2 豊かで美しい河川環境の形成 (1)良好な河川環境の保全・形成 1)多自然川づくり、自然再生の推進  河川整備に当たっては、「多自然川づくり基本方針(平成18年10月策定)」に基づき、治水上の安全性を確保しつつ、生物の生息・生育環境及び良好な河川景観の保全・復元に努めている。  また、自然再生事業等による湿地の再生や川本来の砂利が豊かな河原の復元、魚道整備等による魚類の遡上・降下環境の改善等を推進するとともに、これらを多様な主体と連携して進めることによりエコロジカル・ネットワークを形成注し、流域の生態系の保全・再生を推進している。  さらに、これらの取組みをより効果的に進めるため、河川水辺の国勢調査や世界最大級の実験水路を有する自然共生研究センターにおける研究成果等を活用するとともに、学識経験者や各種機関との連携に努めている。 2)河川における外来種対策の実施  生物多様性を保全する上で大きな脅威の1つである外来種は、全国の河川において生息域を拡大しており、生態系への影響等が問題となっている。この対策として、「改訂版河川における外来種対策の考え方とその事例(平成23年2月)」等の周知を行うとともに、各地で外来種対策を実施している。 (2)河川水量の回復のための取組み  良好な河川環境を保全するには、豊かな河川水量の確保が必要である。このため、河川整備基本方針等において動植物の生息・生育環境、景観、水質等を踏まえた必要流量を定め、この確保に努めているほか、水力発電所のダム等の下流の減水区間における清流回復の取組みを進めている。また、ダム下流の河川環境を保全・改善するため、洪水調節に支障を及ぼさない範囲で洪水調節容量の一部を有効に活用するダムの弾力的管理及び弾力的管理試験を行っている(平成23年度は、全国の計21ダムで実施)。さらに、平常時の自然流量が減少した都市内河川では、下水処理場の処理水の送水等により、河川流量の回復に取り組んでいる。 (3)山地から海岸までの総合的な土砂管理の取組みの推進  近年、土砂の流れの変化による河川環境の変化や海域への土砂供給の減少、沿岸漂砂の流れの変化等による海岸侵食等が気候変動により加速するおそれがあることから、山地から海岸まで一貫した総合的な土砂管理の取組みを関係機関が連携して推進している。具体的には、渓流、ダム、河川、海岸における土砂の流れに起因する問題に対応するため、関係機関との事業連携のための方針の策定を目指すなど、連携の強化を進めている。 図表II-7-3-1 総合的な土砂管理の取組み (4)河川における環境教育  地域に身近に存在する自然空間として、川においては、近年、環境学習や自然体験活動等の様々な活動が活発に行われている。また、子どもが安全に水辺で学び、遊ぶためのプロジェクトの推進や情報発信を行うとともに、川には危険が内在し、安全に活動するためには正しい知識が不可欠であることから、市民団体が中心となって設立された特定非営利活動法人「川に学ぶ体験活動推進協議会(RAC)」等と連携し、川の指導者の育成等を推進している。さらに、急な増水による水難事故を防止するため、平成19年度に策定した「急な増水による水難事故防止アクションプラン」や20年7月に発生した兵庫県都賀川における水難事故を受けて取りまとめられた「中小河川における水難事故防止策検討WG」報告書等を参考に、水難事故を防止するための対策に取り組んでいる。 ○子どもの水辺再発見プロジェクト  市民団体、教育関係者、河川管理者等が連携して、子どもの水辺を登録し、子どもの水辺サポートセンターにおいて様々な支援を実施。平成23年3月末現在、290箇所を登録。 ○水辺の楽校プロジェクト  子どもの水辺として登録された箇所において、堤防の緩傾斜化や安全に水辺に近付ける河岸整備等を実施。24年3月末現在、280箇所を登録。 ○全国水生生物調査  川にすむ生き物を調べることを通じて、身近な河川に接し、川への関心を呼び起こすことを狙いとして実施。22年度は71,395人が参加。調査地点(3,000地点)の57%で、「きれいな水」と判定された。 注 自然地を保全・再生し、それらをつなぐことにより、生物の移動経路を確保し、自然の働きを回復させることで、豊かな自然を再生する取組み