第2節 住まい方・動き方に関する分野横断的な取組み

第2節 住まい方・動き方に関する分野横断的な取組み

(1)コンパクトシティの形成

 前章で見たとおり、まちの中心部や鉄道駅に近いエリアに居住する若者が増加したり、外出時の移動範囲が縮小したりするなど、現在の若者の生活圏は以前の若者と比べコンパクトになってきていると言える。このような若者の暮らし方の動向を踏まえ、これまで整備されてきた都市基盤ストックを活用し、行政サービスの提供を効率的に行えるまちづくりを進めることが重要である。このため、医療・福祉施設、商業施設等の都市機能が住まいに身近なところに集積し、住民が過度に自家用車に頼ることなく、公共交通機関によりこれらの施設にアクセスできるようなコンパクトシティの形成を促進する。あわせて、徒歩や自転車等による移動の利便性や安全性を確保するため、歩道・自転車道の整備、バリアフリー化等を一体的に進める(図表212)。
 
図表212 コンパクトシティのイメージ図
図表212 コンパクトシティのイメージ図

1)都市機能の集約化
 コンパクトシティの形成が進むことにより、あらゆる人が、自家用車に過度に頼ることなく公共交通により、医療・福祉施設や商業施設等の日常生活に必要なサービスや行政サービスを享受できるようになる。特に子育て世帯にとっては、住まいと職場、子育て支援施設等が近接して立地し、それらへのアクセスが容易になることから、就業と子育ての両立につながるものと考えられる。このため、中心市街地共同住宅供給事業、街なか居住再生ファンド等を活用し、中心市街地において共同住宅、公共公益施設等の整備を進めるとともに、団地再生や公共賃貸住宅の建替え、鉄道駅の拠点化等に際して、医療・介護施設や子育て施設等の新設・併設等を支援する(図表213)。
 
図表213 街なか居住再生ファンドの例(岡山県岡山市)
図表213 街なか居住再生ファンドの例(岡山県岡山市)

2)公共交通機関の利便性の向上
 都市機能の集約化を図るエリアと公共交通サービスが提供されるエリアは表裏一体の関係で密接に関連することから、都市機能の集約化の方向性に沿って公共交通サービスが提供されることが効果的である。そのため、バス路線の新設・変更やLRT等の整備をまちづくりと一体的に行い、公共交通機関の利便性の向上に取り組むことが重要である。
 特に都市圏においては、通勤・通学時の交通手段として鉄道が多く利用されているが、乗り換えに伴う不便を解消し、利用者の更なる利便性の向上を図るため、既存の都市鉄道ネットワークを活用した連絡線の整備や相互直通化を推進している。また、通勤・通学混雑の緩和に向けた地下高速ネットワークの充実や沿線地域の通勤・通学の確保に向けた貨物鉄道の旅客線化にも取り組んでいる(図表214)。
 
図表214 都市圏の鉄道整備
図表214 都市圏の鉄道整備

3)超小型モビリティの導入促進
 自動車より小型で小回りが利き、環境性能に優れ、あらゆる世代にとって地域の手軽な移動の足となる1〜2人乗り程度の車両である超小型モビリティは、日常の買い物や子どもの送り迎え等、新たな交通手段として様々な機能を果たすことが期待されている(図表215)。
 
図表215 超小型モビリティの例
図表215 超小型モビリティの例

 このため、2013年1月に、超小型モビリティの公道走行を可能とする認定制度を創設した。安全確保を最優先に考え、1)高速道路等では走行しないこと、2)交通の安全等を図るための措置を講じた場所において運行すること、等を条件とした上で、一部の保安基準(座席の取付強度基準等)を緩和した。また、地方公共団体等の主導によるまちづくり等と一体となった先導・試行導入に係る事業計画の実施費用を補助する制度も創設しており、今後も、成功事例の創出等を通じた国民理解の醸成を進めながら、超小型モビリティの導入促進を図る。
 2013年3月には、横浜市多摩田園都市地域において子育て世代の一般家庭を対象に一定期間超小型モビリティの貸し出しを行い、実際の日常生活にもたらす変化についてモニター調査を行った。

4)通学路における交通安全の確保
 子育て世帯にとっては、住まいの周辺の道路の安全性も、子育てにおいて重要な要素である(図表147)。通学路については、学校や保護者、警察等と連携して実施した緊急合同点検の結果等を踏まえ、歩道整備、路肩のカラー舗装、防護柵設置等の対策を実施することにより、子どもの安全・安心を確保する取組みを推進している(図表216、217)。
 
図表216 歩道の整備
図表216 歩道の整備

 
図表217 防護柵の設置
図表217 防護柵の設置

5)自転車の利用環境の改善
 健康や環境に対する意識の高まり等を背景に利用ニーズが高まってきている自転車は、若者の通勤・通学、子育て世帯の買い物や子どもの送迎等、日常生活における身近な移動手段として重要な役割を担っている。自転車利用の有無とその目的について尋ねたところ、若者の4人に3人が自転車を利用しており、自転車を利用する目的としては、通勤・通学が23.3%、買い物が40.2%と、高い割合となった(図表218)。
 
図表218 自転車を利用する目的
図表218 自転車を利用する目的
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 このように自転車の利用が進む中で、自転車道や自転車専用通行帯等の自動車や歩行者から分離された自転車通行空間の延長が全体としてまだわずかである上、自動車の駐停車等により自転車の車道通行が阻害されているなどの問題が見られることから、ハード・ソフトの両面から取組みを行い、自転車が安全で快適に通行できるとともに、歩行者の安全性が高まるような自転車の利用環境を創出することが喫緊の課題となっている。
 このため、警察庁と共同で取りまとめたガイドライン(2012年11月公表)に基づき、各地域において、自転車ネットワーク計画の作成やその整備、通行ルールの徹底等を進めることとしている(図表219)。
 
図表219 道路の整備形態の例
図表219 道路の整備形態の例

6)バリアフリー化の推進
 国民意識調査において、自分の居住地域において子育てと仕事の両立が難しいと思う項目として、「歩道や鉄道駅などにおいて、妊婦や乳幼児連れの移動が考慮されていない」と答えた者の割合は、20代・30代の若者の方が他の世代の者よりも高い結果となった(図表220)。
 
図表220 自分の居住地域で子育てと仕事の両立が難しいと思う項目
図表220 自分の居住地域で子育てと仕事の両立が難しいと思う項目
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 あらゆる世代が安全で快適にまちの中を移動できるよう、幅の広い歩道の整備や歩道の段差の改善、乗合バス車両におけるノンステップバスの導入、駅におけるエレベーター設置等、移動のためのバリアフリー化を推進している。また、乳幼児連れが利用する建築物等においては、多機能トイレ、授乳のためのスペース等の設置を促進している(図表221、222、223)。
 
図表221 バリアフリー化の状況
図表221 バリアフリー化の状況
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図表222 駅前広場におけるエレベーターや円滑に乗降できるバス停の整備の推進
図表222 駅前広場におけるエレベーターや円滑に乗降できるバス停の整備の推進

 
図表223 子ども連れに対応したトイレの設備例
図表223 子ども連れに対応したトイレの設備例


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