第1節 震災からの復興 

6 復興事業の円滑な推進

(円滑な施工確保)
 復旧・復興工事が本格化する中、岩手県・宮城県・福島県の3県では、平成23年7月以降、建設技能労働者が不足基調に転じ、同年10月には大幅な不足となったほか、労務単価の上昇等により落札者のいない入札不調案件の増加傾向が生じ、事業における円滑な施工の確保が課題となった。
 このため、国、岩手県、宮城県、福島県、仙台市、(社)日本建設業連合会、(一社)全国建設業協会等関係業界団体で構成する「復旧・復興事業の施工確保に関する連絡協議会」を23年12月に発足させ、現況の情報交換や対応について意見交換を重ね、復興のための人材の確保や予定価格の積算の適正化等に連携して取り組むことを相互に確認した。24年2月、1)建設企業への調査や統計調査結果等をもとに、予定価格に直近の労務単価の実態を機動的に反映させるため、公共工事設計労務単価を改訂し、2)主任技術者の現場配置について、被災地域内の複数の工事で密接性・近接性が確保される場合には兼任を可能とするなどの取組みを実施した。
 
図表38 岩手県・宮城県・福島県・仙台市における応札状況

図表38 岩手県・宮城県・福島県・仙台市における応札状況
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(事業促進PPPの推進)
 三陸沿岸道路等の復興道路の新規事業化区間においては、民間の技術力を活用した事業推進体制の導入(事業促進PPP)を図っている。事業促進PPPでは、従来、発注者が行ってきた施工前段階の業務について、民間技術者チーム(「事業管理」、「調査・設計」、「用地」、「施工」等の専門家で構成)が発注者と一体となって、事業全体の最適な進め方を検討・実施する。具体的には、新規事業化区間を概ね10〜20kmごとに工区分けし、工区ごとに民間技術者チームを配置し、事務所と連携して業務を実施する。これにより、復興道路事業の円滑な進捗・早期整備を図ることとしている。
 
図表39 事業促進PPPの事業体制

図表39 事業促進PPPの事業体制

(被災地域の経済活動の復興に合わせたハード整備)
 鉄道や下水道等については、まちづくりの進捗状況に合わせて、立地、ルート変更の要否や規模等を検討・整備する必要がある。また、港湾や海岸堤防等のインフラについては、後背地の産業復興や下水道処理施設等の復旧に合わせて必要なものから順次復旧していく。復興需要後の新たな需要の創出に向けて、産業再生特区等による企業誘致の取組みが始まっており、これに必要となる各種インフラ整備等の経済活動の復興に合わせたハード整備も今後の課題である。


注 PPP:Public Private Partnership の略(官民連携、公民協働の意)

 

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