1 地球環境の観測・監視 (1)気候変動の観測・監視  気象庁では、温室効果ガスの状況を把握するため、大気中のCO2等を国内3地点で、北西太平洋の洋上大気や表面海水中のCO2を海洋気象観測船で観測しているほか、北西太平洋上空のCO2等を、航空機を利用して観測している。さらに、気候変動を監視し、地球温暖化予測の不確実性を低減するため、日射と赤外放射の観測を国内5地点で実施している。  また、地球温暖化に伴う海面水位の上昇を把握する観測を行い、日本沿岸における長期的な海面水位変化傾向等の情報を発表している。  このほか、気候変動の監視及び季節予報の精度向上のため、過去の全世界の大気状態を一貫した手法で解析した25年長期再解析(JRA-25)の対象期間を延長して精度を向上させた気象庁55年長期再解析(JRA-55)プロジェクトを現在実施している。  さらに、観測結果等を基に、「気候変動監視レポート」や「異常気象レポート」を取りまとめ、毎年の気候変動、異常気象、地球温暖化等の現状や変化の見通しについての見解を公表するとともに、世界気象機関(WMO)温室効果ガス世界資料センターとして、世界中の温室効果ガス観測データの収集・提供を行っている。 図表II-8-7-1 日本における二酸化炭素濃度の推移 (2)次期静止気象衛星整備に向けた取組み  次期静止気象衛星「ひまわり8号及び9号」は、台風や集中豪雨等に対する防災機能の向上に加え、地球温暖化をはじめとする地球環境の監視機能を世界に先駆けて強化した「静止地球環境観測衛星」として整備することとし、8号を平成26年度に、9号を28年度にそれぞれ打ち上げる計画として、21年度より2機の製造に着手した。 (3)海洋の観測・監視  海洋は、温室効果ガスであるCO2を吸収したり、熱を貯えることによって、地球温暖化の進行を緩やかにしている。地球温暖化の監視のためには、海洋の状況を的確に把握することが重要である。  気象庁では、平成22年度より海洋気象観測船の観測機能を強化し、国際的な連携により高精度な海洋観測を行うとともに、国際的な海洋観測網で得られたデータも活用して、地球温暖化に係る海洋の状況を監視している。  また、観測船の他に、海洋の内部を自動的に観測する装置(アルゴフロート)や衛星等による様々な観測データを収集・分析し、地球環境に関連した海洋変動の現状と今後の見通し等を総合的に診断する「海洋の健康診断表」を公表している。 図表II-8-7-2 海洋気象観測船による地球環境の監視 図表II-8-7-3 気象庁ホームページで公開している「海洋の健康診断表」の例  海上保安庁では、アルゴフロートのデータを補完するため、伊豆諸島周辺海域の黒潮変動を海洋短波レーダーにより常時監視・把握するとともに、観測データを公表している。また、日本海洋データセンターにおいて、我が国の海洋調査機関により得られた海洋データを収集・管理し、関係機関及び一般国民へ提供している。 (4)オゾン層の観測・監視  気象庁では、オゾン・紫外線を観測した成果を毎年公表しており、それによると世界のオゾン量は長期的に見て少ない状態が続いている。また、紫外線による人体への悪影響を防止するため、紫外線の強さを分かりやすく数値化した指標(UVインデックス)を用いた紫外線情報を毎日公表している。 (5)南極における定常観測の推進  国土地理院は、南極地域の測地観測、地形図の作成、デジタル標高データの整備等を実施しており、得られた成果は、南極観測隊の円滑・安全な活動に資するとともに、地球環境変動等の研究や測地測量・地理空間情報に関する国際的活動に寄与している。  気象庁は、昭和基地でオゾン、日射・赤外放射、地上、高層等の気象観測を継続して実施しており、観測データは南極のオゾンホールや気候変動等の地球環境の監視や研究に寄与するなど、国際的な施策策定のために有効活用されている。  海上保安庁は、海底地形調査を実施しており、観測データは、海図の刊行、氷河による浸食や堆積環境等の過去の環境に関する研究等の基礎資料として役立てられている。また、潮汐観測も実施し、地球温暖化と密接に関連している海面水位変動の監視に寄与している。