■2 我が国の海洋権益の保全 (1)領海及び排他的経済水域における海洋調査の推進及び海洋情報の一元化  我が国の領海及び排他的経済水域には、調査データの不足している海域が存在しており、海上保安庁では、この海域において、海底地形、地殻構造、領海基線等の海洋調査を重点的に実施し、船舶交通の安全や我が国の海洋権益の保全、海洋開発等に資する基礎情報の整備を戦略的かつ継続的に実施している。平成26年6月には、海上保安庁の自律型潜水調査機器(AUV)「ごんどう」により、沖縄県久米島沖において海底地形調査を実施した結果、これまで日本周辺で知られている中で最大規模のチムニー(熱水噴出により形成された重金属等から構成される煙突状の高まり)群を発見し、その後の(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による資源調査から、銅、亜鉛等が高品位で存在する有望な海底熱水鉱床であることが確認された。  また、内閣官房総合海洋政策本部事務局の総合調整の下、海洋情報の所在を一元的に収集・管理・提供する「海洋情報クリアリングハウス」を運用している。さらに、海洋に関する様々な自然情報(海底地形、海流、水温等)や社会情報(港湾区域、漁業権区域等)を一般ユーザーが活用できるよう、地図上に自由に重ねて表示できるウェブサービス「海洋台帳」を運用している。 (2)大陸棚の限界画定に向けた取組み  平成20年11月に我が国が国連海洋法条約に基づき、国連の「大陸棚限界委員会」へ提出した、200海里を超える大陸棚に関する情報について、同委員会は24年4月20日に勧告を採択した。勧告では、我が国の国土面積の約8割に相当する大陸棚の延長が認められ、26年10月、四国海盆海域と沖大東海嶺海域が日本の大陸棚として新たに政令で定められた。一方、一部海域では審査が先送りされたため、海上保安庁では、内閣官房総合海洋政策本部事務局の総合調整の下、関係省庁と連携して、引き続き、大陸棚の画定に向けた対応を行っていくこととしている。 (3)沖ノ鳥島の保全、低潮線の保全及び活動拠点の整備等 1)沖ノ鳥島の保全  沖ノ鳥島は、我が国最南端の領土であり、国土面積を上回る約40km2の排他的経済水域の基礎となる極めて重要な島であることから、基礎データの観測・蓄積や護岸等の損傷について点検、補修等を行っている。引き続き、2つの小島だけでなく環礁全体の保全を図るため、国の直轄管理により十全な措置を講じる。 2)低潮線の保全  「排他的経済水域及び大陸棚の保全及び利用の促進のための低潮線の保全及び拠点施設の整備等に関する法律(低潮線保全法)」等に基づき、全国185箇所の低潮線保全区域を政令で指定し、区域内で行為規制を実施している。また、防災ヘリコプターや船舶等による巡視や衛星画像等を用いた低潮線及びその周辺の状況の調査を行い、域内における制限行為の有無や自然侵食による地形変化を確認することにより、排他的経済水域及び大陸棚の基礎となる低潮線の保全を図るとともに、低潮線の保全を確実かつ効率的に実施していくために、関連情報を適切に管理している。 図表II-2-5-2 低潮線の保全 3)遠隔離島(南鳥島・沖ノ鳥島)における活動拠点の整備  「低潮線保全法」等に基づき、本土から遠隔の地にある南鳥島・沖ノ鳥島において、排他的経済水域及び大陸棚の保全及び利用に関する活動拠点として、船舶の係留・停泊、荷さばき等が可能となる港湾の施設の整備を進めている。