はじめに  東日本大震災の経験は、我が国の「かたち」を変えるものである。  津波被害の大きさは、はるかに我々の想定を超え、その状況が映像とともに日本全国のみならず、世界に広がった。この経験は、災害に対する備えをするための住民意識、行動を変える。さらに、原子力発電所の事故は、エネルギーのあり方やこれまでの取組みを大きく変える。  人口減少、高齢社会、財政制約といった社会構造変化や気候変動・地球環境問題への対応の中で、持続可能で活力ある国土・地域づくりをどう進めていくか。これまでも国土・地域づくりの手法、考え方、あり方について不断の見直しを行ってきたところであるが、今回の被災地復興に当たっては、「国民の安全・安心を守る」という社会資本整備の最も重要な使命を再認識するとともに、震災を契機としたエネルギー制約等の困難な課題にも対応した、「持続可能で活力ある国土・地域づくり」に向けて取り組んでいかなければならない。  このような状況の中、今回の国土交通白書では、第I部において、まず、第1章で、「復興を通じた国土交通行政の転換」について示すこととした。被災地の復興を考えることは、全国における沿岸地域をはじめ、人口減少、高齢社会、財政制約、エネルギー制約、さらには自然災害リスクの中で、いかに持続可能で活力ある国土・地域づくりを全国的に進めるかの試金石となるものである。このような認識のもと、第2章で、「持続可能で活力ある国土・地域づくり」に向けて、国土交通省がもつ現場力、統合力、即応力を最大限に発揮して、タテ(現場業務から制度論まで)、ヨコ(分野の多様性)、ソト(他府省との連携)への広がりをもった施策の具体的方向性と現時点での取組みについてふれている。  また、第II部においては、国土交通行政の各分野における動向を、政策課題ごとに報告している。