■3 海上保安体制の強化
(1)業務体制の充実強化
尖閣諸島周辺海域を常時徘徊する中国大型公船への対応に万全を期すため、海上保安庁では、大型巡視船による尖閣領海警備専従体制の確立に向け、監視能力等を備えた1,000トン型巡視船の整備等の着実な推進のほか、石垣港における拠点機能強化のための係留施設の整備等や新たに就役する巡視船の乗組員等を配置する。また、更なる情勢の変化にも的確に対応し得る体制の確保のため、高性能化を図った巡視船への代替整備等を着実に進める。加えて、平成27年度からは、尖閣諸島周辺海域及び全国における隙のない海上保安体制の構築のため、新型ジェット機、規制能力強化型巡視船の整備や運航費の確保等を進めることとする。
(2)テロ対策の推進
テロの未然防止措置として、臨海部の原子力発電所、石油コンビナート等の危険物施設、米軍施設等において巡視船艇・航空機による所要の警戒を行っている。また、ゴールデンウィークや夏休み、年末年始等の旅客の移動が活発になる時期には、人が多く集まる旅客船ターミナル等において重点的に警戒を実施している。
また、海事関係者や事業者等に自主警備の強化を働きかけるとともに、不審情報の通報依頼等を行い、地域との連携に努めている。
(3)不審船・工作船対策の推進
不審船・工作船は、我が国領域内における重大凶悪な犯罪に関与している疑いがあり、その目的や活動内容を明らかにするため、確実に停船させ、立入検査を実施し、犯罪がある場合は適切に犯罪捜査を行う必要がある。このため、不審船・工作船への対応は、関係省庁と連携しつつ、警察機関である海上保安庁が第一に対処することとしている。
海上保安庁では、各種訓練を実施するとともに、関係機関等との情報交換を緊密に行うことにより、不審船・工作船の早期発見及び対応能力の維持・向上に努めている。
(4)海上犯罪対策の推進
最近の海上犯罪の主な特色として、外国漁船による違法操業事犯が増加しており、中でも中国サンゴ漁船の検挙隻数が増加している。また、国内密漁事犯では、密漁者と買受業者が手を組んだ組織的な形態で行われる場合や、暴力団が資金源として関与する場合などが見受けられるほか、処理費用の経費削減を目的として廃棄物を海上に不法投棄する等の環境事犯も依然として発生しており、その形態も悪質・巧妙化している。その他、国内における薬物・銃器犯罪の中には、暴力団や国際犯罪組織が関与する密輸事犯と密接な関係を有しているものもあり、また、国際犯罪組織が関与する密航事犯も発生している。各種海上犯罪については、依然として予断を許さない状況にあり、海上保安庁では、巡視船艇・航空機を効率的かつ効果的に運用することで監視取締りや犯罪情報の収集・分析、立入検査を強化するとともに、国内外の関係機関との情報交換等、効果的な対策を講じ、厳正かつ的確な海上犯罪対策に努めている。