コラム 海洋酸性化についての情報提供開始  海洋は、人間活動により排出された二酸化炭素の約三分の一を吸収することにより、大気中の二酸化炭素濃度の増加を抑制し、地球温暖化の進行を緩和しています。しかし海洋に蓄積された二酸化炭素が増えつづけているため、海洋が酸性化している可能性が指摘され、近年、注目されています。海洋酸性化が進行すると、海洋の二酸化炭素吸収能力が低下し、大気中に残る二酸化炭素の割合が増えるため、地球温暖化を加速する可能性があります。また海洋酸性化の進行は、海洋の生態系に大きな影響を与える可能性があり、水産業やサンゴ礁等の海洋観光資源に依存する観光産業などの経済活動への影響も懸念されます。  このため、気象庁では、平成24年11月より国内で初めて海洋酸性化に関する定期的な監視情報の提供を開始しました。この情報では、気象庁が北西太平洋を対象に長期にわたり継続して実施した海洋気象観測船による海洋観測データをもとに、北西太平洋海域(東経137度線上の北緯3度〜34度)の表面海水中における海洋酸性化(=水素イオン濃度指数(pH)の低下)の解析結果を提供しています。具体的には、東経137度線に沿った海域では、観測を行っているすべての緯度帯においてpHが10年あたり約0.02低下しており、海洋酸性化が進行していることを示しています。  地球温暖化対策や生物多様性の維持にとって重大な問題である海洋酸性化に適切に対処していくために、気象庁では今後も海洋の監視を継続し、海洋酸性化に関する科学的な知見を集積・提供していきます。  なお、この情報は、海況情報や地球温暖化に係る海洋の長期変動などともに、気象庁のホームページ「海洋の健康診断表」(http://www.data.kishou.go.jp/kaiyou/shindan/index.html)を通じて閲覧することができます。