第4節 動き方に関する取組み  我が国の観光市場は、大部分が国民自身の旅行によって支えられており、我が国の観光市場が今後も持続的に発展していくためには、国民の観光旅行を喚起していくことが必要である。前章で見たとおり、若者の旅行回数は減少傾向にあるが、旅行の持つ価値について十分に認識できていないことから旅行に出かける動機付けがされにくくなっていることや、同行者がいないという理由から実際に旅行行動に出られない者がいること等により、潜在的な旅行需要が十分に引き出されていない可能性がある。過去の旅行経験回数が多い者ほど将来の旅行に対する意欲が強い傾向があることを踏まえると、現在のような若者旅行の減少が続けば、長期的に国民の旅行行動が低下することも懸念されることから、我が国の現在及び将来的な旅行市場を維持・拡大するという観点や若者に良い旅行体験をしてもらうという観点等から、若者の旅行振興を進めることが必要である。 1)若者旅行振興研究会での取組み  産学官の関係者により構成する若者旅行振興研究会を設け、2010年7月から2011年6月の第一期、2011年11月から2012年6月の第二期に渡り、若者の旅行動向に関する情報収集、他業界による若者へのアプローチの取組み等を研究し、若者の旅行振興として今後取り組むべき具体策の提言を同年7月に公表した(図表226)。 図表226 若者の旅行振興として今後取り組むべき具体策 2)表彰制度の設置  若者の旅行振興に寄与した取組みや仕掛けを講じている地方公共団体、NPO、企業及び個人等の取組みを対象とした表彰制度として、2012年6月に「若者旅行を応援する観光庁長官賞」を設立した。また、本表彰制度をPRするため、若者が旅行に出かけたくなるようなキャッチフレーズの公募を行い、同年10月、267件の応募の中から「今しかできない旅がある」がキャッチフレーズとして選定された(図表227)。 図表227 「若旅」ロゴマーク  同制度については、2013年2月までの約3ヶ月の公募期間の中で61件の応募があり、2013年6月にはその受賞者を表彰することとしている。 3)「若者★授業」の実施  若者は、旅を通じ今まで知らなかった世界と触れあうことで視野を広げ、その過程の中で生きる力を伸長させていく。その第一歩として、まずは「旅に出たい、出よう」という気持ちへの働きかけを行うべく、2013年2月に、高校生を対象に旅の意義・素晴らしさを伝える「若者★授業」を実施した。講師には、協賛企業を付けて自己負担ゼロで世界一周旅行を行った伊藤春香氏を招くなど、旅行に出る際に、体験者の声を重視する傾向のある若者の価値観を踏まえた内容とした。今後も、授業を希望する学校と講師のマッチングを図りながら「若者★授業」を実施していく。