第4節 交通分野における安全対策の強化

1 公共交通機関における安全管理体制の構築・改善

 公共交通機関におけるヒューマンエラーに起因すると見られる事故・トラブルが多発したことを契機に導入された「運輸安全マネジメント制度」は、運輸事業者に「安全管理規程」の作成・届出、「安全統括管理者」の選任・届出等を義務付けるとともに、経営トップの主体的な関与の下で現場を含む組織が一丸となって安全管理体制の構築・強化に取り組んでもらい、その取組みを国が評価することで、安全管理体制をPDCAサイクルによって継続的に向上させるものである。

 
図表II-7-4-1 運輸安全マネジメント評価の実施イメージ
図表II-7-4-1 運輸安全マネジメント評価の実施イメージ

 平成23年10月から24年9月末までに、運輸安全マネジメント評価を延べ915社(鉄道114社、自動車87社、海運697社、航空17社)に対して実施した。これまでの評価結果によると、制度導入以降、事業者の運輸安全マネジメントに係る取組みが充実する傾向にあり、社内における情報伝達やコミュニケーションの充実、事故やヒヤリ・ハット情報の収集・活用の促進、教育・訓練の充実等について特に顕著な改善が見られ、本制度導入による効果が現れてきている。
 また、運輸審議会運輸安全確保部会での審議を経て、23年12月に取りまとめた「運輸の安全確保に関する政策ビジョン」においては、今後の安全確保政策の方向性として、1)中小事業者については、依然として啓発・普及の必要性が高く、従前からの第三者認証機関による安全マネジメント評価実施に加えて、啓発・普及活動の段階において、保険会社等の民間リスク管理ビジネスとの連携推進を図ること、2)大手・中堅事業者に対しては、運輸安全マネジメント評価において事業者の取組み内容の実効性・有効性に重点を置くとともに、事業者による安全管理の実効性を確保すること、3)マネジメント評価を行う人材についての職員育成プログラムの強化等の検討、の三点が示された。これを受け、公共交通の安全規制の実効性確保に向けて、事故・インシデント等のデータ収集・分析に基づく安全規制の検証システムを構築するとともに、運輸安全マネジメント制度の高度化と中小事業者に対する啓発・普及を推進するなど、国・事業者等それぞれの主体的な取組みの強化を図ることとしている。

 
図表II-7-4-2 大手事業者における運輸安全マネジメント制度の導入効果(平成18年10月〜24年9月)
図表II-7-4-2 大手事業者における運輸安全マネジメント制度の導入効果(平成18年10月〜24年9月)
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