コラム 防災の主流化に向けた水災害分野の取組み  「防災の主流化(Mainstreaming Disaster Risk Reduction)」という言葉は、国際防災戦略(UNISDR)という国連機関が設置されて以来、用いられています。現時点まで明確な定義はありませんが、  1.各国政府が、「防災」を政策の優先課題とすること  2.すべての開発政策・計画に「防災」を導入すること  3.「防災」に関する投資を増大させること の3点の主旨で使用されています。  世界では、タイの洪水(平成23年9−12月)に見られるように、水災害の頻発化、激化が世界各地で発生しています。アジアにおける水関連災害による被害人口は、全世界におけるすべての災害被害人口の約85%を占めているにもかかわらず、水災害対策は取組みが遅れており、防災の面と水管理の面が一体的に強化される必要があります。このような中、24年3月には、第6回世界水フォーラム、6月には国連持続可能な開発会議(リオ+20)が開催され、国際的な水問題の中で水災害について議論がなされています。  日本は、東日本大震災(23年3月)から得られた教訓を世界と共有することを目的に、24年7月には、「世界防災閣僚会議in東北」を主催するとともに、同年10月には、昭和39年以来48年ぶり、2度目となる「国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会」が日本で開催されました。総会には、世界各国財務相らが参加し、防災についての集中議論がなされました。また、総会に併せ、世界銀行、国土交通省、国際協力機構(JICA)の共催により、「東日本大震災からの教訓セミナー」が開催され、東日本大震災からの教訓を活かし、途上国における「防災の主流化」に向け、日本を含む世界各国はどのように支援ができるかについて議論がなされました。  こうした流れを踏まえ、25年3月、ニューヨークの国連本部において、国連事務総長、国連水と衛生に関する諮問委員会(UNSGAB)と水関連災害有識者委員会(HLEP/UNSGAB)の共催により、水と災害に関する地球規模の行動に向けた方向性に関する議論を行うことを目的として、水と災害に特化した国連初の会合である「水と災害に関する特別会合」が開催されました。同会合には、皇太子殿下がご出席になり、日本の災害の記録と現在の防災に関する知恵を結び付けることで、災害に対してより備えのできる社会を構築できる旨の基調講演をなさいました。国土交通省からは技監がパネリストとして登壇し、東日本大震災による津波の経験から得た教訓について発言をしました。  27年、国際社会が防災分野における重要な指針としている兵庫行動枠組注1が見直し時期を迎えます。日本で開催予定の第3回国連防災世界会議に向け、兵庫行動枠組に続く新たな枠組の策定に向けた議論や、27年より先の新たな国際開発目標(ポストMDGs(ミレニアム開発目標:Millennium Development Goals))注2のターゲットや指標に防災の要素を位置づけることを含め、開発及び国際協力における「防災の主流化」を促進し、実効性をもった取組みを進めていくこととしています。 国連水と災害に関する特別会合 注1 17年1月、兵庫県神戸市で開催された第2回国連防災世界会議において採択された17年-27年に各国・機関が取り組むべき防災施策のガイドライン。 注2 12年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで採択された国連ミレニアム宣言を基にまとめられた開発分野における国際社会共通の目標。極度の貧困と飢餓の撲滅、環境の持続可能性確保等、27年までに達成すべき8つの目標を掲げている。