第5節 危機管理・安全保障対策

◯3 海上保安体制の強化

(1)業務体制の充実強化
 尖閣諸島周辺海域では、中国公船による領海侵入が執拗に繰り返されるなど、緊迫した状態が続いている。海上保安庁では、大型巡視船14隻相当による尖閣領海警備専従体制を確立するため、監視能力・制圧能力等を備えた1,000トン型巡視船の整備等の着実な推進のほか、石垣港における拠点機能を強化するため巡視船艇の係留施設の整備や本庁・管区本部及び巡視船艇間における迅速かつ的確な情報共有・伝達を通じた運用司令機能の強化等を実施するとともに、新たに就役する巡視船の乗組員等を配置する。加えて、更なる情勢の変化にも的確に対応し得る体制を確保するため、大型巡視船6隻の整備等に着手する。

(2)テロ対策の推進
 テロの未然防止措置として、臨海部の原子力発電所、石油コンビナート等の危険物施設、米軍施設等に対する巡視船艇・航空機による所要の警備を行っている。また、ゴールデンウィークや夏休み、年末年始等の旅客の移動が活発となる期間には、人が多く集まる旅客船ターミナルの警戒を重点的に実施している。
 また、前述のように、テロの未然防止のためには、関係機関はもとより民間との連携が重要であり、海上保安庁では、海事関係者や事業者等に自主警備の強化を働きかけるとともに、不審情報の提供依頼等を行い、地域と連携した取組みを実施している。

(3)不審船・工作船対策の推進
 不審船・工作船は、我が国領域内における重大凶悪な犯罪に関与している疑いがあり、その目的や活動内容を明らかにするためには、確実に不審船を停船させて立入検査を実施し、犯罪がある場合の犯人逮捕等適切な犯罪捜査を行う必要がある。このため、不審船・工作船への対応は、関係省庁と連携しつつ、警察機関である海上保安庁が第一に対処することとなっている。
 海上保安庁では、各種訓練を実施するとともに、関係機関等との情報交換を緊密に行い、不審船・工作船の早期発見に努めるとともに、不審船対応能力の維持・向上に努めている。

(4)海上犯罪対策の推進
 最近の海上犯罪の主な特色として、非漁業者が安易な気持ちで行うものから暴力団が資金源として組織的に行うものまで密漁事犯が多岐にわたるほか、処理費用の経費削減を目的として廃棄物を海上に不法投棄するなどの環境事犯が依然として発生していることが挙げられ、その形態も悪質・巧妙化している。また、国内における薬物・銃器犯罪の中には、暴力団や国際犯罪組織が関与する密輸事犯と密接な関係を有しているものもあり、また、国際犯罪組織が関与する密航事犯も発生している。
 各種海上犯罪については、依然として予断を許さない状況にあり、海上保安庁では、巡視船艇・航空機を効率的かつ効果的に運用することで監視取締りや犯罪情報の収集・分析、立入検査を強化するとともに、国内外の関係機関との情報交換等、効果的な対策を講じ、厳正かつ的確な海上犯罪対策に努めている。


テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む