第1節 ICTの利活用による国土交通分野のイノベーションの推進 

1 ITSの推進

 最先端のICTを活用して人・道路・車を一体のシステムとして構築する高度道路交通システム(ITS)は、高度な道路利用、ドライバーや歩行者の安全性、輸送効率及び快適性の飛躍的向上の実現とともに、交通事故や渋滞、環境問題、エネルギー問題等の様々な社会問題の解決を図り、自動車産業、情報通信産業等の関連分野における新たな市場形成の創出につながっている。
 また、「新たな情報通信技術戦略」に基づき、IT戦略本部に設置されたITSタスクフォースにおいて、交通事故等の削減のため、情報通信技術を活用した安全運転支援システムの導入・整備とともに、リアルタイムの自動車走行(プローブ)情報を含む広範な道路交通情報を集約・配信し、道路交通管理にも活用するグリーンITSを積極的に推進している。
 
図表II-9-1-1 ITS車載器で実現するスマートウェイサービス
図表II-9-1-1 ITS車載器で実現するスマートウェイサービス

1)社会に浸透したITSとその効果
(ア)ETCの普及促進と効果
 ETCは、今や日本全国の有料道路で利用可能であり、車載器の新規セットアップ累計台数は平成23年3月時点で約3,424万台、全国の高速道路での利用率は約86.2%となっている。これにより高速道路の渋滞原因の約3割を占めていた料金所渋滞がほぼ解消され、CO2排出削減等、環境負荷の軽減にも寄与している。さらに、ETC専用ICであるスマートICの導入や、ETC車両を対象とした料金割引等、ETCを活用した施策が実施されるとともに、有料道路以外においても駐車場での決済やフェリー乗船手続等への応用利用も可能となるなど、ETCを活用したサービスは広がりと多様化を見せている。
(イ)道路交通情報提供の充実と効果
 走行経路案内の高度化を目指した道路交通情報通信システム(VICS)対応の車載器は、平成22年12月末現在で約2,900万台が出荷されている。VICSにより旅行時間や渋滞状況、交通規制等の道路交通情報がリアルタイムに提供されることで、ドライバーの利便性が向上し、走行燃費の改善がCO2排出削減等環境負荷の軽減に寄与している。

2)新たなITSサービスの技術開発・実展開
(ア)スマートウェイの全国展開
 これまで、産学官が一体となり、スマートウェイの展開として新しい路車協調システムの研究開発・実証実験が進められてきた。スマートウェイとは、交通安全、渋滞対策、環境対策等を目的とし、人と車と道路とを情報で結ぶITS技術を活用した次世代の道路のことである。この一環として、ITSスポットと呼ばれる次世代のITSサービスの展開が進められており、平成23年1〜3月に、高速道路上を中心に設置されたITSスポットによる多様なサービスが全国で開始された。
 ITSスポット及び対応カーナビにより、これまでバラバラの車載器で提供されてきたカーナビ、VICS、ETC等のサービスをオールインワンで提供することができるようになり、ダイナミックルートガイダンス、安全運転支援及びETCの3つの基本サービスを実現した。また、一部の機種では、インターネット接続により地域観光情報の提供やカーナビ地図の更新も可能となった。
 今後は、官民が連携し、多様なITSサービスを実現させるオープンプラットフォームを構築することにより、駐車場等のキャッシュレス決済や渋滞多発地点における渋滞対策、物流支援等、様々なサービスへの展開が期待されている。
(イ)先進安全自動車(ASV)プロジェクトの推進
 ASV推進計画に基づき、ICT技術等の先進技術を利用してドライバーの安全運転を支援する先進安全自動車(ASV)の開発・実用化・普及に取り組んでいる。特に、インフラ協調による安全運転支援システムについては、大規模実証実験(ITS-Safety2010)の結果を踏まえ、産学官の協力により実用化に向けた検討を進めている。
 
図表II-9-1-2 通信を利用した運転支援イメージ(先進安全自動車(ASV))
図表II-9-1-2 通信を利用した運転支援イメージ(先進安全自動車(ASV))


注 車両からは直接見えない範囲の交通事象に対処すべく、車両がインフラ機器(路側設備や他車両に搭載された機器や歩行者が携帯する機器も含む。)との無線通信により情報を入手し、必要に応じて運転者に情報提供、注意喚起、警報等を行うシステム


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