一方、歩行者・自転車に係る死傷事故発生割合が大きい生活道路については、幹線道路への交通転換を図り、車両の通過交通抑制並びに速度低減による安全な歩行空間の確保等を目的として、都道府県公安委員会と連携し、面的な速度規制と組み合わせた車道幅員の縮小・路側帯の拡幅、歩道整備、ハンプの設置等の対策を行うなど、面的かつ総合的な交通事故抑止対策を推進している。
(2)通学路の交通安全対策の推進
通学路については、平成24年4月に相次いだ集団登校中の児童等の事故を受け、学校や教育委員会、警察等と連携した「通学路緊急合同点検」を実施しており、その結果に基づく対策への支援を重点的に実施している。
さらに、継続的な通学路の安全確保のため、市町村ごとの「通学路交通安全プログラム」の策定などにより、定期的な合同点検の実施や対策の改善・充実等の取組みを推進している。
(3)ITを活用した高速道路上における安全運転支援
平成23年8月より、全国の高速道路上においてITSスポットや車載器を活用したETC2.0サービスを開始しており、事故多発地点、道路上の落下物等の注意喚起及び積雪や越波等の状況に関する情報を自動車のカーナビ等に提供することにより安全運転支援を推進している。
(4)安全で安心な道路サービスを提供する計画的な道路施設の管理
全国には、約70万の橋があり、今後、急速に高齢化していくため、安全の確保のためには、約50万橋を管理する市町村をはじめ、橋梁等の維持修繕・更新にしっかりと取り組んでいく必要がある。
そこで、道路の適切な管理を図るため、点検を行うべきことの明確化や、道路構造物への影響が大きい大型車両の通行を誘導する道路を指定する制度の創設、制限違反車両の取り締まりの強化などを内容とする「改正道路法」を公布し、政令において、改築・修繕の代行の対象となる施設等はトンネル、橋等とすることや、道路の維持・修繕に関する技術的基準等を定めた。
橋梁・トンネルなどは、5年に1度、近接目視で点検する等、道路管理者の義務を明確化する省令を、26年3月31日に公布した。
さらに、26年4月14日に、社会資本整備審議会道路分科会においてとりまとめられた「道路の老朽化対策の本格実施に関する提言」を受けて、今後、メンテナンスサイクルの確定(道路管理者の義務の明確化)を図るとともに、メンテナンスサイクルを回す仕組みを構築することとしている。
引き続き、26年7月迄に全都道府県で設置された「道路メンテナンス会議」を活用した定期点検の着実な推進、地域単位での点検業務の一括発注の実施、地方公共団体職員向けの研修の充実、直轄診断等の国の技術支援など、地方公共団体の実施する老朽化対策の支援についても、より一層積極的に取り組んでいるところである。
(5)「高速・貸切バス安全・安心回復プラン」の着実な実施
平成24年4月に発生した関越道高速ツアーバス事故を受けて、25年4月に「高速・貸切バス安全・安心回復プラン」を策定し、25・26年の2年間にわたり、高速ツアーバスの新高速乗合バスへの移行・一本化や交替運転者の配置基準の設定等の措置を実施するとともに、その実施状況について随時フォローアップ・効果検証を行ってきた。引き続き、街頭監査の実施や継続的に監視すべき事業者の把握など本プランの各措置の実効性を確保し、バス事業の安全性向上・信頼の回復に向けた取組みを推進していく。
(6)運転者の体調急変に伴う事故防止対策
平成26年3月3日に発生した北陸道高速バス事故を受け、従来からの運転者の健康管理に係る施策を見直し、4月18日に「事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル」の改訂を含む「運転者の体調急変に伴うバス事故を防止するための対策」を策定した。同対策の道路運送事業者への着実な浸透を図り、運転者の体調急変に伴う事故の防止に取り組んでいる。
(7)事業用自動車の引き起こした事故の調査機能の強化
社会的影響の大きな事業用自動車の重大事故については、事故の背景にある組織的・構造的問題の更なる解明を図るなど、より高度かつ複合的な事故要因の調査分析を行うとともに、客観性がありより質の高い再発防止策の提言を得ることが求められているところ。
このため、警察庁と連携して「事業用自動車事故調査委員会」を設け事故の調査機能の強化に取り組んでいる。
(8)国際海上コンテナの陸上運送の安全対策
国際海上コンテナの陸上運送の安全対策を充実させるため、平成25年6月に新たな「国際海上コンテナの陸上における安全輸送ガイドライン」等を策定し、地方での関係者会議や関係業界による講習会等を通じ、ガイドライン等の浸透や関係者と連携した実効性の確保に取り組んでいる。
