コラム 深層崩壊推定頻度マップの公表
1.深層崩壊とは
深層崩壊は、山崩れ・崖崩れ等の斜面崩壊のうち、すべり面が表層崩壊よりも深部で発生し、表土層だけでなく深層の地盤までもが崩壊土塊となる比較的規模の大きい崩壊現象です。
古くは、明治22年8月に奈良県十津川村で発生し、総崩壊土砂量約2千万m3、死者約1,500名に及びました。近年では、平成9年7月に鹿児島県出水市で発生した針原川の土石流により、崩壊土砂量約15万m3、死者21名の被害をもたらしました。22年7月には鹿児島県南大隅町で深層崩壊による土石流が発生しましたが、既設砂防堰堤の効果、事前の避難により幸い人的被害はありませんでした。
また、20年6月の岩手・宮城内陸地震により、岩手県一関市、宮城県栗原市において15箇所の天然ダムが形成されるなど、地震においても深層崩壊が発生しています。
表層崩壊と深層崩壊のイメージ図
針原川(鹿児島県出水市)
2.深層崩壊に関する国土交通省の取組み
(1)深層崩壊に関する全国マップの公表
深層崩壊に関する全国マップの作成にあたっては、明治時代以降に豪雨又は融雪により発生した深層崩壊のうち、比較的規模が大きいもの(平均崩壊深がおおむね5m以上かつ崩壊土量が10万m3以上)でかつ精度の良い記録が残っているものを対象とし、122事例について整理しました。地質年代と形成過程及び崩壊密度の関係を整理した上で全国平均に対する崩壊頻度を算出し、日本全国の深層崩壊発生頻度を「特に高い」、「高い」、「低い」、「特に低い」の4つに分類した「深層崩壊推定頻度マップ」を平成22年8月に公表しました。
(2)深層崩壊に関する渓流レベルでの調査
全国マップの公表に引き続き、当面、深層崩壊の推定頻度の「特に高い」地域(国土の8%程度)を中心に深層崩壊発生のおそれがある渓流の抽出を行っています。
深層崩壊に関する渓流レベルでの調査結果については、精査が終了次第、順次公表する予定です。