第3節 産業の活性化 1 鉄道関連産業の動向と施策 (1)鉄道事業 1)鉄道事業の動向と施策  平成21年度の鉄道旅客の輸送人員は、景気低迷や少子高齢化の進展等厳しい事業環境にあるが、前年度に引き続き微増である。JRは、新幹線輸送、在来線輸送ともに減少しているが、民鉄は増加している。  21年度の鉄道貨物の輸送量については、景気低迷の影響等もあり、コンテナ輸送は1年を通して低調に推移した。22年1月以降は対前年比で増加に転じたものの、全体の輸送トン数及びトンキロは減少した。車扱貨物輸送については、石油が前年の反動で増加したが、全体では減送となった。  各鉄道事業者においては、快適で安心な鉄道空間の確保を図っており、例えば、主に都市圏の鉄道事業者が行っている女性等に配慮した車両の導入も着実に定着しつつある。また、13年のJR東日本「Suica」以降、鉄道系ICカードの導入が進んでおり、22年は富山地方鉄道「ecomyca」が導入されるなど全国に拡大している。さらに、ICカードの相互利用化については、25年春より、JR東日本等JR各社と首都圏、名古屋圏、関西圏、九州圏の主な私鉄がそれぞれ発行する、合計10種類のICカード乗車券の相互利用を開始する方針であり、更なる利用者利便の向上が期待される。 2)JRの完全民営化に向けた取組み  昭和62年4月の国鉄の分割・民営化により設立されたJR各社は、以来23年余りにわたり、それぞれの地域事情や経営環境を踏まえた経営努力を続けてきた。この間、JR東日本、JR東海及びJR西日本については、(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構の保有株式の売却も完了し、完全民営化されたが、国鉄改革の経緯を踏まえ、当分の間、JR会社間における相互の連携・協力の確保、利用者利便の確保、中小企業への配慮などに関する措置がとられている。  一方、JR北海道、JR四国、JR九州及びJR貨物については、各社とも、増収努力や経費削減等の取組みを行っているところではあるが、地域の足の確保や環境負荷の小さい鉄道貨物輸送の推進等社会的に重要な役割を担っていることから、経営基盤強化のため、従来の固定資産税の軽減措置等に加え、(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構特例業務勘定からの支援を行うこととし、そのために必要な関連法案が第177回国会に提出されたところである。 (2)鉄道車両工業  鉄道車両の生産金額は、その年の受注状況によって波はあるが、近年、横ばい傾向が続いている。平成21年度の新造車両数は2,195両、生産金額は2,251億円となっている。そのうち、国内向けの生産金額は、20年度比で増加した(20年度比120%)。また、海外向けの生産金額は同年度比でアジア向け、欧州向けとも減少し、全体としても減少した(同74%)。  車両メーカー等は、鉄道事業者と連携し、高速化、安全性・快適性等の向上、低騒音・バリアフリーといった様々な社会的ニーズを満たす車両の開発を進めているほか、基本設計や部品を共通化した「通勤・近郊電車の標準仕様ガイドライン」を参考に、設計作業の省力化、標準品の普及等を図ることにより、コスト低減に取り組んでいる。