第3節 国際的な連携・協調メカニズムの構築とイニシアティブの発揮 (1)交通分野における地球環境・エネルギー等に関する国際連携について  毎年、53箇国の交通担当大臣を中心に、世界的に著名な有識者・経済人も交え、世界全体を視野に入れた交通政策に関する方向性を打ち出す国際枠組みである国際交通大臣会議(ITF)への積極的な参画を行っている。平成23年5月の大臣会合(テーマ:「社会のための交通」)では、我が国は第1副議長国を務め、大臣宣言においては東日本大震災に関する記載が盛り込まれた。また、24年5月に予定されている大臣会合においては、「シームレスな交通」のテーマの下、我が国が議長国を務めることとなっており、23年10月には準備会合を東京で開催するなど、開催に向けた準備を進めているところである。  また、我が国は、世界各国の交通担当大臣と関係国際機関代表が交通分野における環境・エネルギー対策に関して議論を行う「交通分野における地球環境・エネルギーに関する大臣会合(MEET)」に積極的に参画している。第1回大臣会合は東京で、第2回大臣会合はイタリアにおいて開催され、それぞれ交通分野における環境・エネルギー対策に関する国際的な取組みの方向性を示す大臣宣言を採択した。第3回大臣会合はフランスにて開催予定である。 (2)東アジア地域における連携強化  政府全体として、東アジア地域の安定と繁栄を確保するために広範な分野で協力を進めている。  交通分野では、平成23年12月にカンボジアで第9回日ASEAN交通大臣会合が開催され、1)効率的な物流網の構築を促進するため、我が国のノウハウ、技術、経験等を活用して支援を行う「日ASEAN物流パートナーシップ」及び2)日ASEANの交通分野の防災体制について現状と課題を共有した上で、今後の協力について検討する「交通分野における防災特別専門委員会」の開催について、承認された。  観光分野では、日中韓3国による観光大臣会合を開催し、国際観光に関する情報交換、相互協力及び意見交換を通じ、観光交流の促進と協力の強化を推進している。平成23年5月に、韓国の平昌で第6回日中韓観光大臣会合を開催し、3国間の未来の観光を描く「Tourism Vision 2020」を掲げ、その実現に向けた協力方策を共同声明として取りまとめ、発表した。  物流分野では、日中韓3国による物流大臣会合、物流発展フォーラムを開催し、国際物流に関する情報交換、相互協力及び意見交換を通じ、北東アジアにおけるシームレス物流の実現や、物流情報ネットワークの構築、環境に優しい物流の実現等、日中韓3国間の物流分野における更なる協力・連携の強化を推進している。物流大臣会合については、平成18年(2006年)より2年に1度開催し、12項目の行動計画に基づく取組みを推進している。  建設分野においては、平成23年7月に台湾において日台建設交流会議、同年11月に韓国において日韓建設経済交流会議を開催し、両国の建設分野における交流・相互理解を促進するなど、東アジア地域を中心として建設関連省庁等と将来に向けた協働関係の構築を目指した取組みを推進している。  海洋分野では、東アジア海域の持続可能な開発を進める、東アジア海域環境管理パートナーシップ(PEMSEA)の枠組みに参加しており、平成23年7月に「第4回東アジア海域パートナーシップ会議」に出席し、PEMSEAの今後の体制を検討する議論に参加した。  港湾分野では、平成23年10月に日中韓3国により、第12回北東アジア港湾局長会議が開催され、3箇国が行政ニーズに基づき実務的に協力する新たな枠組みとして、我が国が担当する「シャーシの相互通行」、韓国が担当する「東アジアマリーナネットワークの構築」、中国が担当する「港湾料金制度の研究」についての進捗結果が報告されたほか、22年度から3箇年の協同研究となる「持続可能な発展のためのグリーン港湾戦略:排出ガスの削減とエネルギー効率の向上」と「北東アジア地域における地球温暖化を考慮した沿岸防災策」について、2年目の進捗状況を報告した。 (3)自由で公正な海外建設市場の形成に向けた取組み  我が国建設企業が海外で事業活動を行うための自由なビジネス環境を確保するため、平成23年2月から24年1月にかけて行われた日米経済調和対話では海外基地建設における米国企業優遇措置等を、23年9月及び24年3月に開催された日フィリピンEPAビジネス環境整備委員会では付加価値税未還付等を問題提起するなど、経済連携協定(EPA)や世界貿易機関(WTO)等の外交交渉の場や二国間対話等を活用し、各種規制の撤廃・緩和、調達手続の透明化等、進出相手国の建設市場環境の整備を強力に働きかけるための交渉を行っている。 (4)アジア太平洋地域インフラ担当大臣のネットワークの確立に向けた取組み  アジア太平洋地域におけるインフラ整備に関するノウハウ・技術の共有や相互連携を図るため、我が国が提唱し、20箇国・地域を対象としたインフラ担当大臣会合を開催している。平成23年12月に第9回会合が、香港で「持続可能な都市化」をテーマに開催され、会合成果として、大臣声明が採択された。また、25年にシンガポールで第10回会合を開催する方向で今後調整することとなった。 (5)国際的な水問題への対応  地球温暖化に伴う気候変動、世界人口の増加、開発途上国の急激な経済成長、都市化に伴う水需要の増大や水の汚染等、地球規模の水問題が様々な国際会議で取り上げられている。平成23年9月に開催された巨大水災害に関する国際フォーラム等を通じ、世界各地で頻発している水災害の軽減に向けて、災害予防が持続可能な発展の鍵であるという国際共通認識を形成するため、我が国の経験・技術を発信するとともに、水災害予防の強化に関する国際連帯の形成に努めている。  また、世界の水災害リスクの軽減策の情報収集と普及を目的に、日本、米国、英国、オランダで実践・開発されているリスクに基づく洪水管理手法の優良事例集を作成するとともに、インドネシア、フィリピン、ベトナム等への国際協力を行っている。土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)では、衛星を活用した洪水早期警報システム(IFAS)や、蓄積した人材育成等の知見をもとに、水災害に関するアジア太平洋地域のナレッジハブとして国際支援を行っている。  また、水問題解決のための有効な手法として、総合水資源管理(IWRM)計画を策定することが国際的に共通認識とされていることから、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)を中心とした「河川流域におけるIWRMガイドライン」の作成に協力するとともに、UNESCOやアジア河川流域ネットワーク(NARBO)と連携して、総合水資源管理の普及・促進に貢献している。23年度はベトナムにおいて先方政府のニーズに対応したIWRM促進のためのワークショップを行った。また、平成24年3月に「Time for Solutions」をテーマに開催された第6回世界水フォーラムでは、閣僚級会合等を通じ、水関連リスクの低減等の水問題解決に向けた情報発信を行うなど、国際貢献に努めている。  サニテーション分野においては、アジア・太平洋地域のナレッジハブ(国際拠点)として日本サニテーションコンソーシアム(JSC)が設立され、各国の知識・情報の集約・普及・共有等の活動を行っている。また、産学官のプラットフォームとして、下水道グローバルセンター(GCUS)が本活動を後押ししている。  そのほか、国内外の水問題解決に向け、13府省庁で構成する「水問題に関する関係省庁連絡会」により、連携強化を図っている。 (6)日本海呼称問題への対応  「日本海(Japan Sea)」の名称は、海上保安庁が刊行する海図や国土地理院が刊行する地図はもとより、国際水路機関(IHO)が刊行する海図作製のための指針にも掲載され、国際的に確立された唯一の名称として認知されている。  しかし、平成4年(1992年)に開催された第6回国連地名標準化会議以降、韓国は、「日本海という名称は日本の植民地政策に基づくものであり、東海(East Sea)に改称するか日本海と併記すべき」との主張を繰り返している。国土交通省は、外務省等関係省庁と密接に連携し、国際社会に「日本海」への正しい理解と支持を求めている。