(9)自動車の総合的な安全対策
1)事業用自動車の安全対策
平成21年3月に策定した「事業用自動車総合安全プラン2009」について、26年11月に中間見直しを行った。人身事故件数・死亡者数半減等の30年の目標に向けて、今後も国土交通省・事業者など関係者一丸となって、中間見直し後のプランの施策を着実に実施し、事業用自動車の安全・安心の確保を図っていく。
また、自動車運送事業者における交通事故防止のための取組みを支援する観点から、デジタル式運行記録計等の運行管理の高度化に資する機器の導入や、過労運転防止のための先進的な取組み等に対し支援を行っている。さらに、生体センサーやクラウドの活用など、多様な機能の進化、技術の進展の成果を統合し、次世代の運行管理を担うシステムのあり方を確立するための検討を開始した。
2)今後の車両安全対策の検討
第9次交通基本計画(平成23年3月策定)における目標(27年までに交通事故死者数を3,000人以下)の達成に向けて、「安全基準等の拡充・強化」、「先進安全自動車(ASV)推進計画」及び「自動車アセスメント」の3つの施策を有機的に連携させ、車両安全対策を推進している。
3)安全基準等の拡充・強化
自動車の安全性の向上を図るため、かじ取装置や応急用スペアタイヤ等に関する4つの国際基準を国内へ導入し、カーブでの走行性能や必要なハンドル操作力の上限、応急用スペアタイヤ装着時の制動性能等の要件を新たに整備した。また、二輪車に対する先進ブレーキシステム(アンチロックブレーキシステム(ABS)/コンバインドブレーキシステム(CBS))の装備義務付け、バス及びトラックに対する車線逸脱警報装置(LDWS)の装備義務付け等の基準強化を行った。
4)先進安全自動車(ASV)の開発・実用化・普及の促進
産学官の連携により、衝突被害軽減ブレーキなど実用化されたASV技術の本格的な普及を促進するとともに、ドライバー異常時対応システムなど新技術の開発・実用化に向けた検討を進めている。
5)自動車アセスメントによる安全情報の提供
安全な自動車及びチャイルドシートの開発やユーザーによる選択を促すため、安全性能を評価し結果を公表している。平成26年度より、衝突被害軽減ブレーキなど予防安全技術の評価を新たに開始した。
6)自動運転の実現に向けた取組み
国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)の下に自動運転分科会を立ち上げ、日本と英国が共同議長に就任した。また、車線維持支援装置に係る基準を提案するなど、先進技術に関する国際基準化を主導している。さらに国内においても、府省連携施策である戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)に基づき、通信利用型運転支援システムの実用化に向けた実証実験等の取組みを行っている。
7)リコールの迅速かつ着実な実施・ユーザー等への注意喚起
自動車のリコールの迅速かつ着実な実施のため、自動車メーカー等及びユーザーからの情報収集に努め、自動車メーカー等のリコール業務について監査等の際に確認・指導するとともに、安全・環境性に疑義のある自動車については(独)交通安全環境研究所において技術的検証を行っている。また、不具合情報の収集を強化するため、「自動車不具合情報ホットライン」(
www.mlit.go.jp/RJ/)について周知活動を積極的に行った。
さらに、国土交通省に寄せられた不具合情報や事故・火災情報等を公表し、ユーザーへの注意喚起が必要な事案や適切な使用及び保守管理、不具合発生時の適切な対応について、ユーザーへの情報提供を実施した。特に、「オートマ車でのエンストに注意!!」及び「スタッドレスタイヤは4輪全てに装着して下さい!!」について報道発表等を通じ、ユーザー等への注意喚起を行った。
なお、平成26年度のリコール届出件数は355件及び対象台数は9,557,888台であった。
8)自動車検査の高度化
不正な二次架装
注の防止やリコールにつながる車両不具合の早期抽出等に資するため、情報通信技術の活用による自動車検査の高度化を進めている。
(10)自動車損害賠償保障制度による被害者保護
自動車損害賠償保障制度は、クルマ社会の支え合いの考えに基づき、自賠責保険の保険金支払い、ひき逃げ・無保険車事故による被害者の救済(政府保障事業)を行うほか、重度後遺障害者への介護料の支給や療護施設の設置等の自動車事故対策事業を実施するものであり、交通事故被害者の保護に大きな役割を担っている。