7 道路交通における安全対策  平成22年の交通事故死者数は、10年連続で減少し、4,863人(対前年比1.0%減)となったが、近年下げ止まりの傾向である。また、交通事故死者数の約半数を65歳以上の高齢者が占めるほか、約90万人が交通事故で死傷しており、依然として厳しい状況である。このため、更なる交通事故の削減を目指し、警察庁等と連携して各種対策を実施している。 図表II-6-4-5 交通事故件数及び死傷者数等の推移 (1)幹線道路と生活道路における交通事故対策の重点的実施  幹線道路については、死傷事故の71%が全体の22%の区間に集中していることを踏まえ、幹線道路対策では、選択と集中、市民参加・市民との協働により重点的・集中的に交通事故の撲滅を図る「事故ゼロプラン(事故危険区間重点解消作戦)」を推進している。  また、「あんしん歩行エリア」を中心とする歩行者・自転車に係る死傷事故発生割合が大きい生活道路において、都道府県公安委員会及び道路管理者が連携し、歩道整備、車両速度の抑制、通過交通の抑制等の面的かつ総合的な交通事故対策を地域住民の主体的参加の下で実施している。 (2)ITSスポットを活用した高速道路上における安全運転支援  平成23年1月から3月にかけて全国の高速道路上に設置するITSスポットを活用した安全運転支援を推進している。 (3)安全で安心な道路サービスを提供する計画的な橋梁等の管理  今後、高度経済成長期に集中して建設された多くの橋梁等、高齢化した道路ストックが急増し、重大な損傷発生の危険性が高まることが懸念される。このため、高速道路から市町村道までの道路橋について定期点検に基づく「早期発見・早期補修の予防保全」を計画的に実施して長寿命化を実現し、安全・安心な通行を長期にわたり確保していく。また、地方公共団体では、約4割の市区町村において、人材、技術、資金の不足等の問題により、定期的な点検が実施できていない状況を解消するため、点検の責務及び技術基準の明示や技術支援、財政支援等の措置を講じている。 図表II-6-4-6 建設後50年以上の橋梁の割合 (4)自動車の総合的な安全対策 1)事業用自動車の安全対策  事業用自動車の安全対策として、自動車運送事業者に対し、運行管理者の設置や運転者の適性診断受診等を義務付けている。加えて、「今後10年間で事故死者数・人身事故件数の半減」、「飲酒運転ゼロ」を目標として掲げた「事業用自動車総合安全プラン2009」に基づき、更なる安全対策を実施している。また、目標の確実な達成に向け、点呼時におけるアルコール検知器の使用義務化やデジタル式運行記録計等の導入支援のほか、「事業用自動車総合安全プラン2009フォローアップ会議」を定期的に実施することで、PDCAサイクルに沿った継続的な取組みを進めている。 2)今後の車両安全対策の検討  平成18年の交通政策審議会報告書において掲げられた事故死者数等の削減目標の目標年を迎えたことを受けて、22年10月に交通政策審議会陸上交通分科会自動車交通部会技術安全WGを設置し、今後5〜10年先を念頭においた新たな目標の策定、目標達成に向けて取り組むべき事項及び方向性について具体的な検討を開始した。 3)安全基準の拡充・強化  車両の安全性の更なる向上のため、平成22年12月に「道路運送車両保安基準細目告示」を改正し、横滑り防止装置(ESC)及びブレーキアシストシステム(BAS)の乗用車への装備を義務付けることとした。また、ハイブリッド車等は構造的にエンジン音がなく、危険を感じるという意見を受け、「ハイブリッド車等の静音性に関する対策のガイドライン」を策定し、その対策の普及に向けた検討を行っている。 4)自動車アセスメントによる安全情報の提供  自動車とチャイルドシートに関する安全性能の評価結果を公表し、ユーザーの安全な自動車等の選択や製作者のより安全な自動車及びチャイルドシートの開発を促している。平成12年度から21年度の間に自動車190車種、チャイルドシート101種類の評価結果を提供することにより、自動車等の安全性能の向上に貢献している。 5)先進安全自動車(ASV)の開発・実用化・普及の促進  平成18年度から産学官の協力体制で第4期先進安全自動車(ASV)推進計画を進めており、衝突被害軽減ブレーキ等の実用化されたASV技術の本格的な普及促進、出会い頭衝突防止システムや右折時衝突防止システム等の通信を利用した次世代の安全運転支援システムの実用化に向けた検討を進めている。さらに、19年度から大型車用衝突被害軽減ブレーキに対する補助を行っており、22年度からは補助対象として、ふらつき警報等を追加した。 図表II-6-4-7 大型衝突被害軽減ブレーキの作動例 6)リコール制度の充実・強化  自動車リコール制度については、よりユーザーの視点に立ったものとなるよう情報収集体制及び調査分析体制の一層の強化について検討を行ってきた。また、平成22年8月に内閣府消費者委員会から提出された「自動車リコール制度に関する建議」について真摯に検討を進めるとともに、23年1月に開催された第44回消費者委員会において、ユーザーからの不具合情報の収集を強化するため、各自動車メーカーのホームページや市町村等の広報誌等で自動車不具合情報ホットラインの一層の周知を図ったことなどの実施状況の説明を行った。 7)自動車検査の高度化  不正な二次架装注の防止やリコールにつながる車両不具合の早期抽出等に資するため、情報通信技術の活用による自動車検査の高度化を進めている。 (5)自動車損害賠償保障制度による被害者保護  自動車損害賠償保障制度は、クルマ社会の支え合いの考えに基づき、自賠責保険の保険金支払い、ひき逃げ・無保険車事故による被害者の救済(政府保障事業)を行うほか、重度後遺障害者への介護料の支給や療護センターの設置等の被害者救済対策事業を実施するものであり、交通事故被害者の保護に大きな役割を担っている。 図表II-6-4-8 自動車損害賠償保障制度 注 部品等を取り外した状態で新規検査を受検し、検査終了後に当該部品を再度取り付けて使用する行為など