第4節 健全な水循環の維持又は回復
■1 水の恵みを享受できる社会を目指して
これまで、戦後高度成長期の急激な水需要に対して水需給バランスの確保を優先して水資源開発施設の整備を進めてきた。一方、大規模災害、老朽化等に伴う事故による広域かつ長期の断水の発生など水インフラの脆弱性、地球温暖化による気候変動リスク、健全な水循環の維持又は回復などの社会からの要請、国際貢献のプレゼンスや国際市場における競争力の強化などの、顕在化してきた様々な課題への対応が迫られている。
これらを背景として、平成25年10月22日に国土交通大臣から、国土審議会に対して「今後の水資源政策のあり方」について諮問し、27年3月25日に答申された。
本答申では、次世代水政策元年として、長期的な視点が大変重要であることを踏まえ、これまでの水需要の増大に対して新たな水資源開発施設を整備することによって供給量の増大を図るという需要主導型の水資源政策から、水インフラの老朽化対策や地震等の大規模災害等、危機的な渇水などのあらゆるリスクに対して、水の安定供給を確保するため、水の恵みを将来にわたって享受できる「幅を持った社会システム」への転換を目指す政策へと更なる進化を図ることが提言され、実施すべき事項がまとめられた。