20年)には「交通とエネルギー」を、2009年(21年)には「交通とグローバリゼーション」をテーマとして大臣会合が開催され、我が国がアジアで初めて2012年の大臣会合議長国に選出された。 (2)東アジア地域における連携強化  我が国では政府全体として、東アジア地域の安定と繁栄を確保するために広範な分野で協力を進めている。  交通分野では、2009年(平成21年)12月にベトナムのハノイで第7回日ASEAN交通大臣会合が開催され、日本とASEAN各国が交通分野における環境対策を計画的・戦略的に実施するための「日ASEAN交通分野における環境に関する行動計画」、交通政策立案に不可欠な交通統計データの整備・共有化に資するための「日ASEAN交通統計データベースガイドライン」及び日ASEAN交通連携ワークプラン(2009-2010)が承認された。  また、2010年(22年)に開催を予定している第3回日中韓物流大臣会合に向け、12項目の行動計画に取り組んでいる。2009年(21年)10月には、第4回日中韓観光大臣会合を開催し、3国間の観光交流・協力の推進のための「共同声明」を発表した。また、同年11月に第6回日中運輸ハイレベル協議を開催し、物流、運輸安全、環境等の分野について意見交換を行った。さらに2010年(22年)3月には、第6回日韓運輸ハイレベル協議を開催し、公共交通、物流等の分野について意見交換を行った。  建設分野では、2009年(21年)10月、第5回日・インドネシア建設会議をインドネシア共和国公共事業省と共催し、両国の建設行政における諸課題への協力の一層の推進を図るなど、東アジア諸国を中心として建設関連省庁及び建設業と将来の協働関係構築を目指した取組みを推進している。  海洋分野では、東アジア海域の持続可能な開発を進める、東アジア海域環境管理パートナーシップ(PEMSEA)の枠組みに参画している。2009年(21年)11月に、フィリピンのマニラにおいて開催された「第3回PEMSEA東アジア海洋会議」では、「東アジア海域における持続可能な開発と気候変動への適応に向けた統合沿岸域管理の実施強化に関するマニラ宣言」を採択した。 (3)自由で公正な海外建設市場の形成に向けた取組み  我が国建設企業が海外で事業活動を行うための自由なビジネス環境を確保するため、EPAやWTO等の外交交渉の場を通じ、各種規制の撤廃・緩和、調達手続の透明化など、進出相手国の建設市場環境の整備を強力に働きかけるための交渉を引き続き行っている。 (4)アジア太平洋地域インフラ担当大臣のネットワークの確立に向けた取組み  アジア太平洋地域におけるインフラ整備に関するノウハウ・技術の共有や相互連携を図るため、我が国が提唱し、20箇国・地域を対象としたインフラ担当大臣会合を開催している。2009年(平成21年)6月には第7回会合が、シンガポールにて、「水に関するインフラ計画と持続可能な都市開発の統合」をテーマに開催され、会合成果として大臣声明が採択されるとともに、第8回会合を、2010年(22年)に我が国にて開催することで一致した。 (5)国際的な水問題への対応  地球温暖化に伴う気候変動、世界人口の増加、開発途上国の急激な経済成長、都市化に伴う水需要の増大や水の汚染など、地球規模の水問題が様々な国際会議で取り上げられている。2009年(平成21年)3月に開催された第5回世界水フォーラムの閣僚級国際会議では、地球規模の課題に向けて「水の安全保障」を達成することがキーメッセージとして取りまとめられた。水問題解決のための有効な手法として、総合水資源管理(IWRM)計画を策定することが国際的に共通認識されていることから、UNESCOを中心とした「河川流域におけるIWRMガイドライン」の作成に協力するとともに、UNESCOやアジア河川流域ネットワーク(NARBO)と連携して、総合水資源管理の普及・促進に貢献している。水・衛生問題については、産学官による技術的支援等を行う下水道グローバルセンター(GCUS)及びアジア・太平洋地域の衛生分野のナレッジハブとして日本サニテーションコンソーシアム(JSC)を設立し、世界の水と衛生問題の解決に向けた国際協力を推進している。  地球温暖化に伴う気候変化の影響により増大する世界の水災害リスクに対応し、気候変化への適応に関する技術的な支援を通じた国際貢献を図るため、アジア大洋州地域等における具体的な適応策の立案手順等の提案や、JICAを通じインドネシア、フィリピン、ベトナム等への国際協力を行っている。また、水災害リスクマネジメント国際センター(ICHARM)が、衛星を活用した洪水早期警報システムの開発、人材育成等知見の蓄積をもとに、水災害に関するアジア太平洋地域のナレッジハブとしてアジア開発銀行と連携した国際支援を行っている。  また、国内外の水問題解決に向け、13府省庁で構成する「水問題に関する関係省庁連絡会」を設置し、連携強化を図っている。