■3 国土交通省における取組み  国土交通省においても、同戦略に基づき、国土交通分野におけるインフラシステム海外展開を強力に推進することとしている。競合する諸外国との競争に勝ち抜き、我が国企業が受注を獲得するためには、ハードとソフトが一体となって安全で信頼性の高いシステムを構築するなど、我が国の強みを発揮しつつ、相手国のニーズにも柔軟に対処していくことが必要である。そのため、以下のとおり1)「川上」からの参画・情報発信、2)インフラシステム海外展開に取り組む企業支援、3)ソフトインフラの海外展開の3つを施策の柱として推進を図っている。 1)「川上」からの参画・情報発信  プロジェクトの構想段階(川上)からの参画を推進するため、我が国技術によりもたらされる安全性や信頼性、運営段階も含めトータルで見た費用対効果の高さについて、官民一体となったトップセールスや国際会議の機会等を活用した情報発信に取り組んでいる。 2)インフラシステム海外展開に取り組む企業支援  巨額の初期投資や長期にわたる整備、需要リスクといった交通・都市インフラ分野において川下(管理・運営)に進出する企業の事業リスクを軽減するため、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)を設立した。また、海外で事業展開する企業のトラブル等の解決を支援するために相談窓口「海外建設ホットライン」を設置しているほか、海外建設・不動産市場データベースの拡充、在外公館からの情報収集、日系ゼネコンOB等現地事情に詳しい民間人材(通称「民間アタッシェ」)による海外建設・不動産情報の紹介等、我が国企業のインフラシステム海外展開を多角的に支援する取組みを行っている。 3)ソフトインフラの海外展開  我が国企業がプロジェクトに参画しやすい環境を整備するための我が国技術・システムの国際標準化や相手国でのデファクト・スタンダード化、我が国企業の事業環境を改善するための相手国の制度整備支援、相手国における持続的なインフラの運営・維持に資する技術者・技能者層の育成支援等の取組みを行っている。 (1)トップセールスの推進  トップセールスについて、平成26年度において、国土交通大臣は、モンゴル、マレーシア、カンボジア、インド、ベトナム等を歴訪し、相手国のトップや国土交通分野を担当する閣僚との協議・意見交換を行うことにより、我が国インフラシステムのトップセールスに取り組んだ。また、副大臣・大臣政務官においては、アフリカ・中南米を含む合計12か国を訪問し、インフラニーズの見込める国に対して、我が国インフラシステムのアピールを行った。このほか、諸外国の大臣等要人の来日・表敬といった機会、セミナーの開催や新興国等の要人招聘を通じ、我が国インフラシステムの優位性に関する発信に積極的に取り組んだ。 (2)各国との対話の推進  トップセールス以外にも、二国間において次官級会合の開催、大臣間の協力覚書の署名等を進めている。また、官民が連携してインフラ輸出を進めていく場として、エコシティ、水、道路、鉄道、港湾、航空といったそれぞれのインフラ分野において海外官民協議会を設置し、我が国インフラについての情報発信を行っている。平成26年度には、防災分野について、産学官の連携により「日本防災プラットフォーム」が設立された。 1)インドネシア  平成26年5月、インドネシアにおいて「第5回日インドネシア交通次官級会合」を開催し、両国間で進められている物流、鉄道、自動車、港湾、海上交通及び航空の各交通分野における協力プロジェクトについて、最新の状況を共有した。また、新しいトピックについても取り上げ、新たな協力の可能性について認識を共有するとともに、今後は民も含めた対話を一層拡大し両国間で緊密な協力・連携を図っていくことを確認した。  6月にインドネシアで開催された「ジャカルタ首都圏投資促進特別地域(MPA) 注1 第9回技術委員会」においては、鉄道、港湾、航空等の各プロジェクトの進捗状況を確認するとともに、課題解決に向けた両国の取組みに関する情報交換を行った。  11月にはインドネシアにおいて「第2回日インドネシア建設次官級会合」を開催し、全体会合で「PPPプロジェクトの推進」及び「気候変動に対するインフラ強靱化」の2つのテーマについて、また、個別のワーキングで道路、防災、下水道、建築物及び地下利用の各分野について、両国における取組みや課題、技術等に関する情報交換を行った。 2)タイ  平成27年1月14日、バンコクにて開催された「第3回日タイ鉄道次官級ワーキンググループ」で、タイの鉄道プロジェクトにおける両国の協力について議論したほか、タイ側より、鉄道協力に関する大臣間の覚書(MOI)署名を打診された。これを受け、同年2月9日、東京にて開催された日タイ首脳会談に合わせて、太田国土交通大臣とプラジン運輸大臣との間で、今後のタイとの鉄道協力の方向性に関する覚書(MOI)を署名した。 3)ベトナム  平成27年1月、ベトナム建設省と、両国の建設分野及び都市開発分野における協力を強化することとし、包括的な協力覚書を署名した。