第5節 危機管理・安全保障対策

4 我が国の海洋権益の保全

(1)海洋権益を保全するための警備活動

 近年、尖閣諸島周辺海域では、多数の外国漁船が領海内に入域し操業する事案のほか、中国・台湾公船による領海侵入事案、中国・台湾活動家による領有権主張活動事案が発生している。特に、尖閣三島の取得・保有以降、台風等の荒天時を除き、中国公船が常態的に同周辺海域を徘徊し、領海侵入事案の発生件数も増加している。
 また、東シナ海等の我が国排他的経済水域において、中国・台湾等の海洋調査船による我が国の同意のない海洋調査活動等が確認されるなど、我が国の海洋権益を脅かす諸外国の活動が活発化している。
 海上保安庁では、こうした緊迫化する情勢に対して、海上警察権の強化に向けた海上保安官等の執行権限の充実強化等の制度改正を進め、平成24年9月、「海上保安庁法及び領海等における外国船舶の航行に関する法律の一部を改正する法律」が施行された。加えて、領海警備体制の強化を図り、巡視船艇・航空機による領海警備や我が国排他的経済水域における監視警戒活動を的確に行い、我が国の主権の確保、海洋権益の保全に努めている。

(2)領海及び排他的経済水域における海洋調査の推進及び海洋情報の一元化

 我が国の領海及び排他的経済水域には、調査データの不足している海域が存在しており、海上保安庁では、この海域において、海底地形、地殻構造、領海基線等の海洋調査を重点的に実施し、船舶交通の安全や我が国の海洋権益の保全、海洋開発等に資する基礎情報の整備を戦略的かつ継続的に実施している。また、内閣官房総合海洋政策本部事務局の総合調整の下、海洋情報の所在を一元的に収集・管理・提供する「海洋情報クリアリングハウス」の運用を行っている。さらに、海洋に関する様々な自然情報(海底地形、海流、水温等)や社会情報(港湾区域、漁業権区域等)を一般ユーザーが活用できるよう、地図上に自由に重ねて表示できるウェブサービス「海洋台帳(海洋政策支援情報ツール)」を整備した。

(3)大陸棚の限界画定に向けた取組み

 平成20年11月に我が国が国連海洋法条約に基づき、国連の「大陸棚限界委員会」へ提出した、200海里を超える大陸棚に関する情報について、同委員会は24年4月20日に勧告を採択した。勧告では、我が国の国土面積の約8割に相当する大陸棚の延長が認められた一方で、一部海域では審査が先送りされたため、海上保安庁では、内閣官房総合海洋政策本部事務局の総合調整の下、関係省庁と連携して、引き続き、大陸棚の画定に向けた対応を行っていくこととしている。

(4)沖ノ鳥島の保全、低潮線の保全及び活動拠点の整備等

1)沖ノ鳥島の保全
 沖ノ鳥島は、我が国最南端の領土であり、国土面積を上回る約40万km2の排他的経済水域の権利の基礎となる極めて重要な島であることから、国土保全・利活用の重要性にかんがみ、国の直轄管理により十全な措置を講じるとともに、その前提の上に可能な利活用策を検討している。

2)低潮線の保全
 「低潮線保全法」等に基づき、全国185箇所の低潮線保全区域を政令で指定し、区域内で行為規制を実施している。また、防災ヘリコプターや船舶等による巡視や衛星画像等を用いた低潮線及びその周辺の状況の調査を行い、域内における制限行為の有無や自然侵食による地形変化を確認することにより、排他的経済水域及び大陸棚の基礎となる低潮線の保全を図るとともに、低潮線の保全を確実かつ効率的に実施していくために、関連情報を適切に管理している。

3)遠隔離島(沖ノ鳥島・南鳥島)における活動拠点の整備等
 「低潮線保全法」等に基づき、海洋資源の開発・利用、海洋調査等に関する活動が安全かつ安定的に行われるよう、遠隔に位置する離島において、船舶の係留・停泊・荷さばき等が可能な活動拠点の整備を進めている。南鳥島においては平成22年度、沖ノ鳥島においては23年度に建設に着手しており、今後も引き続き整備を進めていくこととしている。

 
図表II-7-5-5 低潮線の保全
図表II-7-5-5 低潮線の保全


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