第4節 多国間・二国間交渉等を通じた取組み 

第4節 多国間・二国間交渉等を通じた取組み

1 多国間交渉・フォーラムを通じた取組み

(1)世界貿易機関(WTO)への対応
 WTOドーハ・ラウンドにおいて、一層の自由化を目指し、我が国は、サービス貿易交渉において、海運・建設分野における複数国会合の議長を務めるなど、各分野における交渉に積極的に参加している。また、政府が行う調達に関する規律を設けている政府調達協定(GPA)については、手続の透明性の確保と市場参入の拡大を図ることを目的とした改正交渉が、平成23年12月に行われたWTO/GPA改正交渉関係閣僚会合において妥結した。

(2)アジア太平洋経済協力(APEC)への対応
 APECは貿易・投資の自由化及び円滑化と経済・技術協力を推進しており、国土交通省では、実務者レベルで行う交通WG(作業部会)及び観光WGを中心に積極的に取り組んでいる。交通WGは、分野別専門家会合で陸・海・空・インターモーダルについて議論を行っており、この成果を踏まえて平成23年9月には第7回交通大臣会合が米国で開催された。本会合には国土交通副大臣が出席し、交通に関する自然災害への準備・対応・復旧、日本における航空セキュリティに係る取組みについて発表を行った。観光WGは、APEC域内の観光振興に向け、域内に共通した政策的諸課題について議論を行っている。

(3)経済協力開発機構(OECD)への対応
 OECD造船部会における健全な造船市場の構築、公正な競争条件の整備及び新興造船国との対話強化、地域開発政策委員会(TDPC)における国土・地域政策等に関する各加盟国の政策レビュー、金融危機以降に進めているグリーン成長戦略における都市・地域での政策の比較検討等に積極的に取り組んでいる。OECD及び国際交通フォーラム(ITF)が共同で設置している共同交通研究センター(JTRC)においては、道路安全施策の有効性、都市での自転車走行の安全性等の研究ワーキングへ参画し、加盟国に共通した政策課題について調査研究を行っている。

(4)国際海事機関(IMO)、国際労働機関(ILO)への対応
 我が国は世界有数の海運・造船国として、IMOの活動に積極的に参加し、主導的な役割を果たしている。平成23年11月の総会における理事国選挙で再選を果たしたのに加え、24年1月には、関水康司氏が、日本人として初めてIMO事務局長に就任した。最近の主な取組みとしては、船舶からのCO2排出規制の導入注1、ソマリア沖海賊対策注2等が挙げられ、我が国はこうした課題に積極的に貢献している。
 平成18年にILOにおいて採択された海上労働条約は、船員の労働環境の向上及び国際海上輸送における公正な競争条件の確立を図るものであり、我が国では本条約の採択直後より、国内関係者間において本条約に対応した国内制度の策定に関する検討・調整を実施するなど、本条約の締結に向けた取組みを進めている。

(5)国際民間航空機関(ICAO)への対応
 ICAOは、国際民間航空の安全かつ整然とした発達及び国際航空運送業務の健全かつ経済的な運営に向け、一定のルール等を定めている。我が国は加盟国中第2位の分担金を負担し、また、第1カテゴリー(航空輸送において最も重要な国)の理事国として、ICAOの諸活動に積極的に参加し、国際民間航空の発展に寄与している。

(6)各分野における多国間の取組み
1)道路分野での取組み
 我が国が副会長を務める世界道路協会(PIARC/WRA)について、15の技術委員会に参画するなど、道路及び道路交通に関する技術交流・情報共有を推進している。平成23年9月には同協会が主催する世界道路会議が開催され、東日本大震災に対する復旧活動や得られた教訓等について世界各国に情報発信するとともに、高速道路技術やITS技術等の紹介を行った。このほか、ITSに関する世界的な視野からの発表・討議が行われるITS世界会議に参加し、日本におけるITSの取組みについてアピールを行うとともに、各国との連携・協力に積極的に取り組んでいる。

2)海上保安の分野での取組み
 北太平洋海上保安フォーラム(北太平洋地域6箇国(日、加、中、韓、露、米))及びアジア海上保安機関長官級会合(ASEAN地域を含むアジア地域の17箇国と地域)を通じて、海賊及び海上セキュリティ対策等、海上保安機関間の連携・協力を積極的に推進しているほか、国際海事機関(IMO)、国際水路協会(IHO)、コスパス・サーサット理事会注3、国際航路標識協会(IALA)、国際連合教育科学文化機関・政府間海洋学委員会(IOC)等、国際機関を通じた国際貢献にも努めている。

3)測量・地図分野での取組み
 地球地図プロジェクト注4推進のため、地球地図第2版整備に向けた途上国への技術支援、気候変動枠組条約締約国会議等の場を通じたプロジェクト普及活動を実施している。また、国連アジア太平洋地域地図会議の勧告で設置されたアジア太平洋GIS基盤常置委員会(PCGIAP)の副会長を務めるほか、関係各国と協働で地殻活動監視を推進している。さらに、平成23年7月に国連経済社会理事会において設置が採択された地球規模の地理空間情報管理に関する国連専門家委員会(UNCE-GGIM)に積極的に参画するとともに、地理空間情報分野の国際連携において主導的役割を果たしている。

4)気象・地震津波分野での取組み
 世界気象機関(WMO)の枠組みの下、気象観測データや技術情報の相互交換に加え、我が国の技術を活かした台風や気候等の情報を各国に提供し、世界の気象事業の推進に協力している。また、IOCの枠組みの下、北西太平洋及びインド洋における津波情報を各国に提供し、沿岸諸国の津波防災に貢献している。


注1 平成23年7月、我が国の主導によりMARPOL条約付属書VI(船舶からの大気汚染防止のための規則)を改正し、燃費基準をはじめとする国際海運からのCO2排出規制の導入を実現
注2 IMOでは、海賊行為等の抑制のための行動指針(ジブチ・コード)を策定し、これに基づき海賊情報の共有や沿岸国のキャパシティビルディング等の対策を進めており、我が国は人的・資金的な面で積極的に貢献
注3 人工衛星によって遭難者を迅速に発見し、救助するための国際協定を締結した国々によって設立された国際機関であるコスパス・サーサットの運営方針等を決定するため、毎年開催されている国際会議
注4 地球環境問題の分析等に必要な基盤的な地理情報データベース(地球地図データ)を世界各国の地図作成機関の自発的協力の下で整備するプロジェクト

 

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