第1節 ヒト・モノ・カネ・情報の流れ

コラム 都市農村交流による地域振興〜群馬県川場村と東京都世田谷区の縁組協定〜

 群馬県川場村は、群馬県の北部、武尊山の南麓に位置し、村の総面積の約80%が森林で占められた自然豊かな農山村です。総人口は3,445人(2015年2月末現在)であり、古くから農林業を基幹産業としていましたが、1975年以降、農業従事者の高齢化の進行と兼業農家の割合が増えたことにより、遊休農地が増え、田園風景の荒廃が懸念されていました。
 一方、東京都世田谷区では、都会で望めなくなった豊かな自然の恵みに触れながら、地方の方々と相互に協力して都市と山村の交流を深めるための「第二のふるさと」が求められていました。このような中、恵まれた自然環境と田園景観を活かした「農業プラス観光」の基本方針のもと、村の活性化に取り組んでいた川場村と構想が一致したことから、1981年に「区民健康村相互協力に関する協定(縁組協定)」が結ばれました。
 川場村では、1986年に二つの区民健康村(なかのビレジ・ふじやまビレジ)を建設し、世田谷区内の各小学校の移動教室を受入れ、村めぐりや登山等村内の自然や営みを学ぶ体験を毎年行っています。また、区民健康村を活動拠点として、世田谷区民による森林保全活動やレンタアップル等の地元農家での農業体験が行われるなど、多くの世田谷区民が訪れており、毎年50,000人程度の方が区民健康村を利用しています。
 
図表2-1-53 川場村の位置
図表2-1-53 川場村の位置

 さらに、世田谷区のお祭りやイベントの際には、川場村から太鼓演奏の団体等が参加し、農家が農産物の直売をするなど川場村民も世田谷区を訪れています。
 そのほか、世田谷区との交流をきっかけにつくられた道の駅「川場田園プラザ」では、地域資源を活かし、地元農産物の直売や果物狩り、陶芸等の体験やイベント等により、村民と来訪者の交流の機会を提供するなど取り組んでいます。
 このような「農業プラス観光」の取組みにより、川場村への観光客数は増加傾向にあり、2013年度には「川場田園プラザ」の知名度が向上したこともあり、観光入込客数は約150万人を記録しました。田園プラザの盛況は農産物の売上げが拡大するとともに、安定的な農業経営、就労の場の拡大等村の活性化につながっています。
 
図表2-1-54 こども里山自然学校の様子
図表2-1-54 こども里山自然学校の様子

 
図表2-1-55 川場村観光入込客数の推移
図表2-1-55 川場村観光入込客数の推移
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注 川場村のりんご農家より木を借りて1年間オーナーになる制度。


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