2 運輸部門における対策運輸部門における対策  我が国全体のCO2排出量の約2割を占める運輸部門からの排出は、平成22年度の確定値によると、2億3,200万トンであり、目標達成計画における22年度の目安としての目標である2億4,000〜2億4,300万トンを20年度以降3年連続で達成しており、更なる排出削減に向けた取組みを推進している。 (1)自動車単体対策及び走行形態の環境配慮化 1)自動車の燃費改善  「エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法)」に基づくトップランナー方式注1の燃費基準の策定や自動車の燃費の公表等を行っており、平成19年には27年度を目標年度とした燃費基準を策定している。22年度に出荷されたガソリン乗用車のうち半数以上が27年度を目標年度とした燃費基準を達成しており、平均燃費値は16年度と比較して約22%向上した。さらに、23年10月に、32年を目標年度とする新たな燃費基準の最終取りまとめを行い、より一層の燃費改善を図ることとしている。 2)燃費性能・排出ガス低減の向上を促す仕組み  消費者が容易に識別・選択できるよう、低燃費車の普及促進を目的とした自動車燃費性能評価・公表制度を実施している。また、最新の排出ガス基準値よりも有害物質を低減させる自動車については、その低減レベルに応じ、低排出ガス車認定制度を実施している。なお、これらの制度による燃費性能等の表示については、「平成27年度燃費基準達成車」等のステッカーを貼付している。 3)環境対応車の普及促進  環境性能に優れた自動車に対して自動車重量税・自動車取得税を減免する特例措置(エコカー減税)や、自動車税の税率を軽減する一方、新車新規登録から一定年数以上を経過した自動車については税率を重課する特例措置(自動車税のグリーン化)等を講じている。自動車メーカーの技術開発や商品販売努力、消費者の環境への関心の高まりにより、平成23年度におけるエコカー減税対象車の販売台数は、販売台数全体の約81%(約367万台)を占めている。  さらに、地球温暖化対策、大都市地域等における大気汚染対策等の観点から、トラック・バス・タクシー事業者を中心に、CNG自動車注2、ハイブリッド自動車、電気自動車の導入等に対する補助を行うなど、環境対応車の普及促進のための施策を実施した。 4)次世代低公害車等の開発、実用化、利用環境整備  次世代大型車の開発・実用化を促進するため、平成23年度より、高効率ハイブリッドトラック、次世代バイオディーゼルエンジン、電気・プラグインハイブリッドトラック及び高性能電動バスの技術開発を行っている。今後、これらの試作車に係る実使用条件下での実証走行試験等を行い、実用化に向けた取組みを進める。また、22年度より電動バス・超小型モビリティ等の環境対応車が利用しやすいまちづくりを実現することを目的として、実証実験等を実施している。燃料電池自動車等については、国連自動車基準調和フォーラム(WP29)における世界統一基準の策定作業に積極的に参加し、その早期策定に向けて貢献している。 5)エコドライブの普及・推進  関係省庁と連携し、11月を「エコドライブ推進月間」とし、シンポジウムや講習会等を集中的に実施したほか、プレスリリース等により、エコドライブの普及啓発活動に努めている。さらに、自動車運送事業者等へのエコドライブ管理システム(EMS)注3用機器によるCO2排出の削減効果について情報提供を図り、当該システム導入の普及・促進に努めている。 (2)交通流の円滑化  交通流の円滑化による走行速度の向上が実効燃費を改善し、自動車からの二酸化炭素排出量を減らすことから、様々な交通流対策を実施している。具体的には、都市部における交通混雑を解消させるため、都心部を通過する交通の迂回路を確保し都心部への流入の抑制等の効果がある環状道路等幹線道路ネットワークの整備、交差点の立体化等を推進するとともに、道路空間の再配分等による自転車利用環境の整備を推進している。また、高速道路上を中心に設置したITSスポット等の道路インフラから詳細な道路交通状況等の情報を提供することで、渋滞の解消を図っている。さらに、交通阻害の一因となっている開かずの踏切等を解消する連続立体交差事業等や効果が早期に発現する踏切の拡幅事業等を推進している。 (3)物流の効率化  国内物流の輸送機関分担率(輸送トンキロベース)はトラックが最大であり、60%を超えている。トラックのCO2排出原単位注4は、大量輸送機関の鉄道、内航海運より大きく、物流部門におけるCO2排出割合は、トラックが約90%を占めている(鉄道・内航海運は合計で約8%)。国内物流を支えつつ、CO2の排出を抑制するために、トラック単体の低燃費化や輸送効率の向上と併せ、トラックの自営転換注5を含め、鉄道、内航海運等のエネルギー消費効率の良い輸送機関の活用を図ることが必要である。鉄道や海運へのモーダルシフトを推進すべく、隅田川駅の鉄道輸送力増強事業を実施(北九州・福岡間については平成23年3月完成)しているほか、省エネ船の建造促進等内航海運・フェリーの活性化に取り組んでいる。