第4節 健全な水循環系の構築 

2 水環境改善への取組み

(1)水質浄化の推進
 水質悪化の著しい河川において、浄化導水、底泥浚渫、植生浄化等の水質浄化を霞ヶ浦(茨城県)、宍道湖・中海(島根県・鳥取県)等において行い、清浄な流水の確保を図っている。
 また、水環境の悪化が著しい全国34の河川等で、水環境改善に積極的に取り組んでいる地元市町村等と河川管理者、下水道管理者等の関係者が一体となり、「第二期水環境改善緊急行動計画(清流ルネッサンスII)」を策定・実施している(34地区を選定)。
 
図表II-7-4-2 清流ルネッサンスII

図表II-7-4-2 清流ルネッサンスII

(2)水質の調査と水質事故対応
 良好な水環境を保全・回復する上で、河川・湖沼・ダム・貯水池の水質調査は重要であり、平成22年度は109水系の1,103地点を調査した。
 また、市民と協働で、水質調査マップの作成や水生生物調査を実施している。さらに、河川を多様な視点で総合的に評価する新しい水質指標に基づき、一級河川で住民協働調査を実施した結果、約19%(60地点/320地点)が「泳ぎたいと思うきれいな川」と判定された。
・全国で見ると、平成22年にBOD(生物化学的酸素要求量)値(又はCOD(化学的酸素要求量)値)が環境基準を満足した調査地点の割合は91%で、2年連続で過去最高となった。
・河川の調査地点のうち、BOD値がサケやアユが生息できる良好な水質とされる3.0mg/L以下となった地点は95%であった。
・人の健康の保護に関する環境基準項目(ヒ素等27項目)については、環境基準を満足した調査地点の割合は99%で、ほとんどの地点で満足している。
 
図表II-7-4-3 BOD値(又はCOD値)が環境基準を満足した調査地点の割合

図表II-7-4-3 BOD値(又はCOD値)が環境基準を満足した調査地点の割合
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 一方、油類や化学物質の流出等による河川の水質事故は、平成22年に一級水系で1,420件発生した。水質汚濁防止に関しては、河川管理者と関係行政機関により構成される水質汚濁防止連絡協議会を全国109水系のすべてに設立し、水質事故発生時の速やかな通報・連絡、オイルフェンスの設置等被害の拡大防止に努めている。

(3)閉鎖性海域の水環境の改善
 東京湾、伊勢湾、瀬戸内海等の閉鎖性海域では、陸域から流入する有機汚濁物質及び窒素・リンが多いことや、干潟・藻場の消失により海域の浄化能力が低下したことなどにより赤潮や青潮が発生し、漁業被害等が生じている。このほか、漂流ごみによる環境悪化、船舶航行の障害等多くの問題が生じている。
 この状況を改善するため、1)汚泥浚渫や覆砂による底質改善、2)干潟・藻場の再生や生物共生型護岸の整備による生物生息場の創出、3)環境整備船による漂流ごみ・油の回収、4)下水道整備等による海域への流入汚濁負荷の削減等、美しい海域を取り戻す取組みを推進している。

(4)水環境改善に向けた下水道整備の促進
 流域別下水道整備総合計画の策定・見直しを適切に進め、閉鎖性水域における富栄養化の原因である窒素・リン等を除去する下水道の高度処理を推進する。また、施設更新の時期に達しない処理施設においては、部分的な施設・設備の改造等により早期の水質改善を目指す段階的な高度処理を併せて促進している。
 合流式下水道については、中小都市では平成25年度末、大都市では35年度末までに雨天時に雨水吐から放流される未処理下水の量と頻度の抑制等により、対策の完了を図ることとしている。

(5)地域のニーズに応じた水路の再生等
 近年、身近な河川や水路等に水を流すことにより、親水性を高め、水路等を浄化し、また、生物の生息・生育環境及び歴史的文化遺産を保護・保全しようとする地域のニーズが一層高まっている。このため、「環境用水に係る水利使用許可の取扱いについて」に基づき、一定量を通年通水する水利使用を認めるとともに、許可基準を明らかにし「まちの清流」の再生に取り組んでいる。


注 水質、親水空間、修景等生活環境又は自然環境の維持、改善等を図ることを目的とした用水

 

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