コラム タイの洪水被害に対する国土交通省の取組み  平成23年10月、タイでは6月から降り続いた雨の影響により、チャオプラヤ川流域で洪水が発生、アユタヤ及びその近郊の7工業団地を含む広い範囲で浸水被害が発生した。死者・行方不明者は800名に及び、さらに、この洪水の影響はタイ国内にとどまらず、サプライチェーンの寸断等世界中に広がった。  タイ政府の要請を受け、洪水被害を受けたタイへの排水支援の一環として、排水対策の専門家及び中部地方整備局の保有する排水能力が高く機動性に優れた排水ポンプ車注10台を海外に初めて派遣した。  排水ポンプ車は、11月5日に横浜港を出港し、11月18日にタイ国に到着、11月19日のロジャナ工業団地を皮切りに、工業団地、大学、住宅地等、計7地区において排水活動を実施した。この活動には、国際緊急援助隊として国土交通省地方整備局、外務省、JICA、民間企業による官民連携の専門家チーム計51名(延べ880人・日)が派遣され、現地関係者との調整、現地調査、タイ作業員に対する技術指導等を行った結果、12月20日までの32日間で約810万m3(東京ドーム約7杯分、25mプール約23,000杯分)の排水に成功した。また、洪水発生後、(独)土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)では、降雨流出氾濫モデル(RRI モデル)を用いてチャオプラヤ川の氾濫状況の把握と変化予測を公表した。  このように、人・モノを組み合わせた取組みは初の試みであり、今後更に、災害時だけではなく、平常時からの防災協力関係の強化を目指し、我が国の総合力を活かした「防災パッケージ」の提供を進めていく。 注 派遣した排水ポンプ車は、毎分30m3の排水能力を持ち、25mプールを約10分で空にすることが可能である。東日本大震災においても津波浸水地域の排水活動に従事した。