加えて、「エコレールマーク」(23年12月末現在、商品71件(121品目)、取組み企業74件を認定)や「エコシップマーク」(23年12月末現在、荷主63者、物流事業者74者を認定)の普及に取り組んでいる。さらに、国際海上コンテナターミナル等の整備により、国際貨物の陸上輸送距離削減を図っている。  このほか、関係省庁、関係団体等と協力して、グリーン物流パートナーシップ会議を開催し、荷主と物流事業者がパートナーを組んで実施するCO2排出削減に関する取組みについて、表彰制度や優良事例紹介等を通じ支援している。また、22年3月には同会議の下に荷主及び物流事業者団体、行政機関等で構成される「モーダルシフト等推進官民協議会」を設置し、23年10月に「中間とりまとめ(鉄道・船舶へモーダルシフトの推進等に向けた取組)」を公表した。さらに、23年度に創設した「モーダルシフト等推進事業」により、荷主及び物流事業者等の物流に係る関係者で構成される協議会が実施するモーダルシフト等の取組みを支援している。 図表II-7-1-2 グリーン物流パートナーシップ会議を通じた取組みの推進 (4)公共交通機関の利用促進  自家用乗用車から公共交通機関へのシフトは、自動車の走行量削減になり、地球温暖化対策の面から推進が求められている。このため、ICカードの導入等情報化の推進や乗継ぎの改善等による公共交通利便性向上のほか、エコ通勤優良事業所認証制度による事業所単位でのエコ通勤の取組みを推進するとともに、地域独自のエコ通勤推進施策との連携を行うなどの通勤交通グリーン化を展開した。さらに、これまで実施した「環境的に持続可能な交通(EST)モデル事業」の取組成果の分析及び有効性の検証を行い、EST実現に取り組む地域に対し情報提供を全国規模で実施した。 図表II-7-1-3 モビリティ・マネジメントによる「エコ通勤」の推進 (5)鉄道・船舶・航空のエネルギー消費効率の向上 1)鉄道分野の更なる環境性能向上に資する取組み  鉄道は他のモードに比べて環境負荷の小さい交通機関であるが、更なる負荷の軽減を図るため、エネルギー効率の良い車両等の技術開発及び導入を促進している。 2)海運における省エネ・低炭素化の取組み  内航海運においては、「海運グリーン化総合対策」として、スーパーエコシップ注6等の普及促進、省エネ・低炭素化に資する新技術や設備の導入に対する補助により、船舶の省エネ化を促進している。また、外航海運においては、「海洋環境イニシアティブ」として、船舶からのCO2排出量の30%削減を目標とする省エネ・低炭素化技術の開発支援とともに、当該技術の普及促進のための国際標準化戦略を推進しており、我が国は、燃費規制、経済的規制等の国際的枠組み作りの議論を主導している。 3)航空分野のCO2排出削減の取組み  飛行時間・経路の短縮を可能とする広域航法(RNAV)、運航者が希望する最も効率的な高度を飛行できるUPR注7方式の導入、最小のエンジン推力を維持し、降下途中に水平飛行を行うことなく継続的に降下する継続降下運航(CDO)方式の導入等の航空交通システムの高度化や、航空機用地上動力設備(GPU)の利用促進、空港内GSE注8車両のエコカー化等のエコエアポートづくりを推進している。また、管制機関と航空会社が連携をとり、効率的な運航を目指す「アジア太平洋環境プログラム」(ASPIRE)注9へ参画するなど、国際的な取組みの強化も実施している。 (6)国民・民間事業者による取組みの促進  地球温暖化対策を更に進めるためには、国民の理解と積極的な行動が不可欠であるため、交通観光分野のカーボンオフセットの普及を促進している。さらに、中小規模の事業者が環境に配慮した事業活動を自主的に推進できるよう、自動車、海運、倉庫及び港湾運送の事業ごとのグリーン経営推進マニュアルに基づき、事業者が実施する「グリーン経営認証制度」を進めている。  また、輸送分野におけるエネルギー使用量の更なる抑制等を目的として、「省エネ法」に基づき、特定輸送事業者及び特定荷主による定期報告書等の提出を義務付け、省エネに向けた取組みを進めている。 図表II-7-1-4 「省エネ法」による輸送分野のエネルギー使用効率の改善 注1 現在商品化されている製品のうち、燃費が最も優れているものの性能、技術開発の将来の見通し等を勘案して基準を定める方式 注2 Compressed Natural Gas 自動車(天然ガス自動車)のこと。 注3 自動車の運行において計画的かつ継続的なエコドライブの実施とその評価及び指導を一体的に行う取組み 注4 貨物1トンを1km輸送するときに排出されるCO2の量 注5 自家用トラック(自家用貨物を自ら運ぶトラック)から、複数荷主の積合せ貨物の運送等によって輸送効率の向上を図り、運送コストを低下させるため営業用トラック(他人からの依頼に応じ、貨物を有償で運ぶトラック)へ転換すること。 注6 電気推進システムを採用し、CO2、NOxや燃費の削減に資する優れた環境性能と経済性を有する次世代内航船 注7 User Preferred Route 注8 Ground Service Equipments 注9 Asia and Pacific Initiative to Reduce Emissions