第3節 動き方の変化

第3節 動き方の変化

(1)外出の動向

(外出率は横ばい)
 「全国都市交通特性調査注1」により、外出率(居住人口に対する外出した人数の割合)について、1987年から2010年までの年齢別の変化を追う。平日では、三大都市圏においても地方都市圏においても、40代以降の年齢層については高齢になればなるほど外出率が上昇する傾向にあるのに対し、若者世代についてはほぼ横ばいとなっている(図表148、149)。休日では、三大都市圏においては平日同様、高齢になればなるほど外出率が高まる傾向にあるが、若者世代については横ばいの状態である(図表150)。地方都市圏では、若者を含む全年齢層で1987年から1999年にかけて外出率が低下したが、1999年から2010年にかけて回復を見せている(図表151)。
 
図表148 三大都市圏の外出率(平日)
図表148 三大都市圏の外出率(平日)
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図表149 地方都市圏の外出率(平日)
図表149 地方都市圏の外出率(平日)
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図表150 三大都市圏の外出率(休日)
図表150 三大都市圏の外出率(休日)
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図表151 地方都市圏の外出率(休日)
図表151 地方都市圏の外出率(休日)
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(トリップ数は三大都市圏で減少、地方都市圏で横ばい)
 また、1人1日当たりのトリップ数(人がある目的をもってある地点からある地点へ移動した単位)を見てみる。平日の三大都市圏においては、1987年から2010年にかけて若者世代でトリップ数の減少が見られるが、外出率が変化していない一方でトリップ数が減少していることから、一度の外出で済ませる用件の数が減ったと考えられる。平日の地方都市圏においては、1999年から2010年にかけて、若者の外出率だけでなくトリップ数についても横ばいとなっている(図表152、153)。
 
図表152 三大都市圏の1人1日当たりトリップ数(平日)
図表152 三大都市圏の1人1日当たりトリップ数(平日)
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図表153 地方都市圏の1人1日当たりトリップ数(平日)
図表153 地方都市圏の1人1日当たりトリップ数(平日)
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 平日の三大都市圏における若者のトリップ数の変化を性別ごとに見ると、女性で通勤目的のトリップが増加している一方、私事目的のトリップ数が大きく減少していることから、女性の社会進出に伴い、外出の目的が私事から通勤にシフトするとともに、他の目的のトリップと一緒に行われていた私事目的のトリップが減少したものと推察される。男性では、1987年から1999年にかけて私事目的のトリップ数が大きく減少したが、1999年から2010年にかけては回復が見られる(図表154)。また、平日の地方都市圏における若者のトリップ数の変化についても同様に、女性の通勤目的のトリップが増加する一方私事目的のトリップが減少し、男性の私事目的のトリップ数は増えている。地方都市圏においては、男性の私事目的のトリップ数の増加が女性の私事目的のトリップ数の減少よりも大きいことから、男女計では私事目的のトリップ数は増加している。このように、平日では、女性の通勤目的のトリップ数の増加と私事目的のトリップ数の減少、男性の私事目的のトリップ数の回復が三大都市圏、地方都市圏に共通して見られる(図表155)。
 
図表154 三大都市圏の目的別トリップ数(平日)
図表154 三大都市圏の目的別トリップ数(平日)
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図表155 地方都市圏の目的別トリップ数(平日)
図表155 地方都市圏の目的別トリップ数(平日)
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 休日の三大都市圏における若者のトリップ数については、平日と同様、1987年から2010年にかけて減少が見られ、外出率が変化していない一方でトリップ数が減少していることから、一度の外出で済ませる用件の数が減ったと考えられる(図表156)。休日の地方都市圏における若者のトリップ数については、外出率と同様に、1987年から1999年にかけて減少したものの、1999年から2010年にかけては持ち直しを見せている(図表157)。
 
図表156 三大都市圏の1人1日当たりトリップ数(休日)
図表156 三大都市圏の1人1日当たりトリップ数(休日)
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図表157 地方都市圏の1人1日当たりトリップ数(休日)
図表157 地方都市圏の1人1日当たりトリップ数(休日)
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 休日の三大都市圏における若者のトリップ数の減少は、男女ともに私事目的のトリップ数が減少していることからもたらされており、反対に、休日の地方都市圏における若者のトリップ数の持ち直しは、男女ともに私事目的のトリップ数が増加していることによるものとなっており、三大都市圏と地方都市圏で若者の外出の動向が異なることが分かる(図表158、159)。
 
図表158 三大都市圏の目的別トリップ数(休日)
図表158 三大都市圏の目的別トリップ数(休日)
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図表159 地方都市圏の目的別トリップ数(休日)
図表159 地方都市圏の目的別トリップ数(休日)
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 このような外出率やトリップ数の変化と一体のものとして、外出時の移動範囲についても変化が起こっていると考えられる。先に見たように、三大都市圏においては外出率に変化がない一方でトリップ数が減少していることから一度の外出で済ませる用件の数が減ったと考えられるが、これに伴い移動の範囲も縮小している可能性がある。
 これに関連し、休日の外出先について尋ねると、20代・30代では、住んでいる地域の中心市街地や移動時間が片道1時間未満の近隣の都市といった比較的近距離のエリアに外出する者の割合が高いのに対し、他の年齢層では、郊外の大型商業施設や移動時間が片道1時間以上の場所等の中・長距離のエリアに外出する者の割合が高くなっている。この傾向は三大都市圏よりも地方圏においてより顕著に見られる(図表160)。
 
図表160 地域別・年齢階級別に見た休日の外出先
図表160 地域別・年齢階級別に見た休日の外出先
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(三大都市圏では自動車から鉄道へシフト)
 三大都市圏における代表交通手段分担率を1987年、1999年、2010年の3時点で比較すると、全年齢平均では、1987年から1999年にかけては男女ともに自動車の分担率が上昇したものの、1999年から2010年にかけては、男性の自動車の分担率は低下、女性の自動車の分担率は上昇と、男女で異なる動きを見せている。また、20〜39歳については、男性では1987年から2010年にかけて一貫して自動車の分担率が低下しているのに対し、女性では1987年から1999年にかけては自動車の分担率は上昇しており、また、1999年から2010年にかけては自動車の分担率は減少しているものの男性ほど減少ポイントが大きくないなど、ここでも男女で異なる傾向が見られる。また、自動車からの転換や鉄道の利便性の向上等を背景として鉄道の利用が進んでいると考えられ、全年齢平均でも若者でも、男女ともに鉄道の分担率が上昇している(図表161)。
 
図表161 代表交通手段分担率(三大都市圏:平日)
図表161 代表交通手段分担率(三大都市圏:平日)
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 地方都市圏においては、全年齢でも若者でも三大都市圏よりも自動車の分担率が高くなっている。自動車利用については地方圏においても男女で異なる動きが見られ、男性では自動車の分担率が全年齢で微増、若者で減少傾向にあるのに対し、女性では全年齢・若者ともに分担率が上昇している。鉄道やバスなどの公共交通機関の分担率については、全年齢と若者のそれぞれについて男女別に見ても大きな変化は見られず、自動車の分担率の変化は、「二輪車」や「徒歩・その他」の分担率の変化により相殺されている(図表162)。
 
図表162 代表交通手段分担率(地方都市圏:平日)
図表162 代表交通手段分担率(地方都市圏:平日)
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注1 本調査における三大都市圏とは「東京圏、名古屋圏、大阪圏」を指し、地方都市圏とは「三大都市圏以外の都市」を指す。


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