また、日本において「第4回日ベトナム交通次官級会合」及び「第8回ベトナム高速道路セミナー」を開催し、ベトナムにおける、鉄道、港湾、空港、道路等の交通インフラプロジェクトについて、進捗状況を共有するとともに、課題を整理し、今後の協力の方向性を確認した。 4)ミャンマー  平成26年6月、ミャンマーにおいて「第2回日ミャンマー交通次官級会合」及び「第2回日ミャンマー陸上輸送分野高級実務者会合」を開催し、同国における鉄道、自動車、海事、港湾、航空及び気象の各交通インフラプロジェクトについて、事業の進捗等最新の状況を共有するとともに、両国で緊密な協力及び連携を図っていくことを確認した。  さらに、27年1月にはミャンマーにおいて「第2回日ミャンマー建設次官級会合」を開催し、道路、都市、建築住宅及び建設産業に係る、両国の取組みや課題、技術等に関する情報交換を行った。 5)ラオス  平成26年10月、太田国土交通大臣は、日本において公共事業運輸大臣との会談を行い、交通分野における協力関係に関する協力覚書の署名を行った。会談では、ラオスの交通インフラ等の整備に関して意見交換を行うとともに、署名された覚書に基づいて協力関係を一層強化することで一致した。 6)インド  平成26年11月、両国における都市の更なる経済的・社会的な成長・発展に大きく貢献することを目的として「第8回都市開発に関する日印交流会議」をインドにおいて開催し、都市交通、都市開発及び水環境分野における情報及び意見交換を実施した。 7)クウェート  平成26年10月、太田国土交通大臣は来日した計画開発担当大臣と、クウェート国の今後の開発計画について意見交換を行うとともに、交通分野(技術協力等)及び公共事業分野(インフラ分野の情報交換等)に係る協力覚書に署名した。 8)ロシア  国土交通省とロシア運輸省との間で署名した運輸分野における協力覚書を踏まえ、北極海航路の通航安全対策等について、「日露運輸作業部会」等の場を活用して意見交換を実施した。同国の都市環境問題に関しては、「日露都市環境問題作業部会」を通じて協力を進め、26年12月には、作業部会の総括会合及び分科会が民間企業等の参画を得て開催された。また、作業部会の日本側推進母体である「日露都市環境協議会」も順調に参加企業を増やし、27年3月のモスクワでの国土交通省・JETRO共催セミナーには多数の日本企業の参加があった。 9)メキシコ  日メキシコ間の交通分野における協力を促進するため、日本の技術の提供や両国の経験の共有を内容とする覚書を平成26年7月に署名した。 10)韓国  平成27年3月、韓国において「第10回日韓運輸ハイレベル協議」を開催し、交通系ICカードやタクシーサービス、宅配事業等について、両国における取組事例に関する情報交換を行うとともに、両国間で交通分野における協力を継続することで一致した。 11)モンゴル  平成26年4月、太田国土交通大臣はモンゴルにおいて、同国の発展に必要となるインフラ整備支援について道路・運輸大臣及び建設・都市計画大臣と会談を行うとともに、両国の協力を推進する体制を強化するための覚書を署名した。 (3)(株)海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN 注2 )の設立  新興国等の民間活用型インフラ事業のうち、交通や都市開発の分野では、長期的にはリターンが期待される一方、長期にわたる整備、運営段階の需要リスク、現地政府の影響力という特性があり、これに適切に対応することが、我が国企業の参画に当たっての課題である。  このため、「日本再興戦略」の一環として、我が国企業の交通事業・都市開発事業の海外市場への参入促進を図るため、需要リスクに対応し「出資」と「事業参画」を一体的に行うJOINを平成26年10月に設立した。なお、27年度は財政投融資の産業投資として372億円を計上している。(下図参照)。 図表II-9-1-2 事業スキーム  JOINは、我が国企業と協調して現地事業体に出資等の資金供給を行うとともに、現地での事業への参画として、役員・技術者等の人材派遣や相手国側との交渉を行うこととしている。インフラシステムの海外展開は国の重要な政策であることから、国土交通大臣が、関係大臣とも連携しつつ、適切にJOINを監督していく。 (4)ソフトインフラの展開  国際規格の制定に向けた議論に積極的に参画することで我が国規格・基準の反映を目指すほか、我が国規格等のデファクト・スタンダード化も進めている。また、専門家派遣、JICA研修への協力、セミナーの開催等を通じて、相手国の制度整備や、相手国のインフラの整備・運営・維持管理を担う技術者の育成支援を行っている。 注1 我が国とインドネシアとの連携の下、ジャカルタ首都圏のインフラ開発等を加速化するため、「首都圏投資促進特別地域(MPA)構想に関する協力覚書」(平成22年10月に外務省、経済産業省、国土交通省が署名)に基づき、インドネシア関係閣僚との間で、同国のインフラ案件及び投資制度を閣僚レベルで協議する枠組み。 注2 株式会社海外交通・都市開発事業支援機構の英語名称である、Japan Overseas Infrastructure Investment Corporation for Transport & Urban Developmentの略称。