第4章 開かれた復興 (1)序  開かれた復興のイメージは、復興が被災地に止まらず、むしろ被災地における様々な創造的営みが日本全国に、ひいては世界各国に広がっていくことにある。成熟した先進国家における災害からの復興過程は、世界各国の人々が生き抜く一つの強力なモデルになりうる。  しかも、「ボランティア」、「共助」、「社会的包摂注」、「新しい公共」といった言葉が、今まさに生じつつある実態を指し示している。個人や社会の利益、さらには国境をこえた新たな社会貢献のあり方が、鮮明になってきている。  ここでもまた、共通して「つなぐ」ことの意味が含まれている。人と人がつながるなかで、これまで排除され「居場所と出番」がなかった人々にも、つながる契機がでてきたのだ。ボランティア活動の質量双方における飛躍的向上も、ボランティアと被災地をつなぐボランティアの登場によって可能となった。  災害の記憶や映像や記録を後世に残していくアーカイブの活動も、復興過程に「希望」を見出すことに連なる。人は自らの災害体験を語ることによって、既知の人のみならず、未知の人とつながっていく。しかも、そこには記憶を紡ぎ出してくれる人が存在する。ここでもまた、人は人と幾重にも「つなぐ」行為を繰り返している。 注 「社会的包摂」とは、地域や職場、家庭でのつながりが薄れ、社会的に孤立し生活困難に陥った人々を、もう一度社会の中に包摂しようという政策理念である。