第1節 交通ネットワークの整備

◯3 航空ネットワークの整備

(1)航空ネットワークの拡充
1)首都圏空港の機能強化
 我が国のビジネス・観光両面における国際競争力を強化するため、我が国の成長のけん引車となる首都圏空港の機能強化を図っており、平成26年度中に羽田・成田両空港の年間合計発着枠を75万回化することを最優先課題として取り組んでいる。
 東京国際空港(羽田)については、国際線旅客ターミナルビルの拡張や駐機場等の整備を行うことで、25年度末に、国際線の発着枠を増枠し、年間発着枠を44.7万回へ拡大した。これによりアジア長距離や欧米を含む高需要・ビジネス路線を24時間展開する。また、引き続き長距離国際線の輸送能力増強に必要なC滑走路延伸事業等を着実に推進していくとともに、新たに際内トンネルの整備に着手し、国際・国内乗継機能を強化していく。
 
図表II-6-1-4 東京国際空港(羽田)の主要整備事業
図表II-6-1-4 東京国際空港(羽田)の主要整備事業

 
図表II-6-1-5 東京国際空港(羽田)の旅客数・発着回数の推移
図表II-6-1-5 東京国際空港(羽田)の旅客数・発着回数の推移
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 一方、成田国際空港については、旺盛な首都圏の国際航空需要に対応する国際線のメイン空港として、26年度中の年間発着枠30万回化を着実に実施する。また、25年3月からのオープンスカイの実現にあわせ、6時から23時までという現在の運用時間を前提としつつ、航空会社の努力では対応できないやむを得ない場合に限り、24時までの離着陸を認める離着陸制限(カーフュー)の弾力的運用を開始した。今後とも、国際線ネットワークの強化、国内フィーダー路線の拡充、LCCやビジネスジェット等のニーズへの対応強化等を図り、アジアのハブ空港としての地位を確立していく。
 
図表II-6-1-6 成田国際空港の施設概要
図表II-6-1-6 成田国際空港の施設概要

 
図表II-6-1-7 成田国際空港の旅客数・発着回数の推移
図表II-6-1-7 成田国際空港の旅客数・発着回数の推移
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 また、2020年の東京オリンピック・パラリンピック、さらにはその先を見据え、75万回化達成以降の首都圏空港の更なる機能強化に向けた具体的な方策の検討を進めている。具体的には、25年11月から交通政策審議会航空分科会基本政策部会の下に設置している首都圏空港機能強化技術検討小委員会において技術的な選択肢を取りまとめた後、関係自治体や航空会社なども参画した新たな場を設置し、機能強化方策の具体化について検討・協議を進める。

2)オープンスカイの戦略的な推進
 アジアなど海外の旺盛な経済成長を取り込みつつ、世界的な航空自由化に伴う競争環境の変化に対応するため、首都圏空港を含むオープンスカイ注1を戦略的に推進してきた。平成25年度において、新たに、スイス、フィリピン、ミャンマー及びオーストリアとの間で合意に至り、26年3月までに合計で27箇国・地域注2との間でオープンスカイを実現することとなった。

3)関西国際空港及び大阪国際空港に係るコンセッションの実現
 関西国際空港と大阪国際空港については、関西国際空港の国際拠点空港としての再生及び強化、両空港の適切かつ有効な活用を通じた関西における航空輸送需要の拡大を図ることを目的として、平成24年7月に新関西国際空港株式会社の下で経営統合され、一体的に運用されている。
 同社は、LCCをはじめとする旅客ネットワークの拡大や貨物ハブ化、25年12月27日の大阪国際空港ターミナル株式会社の全株式取得によるターミナルビルの一体運営等、積極的な取組みを進めるとともに、これらの取組みにより、両空港の事業価値の増大を図り、できるだけ早期に公共施設等運営権の設定(コンセッション方式によるPFI事業)を行うことを目指している。

4)空港整備の現状
 一般空港等の整備については、ハード・ソフト施策の組合せや既存空港の有効活用を中心とした質的充実に重点を移し、滑走路新設・延長に係る新規事業については、真に必要なものに限って事業化することとしている。
 平成25年度は処理能力の限界に近づきつつある那覇空港において滑走路増設事業に新規着手するとともに、福岡空港では抜本的な空港能力向上のための滑走路増設に係る環境アセスメント手続を実施している。また、航空機の安全運航を確保するため、老朽化が進んでいる施設の更新・改良を実施するとともに、地震等災害時における空港機能の確保を図るため、耐震化を着実に推進している。さらに、我が国全体の国際競争力や空港後背地域の地域競争力強化のため、既存ストックを活用し、ターミナル地域再編等の機能高質化を推進している。

