第1節 ICTの利活用による国土交通分野のイノベーションの推進

■1 ITSの推進

 最先端のICTを活用して人・道路・車を一体のシステムとして構築する高度道路交通システム(ITS)は、高度な道路利用、ドライバーや歩行者の安全性、輸送効率及び快適性の飛躍的向上の実現とともに、交通事故や渋滞、環境問題、エネルギー問題等の様々な社会問題の解決を図り、自動車産業、情報通信産業等の関連分野における新たな市場形成の創出につながっている。
 また、平成25年6月に閣議決定され、26年6月に改定された「世界最先端IT国家創造宣言」に基づき、世界で最も安全で環境にやさしく経済的な道路交通社会の実現を目指し、交通安全対策・渋滞対策・災害対策等に有効となる道路交通情報の収集・配信に係る取組み等を積極的に推進している。

1)社会に浸透したITSとその効果
(ア)ETCの普及促進と効果
 ETCは、今や日本全国の高速道路及び多くの有料道路で利用可能であり、車載器の新規セットアップ累計台数は平成26年9月時点で約4,756万台、全国の高速道路での利用率は約89.6%となっている。従来高速道路の渋滞原因の約3割を占めていた料金所渋滞はほぼ解消され、CO2排出削減等、環境負荷の軽減にも寄与している。さらに、ETC専用ICであるスマートICの導入や、ETC車両を対象とした料金割引等、ETCを活用した施策が実施されるとともに、有料道路以外においても駐車場での決済やフェリー乗船手続等への応用利用も可能となるなど、ETCを活用したサービスは広がりと多様化を見せている。

(イ)道路交通情報提供の充実と効果
 走行経路案内の高度化を目指した道路交通情報通信システム(VICS)対応の車載器は、平成26年9月末現在で約4,411万台が出荷されている。VICSにより旅行時間や渋滞状況、交通規制等の道路交通情報がリアルタイムに提供されることで、ドライバーの利便性が向上し、走行燃費の改善がCO2排出削減等の環境負荷の軽減に寄与している。

2)新たなITSサービスの技術開発・普及
(ア)スマートウェイの推進
 これまで、産学官が一体となり、交通安全、渋滞対策、環境対策等を目的とし、人と車と道路とを情報で結ぶITS技術を活用した次世代の道路であるスマートウェイを推進してきた。平成23年には、全国の高速道路上を中心に設置したITSスポットと車両に搭載された車載器との間で高速・大容量の双方向通信を行う世界初の路車間通信サービスを開始した。

(イ)ETC2.0サービスの展開
 平成26年10月から、整備したITSスポットや車載器を活用し、これまでの自動料金収受に加え、高速道路上で運転支援などが可能である新しいサービス”ETC2.0”を開始した。ETC2.0サービスでは、渋滞回避支援(視覚的に理解しやすい前方道路上の画像やリアルタイムの広域かつ高精度な渋滞情報の提供)、安全運転支援(落下物や渋滞末尾情報、前方の気象等の静止画など危険事象に関する情報の提供)、災害時の支援(通行止めの際の利用者への適切な情報提供)といった情報提供サービスを提供する。また、ETC2.0から得られる経路情報を活用した新しいサービスとして、渋滞等を迂回する経路を走行したドライバーを優遇する措置や商用車の運行管理支援などを今後展開する予定である。さらに、民間駐車場決済やドライブスルー決済といった民間サービスも検討している。
 
図表II-10-1-1 路車協調システムによる運転支援サービス「ETC2.0」
図表II-10-1-1 路車協調システムによる運転支援サービス「ETC2.0」

(ウ)ビッグデータの活用等に向けた検討
 安全・安心、円滑な道路交通の実現のため、ETC2.0サービスの普及促進を行うとともに、ビッグデータである車両の走行履歴や挙動履歴等の大量のプローブ情報を収集・分析することで、きめ細やかな道路管理等に資する取組みを進めている。

(エ)先進安全自動車(ASV)プロジェクトの推進
 ASV推進計画に基づき、ICT技術等の先進技術を利用してドライバーの安全運転を支援する先進安全自動車(ASV)の開発・実用化・普及に取り組んでいる。具体的には、ドライバー異常時対応システム、ドライバーの過信、システムの複合化、車車間通信・歩車間通信等の通信利用型安全運転支援システムの開発促進といった事項について検討を進めている。


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