第4節 交通分野における安全対策の強化

7 道路交通における安全対策

 平成24年の交通事故死者数は、12年連続で減少し、4,411人(対前年比5.4%減)となった。しかしながら、交通事故死者数の約半数を65歳以上の高齢者が占めるほか、83万人が交通事故で死傷しており、依然として厳しい状況である。このため、更なる交通事故の削減を目指し、警察庁等と連携して各種対策を実施している。

 
図表II-7-4-5 交通事故件数及び死傷者数等の推移
図表II-7-4-5 交通事故件数及び死傷者数等の推移
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(1)効率的・効果的な交通事故対策の推進

 近年、道路整備の進展や社会情勢の変化等を受けて、歩行者、自転車等の多様な利用者が安全に安心して共存できる道路環境が求められている。交通事故死者数の約7割を占めている幹線道路については、「事故ゼロプラン(事故危険区間重点解消作戦)」により市民参加・市民との協働の下、効果的・効率的に事故対策を推進するなど、事故の危険性が高い箇所等について重点的に対策を実施している。
 また、歩行者・自転車に係る死傷事故発生割合が大きい生活道路等において、安全な歩行空間の確保等を目的として、面的な速度規制と連携した車道幅員の縮小・路側帯の拡幅、歩道整備、車両速度の抑制、通過交通の抑制等の面的かつ総合的な交通事故抑制対策を推進している。

(2)ITSスポットを活用した高速道路上における安全運転支援

 平成23年8月より、全国の高速道路上においてITSスポットサービスを開始しており、事故多発地点や道路上の落下物等の注意喚起、積雪や越波等の状況の事前提供を行うことにより安全運転支援を推進している。

(3)安全で安心な道路サービスを提供する計画的な道路施設の管理

 平成24年12月2日に、9名の尊い命が犠牲となった中央自動車道笹子トンネルの天井板落下事故が発生した。この事故を受け、「トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会」を開催し、落下の発生原因の把握や、再発防止策等について専門的見地から検討している。
 加えて、今後、高度経済成長期に集中して建設された多くの橋梁等、高齢化した道路ストックが急増し、重大な損傷発生の危険性が高まることが懸念される。このような状況を踏まえ、道路ストックの持続的、戦略的な維持管理・更新を図るため、高速道路から市町村道までの道路橋等について、長寿命化修繕計画等に基づく道路ストックの点検、診断、補修を実施し、予防的な補修等を計画的に進めている。また、地方公共団体の橋梁では、約1割の市区町村において、人材、技術、資金の不足等の問題により、定期的な点検が実施できていないため、点検の責務及び技術基準の明示や技術支援、財政支援等の措置を講じている。

(4)高速ツアーバス事故を受けた安全対策強化

 平成24年4月に関越道において発生した高速ツアーバス事故を受け、緊急重点監査や過労運転防止等の緊急対策を実施したほか、高速ツアーバスを企画実施する旅行会社等が乗合バス事業の許可を取得し、道路運送法に基づく安全確保の責任を負う新高速乗合バスへの移行の促進等を行った。

(5)自動車の総合的な安全対策

1)事業用自動車の安全対策
 平成20年から30年までの10年間で、事故死者数・人身事故件数の半減、飲酒運転ゼロを目標とする「事業用自動車総合安全プラン2009」に基づき、トラックにおける運行記録計の装着義務付け範囲拡大に関する検討等、更なる安全対策を実施している。

2)今後の車両安全対策の検討
 第9次交通基本計画(平成23年3月策定)においては、27年までに交通事故死者数を3,000人以下とする目標が設定されている。この交通事故削減目標の達成に向けて、「安全基準等の拡充・強化」、「先進安全自動車(ASV)推進計画」及び「自動車アセスメント」の3つの施策を有機的に連携させ、車両安全対策の推進に取り組んでいる。

3)安全基準等の拡充・強化
 大型貨物車やバスについては、事故発生時に被害が大きくなる傾向があることから、衝突被害軽減ブレーキの基準化・義務付けを進めており、平成24年3月には大型貨物車について、25年1月にはバスについて基準を策定した。また、「新たなカテゴリー」の乗物である軽自動車よりも小さい二人乗り程度の超小型モビリティについては、公道走行が可能となるよう、25年1月に認定制度を創設した。

4)先進安全自動車(ASV)の開発・実用化・普及の促進
 産学官の協力体制の下、先進安全自動車(ASV)の開発・実用化・普及の促進を図っており、衝突被害軽減ブレーキ等の実用化されたASV技術の本格的な普及促進、車車間通信システムや歩車間通信システムといった通信利用型安全運転支援システムの実用化に向けた検討を進めている。

 
図表II-7-4-6 衝突被害軽減ブレーキの作動例
図表II-7-4-6 衝突被害軽減ブレーキの作動例

5)自動車アセスメントによる安全情報の提供
 ユーザーによる安全な自動車及びチャイルドシートの選択や製作者による、より安全な自動車等の開発を促すことを目的に、自動車等に関する安全性能の評価結果を公表している。平成24年度においては、自動車12車種、チャイルドシート9機種の評価を新たに行った。

6)リコール制度の充実・強化
 自動車のリコールの迅速かつ着実な実施のため、自動車メーカー等及びユーザーからの情報収集に努め、自動車メーカー等のリコール業務について監査等の際に確認・指導するとともに、安全・環境性に疑義のある自動車については独立行政法人交通安全環境研究所において現車確認等による技術的検証を行っている。また、ユーザーからの不具合情報の収集を強化するため、「自動車不具合情報ホットライン」(www.mlit.go.jp/RJ/)について周知活動を積極的に行った。
 自動車リコール制度をより一層ユーザーの視点に立ったものとするため、これまで情報収集体制及び調査分析体制を強化してきたところである。
 さらに、国土交通省に寄せられた不具合情報や事故・火災情報等を公表し、ユーザーへの注意喚起が必要な事案や適切な使用及び保守管理、不具合発生時の適切な対応を促進するために必要な事項について、ユーザーへの情報提供を実施した。特に、「チャイルドシートの肩ベルトの調整を忘れずに!」及び「乗用車のアームレスト等の可動部にお子様が指等を挟み込まないよう注意しましょう」について報道発表等を通じ、ユーザー等への注意喚起を行った。
 なお、平成24年度のリコール届出件数は308件及び対象自動車数台数は5,612,979台であった。

7)自動車検査の高度化
 不正な二次架装注1の防止やリコールにつながる車両不具合の早期抽出等に資するため、情報通信技術の活用による自動車検査の高度化を進めている。

(6)自動車損害賠償保障制度による被害者保護

 自動車損害賠償保障制度は、クルマ社会の支え合いの考えに基づき、自賠責保険の保険金支払い、ひき逃げ・無保険車事故による被害者の救済(政府保障事業)を行うほか、重度後遺障害者への介護料の支給や療護センターの設置等の被害者救済対策事業を実施するものであり、交通事故被害者の保護に大きな役割を担っている。

 
図表II-7-4-7 自動車損害賠償保障制度
図表II-7-4-7 自動車損害賠償保障制度


注1 部品等を取り外した状態で新規検査を受検し、検査終了後に当該部品を再度取り付けて使用する行為等


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