(2)空港運営の充実・効率化
1)空港経営改革の推進
 平成25年6月に成立した「民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する法律(民活空港運営法)」に基づき、現在、仙台空港等において、関係者と調整しつつ、公共施設等運営権制度(コンセッション)を活用した民間への運営委託の実施に向けた具体的な検討を進めているところである。
 今後、「民活空港運営法」を活用し、地域の実情に応じ、民間の知恵と資金の活用や航空系事業と非航空系事業の一体的経営等を通じて空港経営改革を推進し、地元と緊密に連携協力して、空港を活用した内外の交流人口拡大等による地域活性化を図っていく。

2)LCCの参入促進
 平成24年3月に本邦初となるLCCが就航した。25年度末時点で、ピーチアビエーションは国内10路線、国際6路線、ジェットスター・ジャパンは国内14路線、バニラ・エアは国内2路線、国際2路線へネットワークを展開している。
 
図表II-6-1-8 本邦LCCの概要
図表II-6-1-8 本邦LCCの概要

 また、25年12月17日には春秋航空日本が航空運送事業許可を受け、成田空港を拠点に26年5月末からの運航を予定している。
 LCC参入促進により、訪日旅行客の増大や国内観光の拡大等、新たな需要の創出が期待されている。政府の目標としては「新規需要の喚起により航空需要の底上げを図り、2020年までに国内外航空旅客輸送に占めるLCCの割合を欧米並み(2〜3割程度)とする」としている。LCC参入を促進させるため、我が国及び各空港では様々な施策を行ってきている。
 国の施策としては、大きく以下の2点を実施・検討しているところである。
 1点目は、25年度において、地方路線維持やLCC支援による地域活性化実現のため、主に使用される機材(100t以下)に着目した着陸料の引き下げを実施している。
 2点目は、空港経営改革の推進である。日本の空港の多くは、国や自治体が管理しており、今後、滑走路等と空港ビルの運営を一体化するなどし、民間事業者による戦略的な料金体系や営業活動等を行うことによって、LCCを誘致することを期待している。25年7月には「民活空港運営法」が施行され、民間の力によって航空需要を拡大する取り組みが期待される。
 上記の施策に加え、各空港でもLCC受入の環境整備を行っており、大きく以下の2点を実施している。
 1点目は、LCC専用ターミナルの整備である。24年には、成田国際空港においてLCCの暫定受入施設が供用開始されるとともに、関西国際空港において本邦初のLCC専用ターミナルが、那覇空港において既存施設を活用した暫定LCCターミナルが供用開始された。また、成田国際空港では26年度中の完成を、関西国際空港では28年度中の供用開始を目指してLCC専用ターミナルの整備が図られており、中部国際空港でもローコストなターミナルの建設が検討されている。
 2点目は、着陸料を始めとする空港使用料の引き下げである。25年度も前年に引き続き、成田国際空港及び関西国際空港において、着陸料を含む空港使用料の引き下げ・見直しを実施している。

3)ビジネスジェットの受入れ推進
 ビジネスジェットとは、数人から十数人程度を定員とする小型の航空機であり、利用者のスケジュールに応じた時間設定や、プライバシーが確保されるため搭乗中に商談等が可能であることから、時間価値の高いビジネスマン等が利用の対象となっている。
 欧米では既にビジネスジェットがグローバルな企業活動の手段となっている。我が国においても、経済のグローバル化に伴い、日本から工場を進出するなど一方的な交流ではなく、外国から日本に投資を呼び込む必要性が認識されはじめており、今後のアジア地域における経済成長の取り込みの観点から、我が国においてビジネスジェットの重要性・可能性は増してきている。
 ただし、ビジネスジェット機の保有機数を各国で比較した場合、我が国では55機の登録(平成25年)にとどまっているのに対し、最も多い米国においては約19,000機が登録(同年)されており、我が国におけるビジネスジェットの普及は十分とは言い難い。
 そこで、我が国ではビジネスジェットの受入環境の整備を推進するため、ハード整備、規制緩和を以下のとおり行っている。
 首都圏空港においては、ビジネスジェット利用客の出入国やターミナルビルまでのアクセスにかかる時間・距離を短縮するためのルート整備など、利便性の向上に取り組んでいる。
 また、我が国へのビジネスジェットの乗り入れ促進のため、25年10月には外国籍ビジネスチャーター機が我が国に乗り入れる際に、一定の条件を満たした上で、それに接続する国内区間の運送を許可対象とする措置を実施した。さらに、ビジネスジェットを用いたチャーター事業に特化した、運航に関する包括的な審査基準を25年12月に施行した。
 今後、全国の空港におけるビジネスジェットの受入推進施策として、海外における推進施策を参考にし、実施可能なものから順次導入の検討を行い、ビジネスジェットの利用定着のため、積極的な情報発信やビジネスジェットに関する規制の緩和も含めて施策の検討を行っていく。

(3)航空交通システムの整備
1)新たな航空交通システムの構築
 長期的に増大が見込まれる航空交通需要や多様化するニーズへの対応が求められているとともに、国際民間航空機関(ICAO)や欧米において、世界的に相互運用性のある航空交通管理(ATM)に関する長期計画の検討が進められていることから、我が国においても、平成37年を見据えた将来の航空交通システムに関する長期ビジョン(CARATS)を策定した。CARATSは、高度に統合されたシステムにより出発から到着までの航空機の軌道を最適化する航空交通管理への変革を中核としており、その実現に向けたロードマップを策定し検討を進めている。25年度は、CARATSの実現に向けた取組みとして、産学官の連携の下、ロードマップに記載された具体的な施策の導入計画や、CARATSにおける目標を達成するための指標の分析等の検討を行った。
 具体的には、経路短縮による飛行時間や燃料費の削減、運航条件の改善等による空港就航率の更なる向上のため、高規格な広域航法(RNAV)や小型航空機用のRNAVの導入・展開について検討を進めている。また、巡航する航空機を主に扱う一定の高度以上の国内空域を分割して管制処理容量を拡大することや、陸域での定型的な通信や緊急を要しない指示及び許可をデータリンクにより伝達すること、衝突防止のための電子地形・障害物情報の提供、航空気象観測情報等の高度化による運航条件の緩和等のための検討も実施している。

2)首都圏空港の容量増大への対応
 首都圏空港・空域の容量拡大による航空交通サービスの充実を図るため、東京国際空港(羽田)においては、平成22年10月に導入した4本の井桁配置滑走路を使用した運用方式の慣熟を着実に進めた結果、26年3月に年間44.7万回の発着容量を達成した。今後は更なる機能強化に向けて具体的な方策の検討を進める。
 成田国際空港においては、26年度中の年間30万回の発着容量の実現に向け、現行の2本の滑走路を前提としつつ、騒音影響区域を広げずに発着能力を拡大するため、我が国では初、世界的にも例の少ない同時平行離陸方式を23年10月より導入しており、今後は運用方式の慣熟を着実に進めていく。

(4)国際航空施策の戦略的推進
 国際航空施策は、航空交渉、安全・セキュリティ、航空管制等、多岐にわたっており、戦略的・総合的に実施することとしている。
 また、国際民間航空機関(ICAO)の推計によると、アジア・太平洋地域は、平成22年から20年間で年平均6.2%の航空輸送量の成長が見込まれ、近い将来世界最大の航空市場に成長するとされている。地域の航空ネットワークの強化に貢献するとともに、数多くの航空インフラプロジェクトが進行中である地域の成長を我が国に積極的に取り込むことが、戦略上重要である。
 このような中、国際航空施策の戦略的推進の一環として、航空分野におけるインフラ国際展開の取組みを官民の連携により一層拡充するため、25年4月に航空インフラ国際展開協議会を設立し、官民一体となったセールス活動等を実施した。


注1 航空会社の新規参入や増便、航空会社間の競争促進による運賃低下等のサービス水準の向上を図るため、国際航空輸送における企業数、路線及び便数に係る制約を二カ国間で相互に撤廃することをいい、近年、世界の多くの国がこれを進めている。
注2 当該27箇国・地域との間の旅客数は、我が国に発着する総旅客数の約94%を占めている。


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