■2 国際機関への貢献と戦略的活用 (1)アジア太平洋経済協力(APEC)への対応  国土交通省では、APECの交通・観光分野に係る大臣会合及び作業部会に積極的に取り組んでいる。  平成25年9月に東京で開催された第8回APEC交通大臣会合において、「APEC域内の高質な交通を通じた連結性の強化」を基本テーマに議論が行われ、議論の成果として、1)2020年までにAPEC地域の交通ネットワークがどのような姿になるかを示す「コネクティビティ・マップ」を策定すること、2)加盟国・地域の経験を持ち寄ったインフラの投資・資金調達・運営のベストプラクティスを共有すること、3)利便性・安全性・環境保護性に重点をおいた「質の高い交通(Quality Transport)」ビジョンを策定すること等を内容とする「大臣共同声明」が採択された。上記3つのイニシアチブについては、27年フィリピンにおいて開催予定である第9回APEC交通大臣会合にその取り組みを報告することとされている。  また、観光分野では、26年9月に第8回APEC観光大臣会合が中国・マカオにて開催され、各エコノミーからそれぞれの観光戦略について発表するとともに、アジア太平洋地域の観光市場の統合やスマートツーリズム、低炭素観光の促進等について議論が行われた。 (2)東南アジア諸国連合(ASEAN)  国土交通省は、平成15年に創設された日本とASEANの交通分野の協力枠組みである「日ASEAN交通連携」の下、様々な協力プロジェクトを実施している。この「日ASEAN交通連携」におけるプロジェクトの進捗状況について確認するとともに、今後の方向性、新たなプロジェクトについて議論するため、「日ASEAN交通大臣会合」等の会合が毎年開催されている。  26年11月にミャンマーで開催された「第12回日ASEAN交通大臣会合」において、各プロジェクトの実施計画である「日ASEAN交通連携ワークプラン 2014-2015」とともに、1)新・環境行動計画の策定、2)日ASEANクルーズ振興戦略の実施、3)ランドブリッジ実現のための調査、4)海の安全についての協力の4つの新規協力プロジェクトが承認された。また、「日ASEAN交通連携」における成果物として、1)港湾EDI導入ガイドライン、2)日ASEANクルーズ振興戦略、3)ASEAN諸国のエコエアポート調査報告書、4)ランドブリッジ予備調査報告書の4つの文書が承認された。 (3)経済協力開発機構(OECD)  国土交通省では、OECDの活動のうち、国際交通フォーラム(ITF)、造船部会、地域開発政策委員会(TDPC)、観光委員会並びにOECD及びITFが共同で設置している共同交通研究センター(JTRC)に参画している。  ITFは、54ヵ国の交通担当大臣を中心に、年1回、世界的に著名な有識者・経済人を交え、交通政策に関するハイレベルかつ自由な意見交換を行う国際枠組みであり、これまで、交通分野に関する気候変動問題、グローバリゼーション等に関して議論を行ってきた。平成26年5月の大臣会合では、「変わりゆく世界における交通」をテーマとして、人口動態の変化、経済活動の都市への集中、サプライチェーンの変化、気候変動、新技術の登場、デジタル化の進展といった変化の中における交通のあり方について議論された。  OECD造船部会では、造船市場の公正な競争条件を確保するため、各国の造船政策の健全性を評価する政策レビューの実施や、各国の金融支援等の状況を取りまとめた政策支援一覧表の作成などを通じて、造船主要国間の政策協調と相互監視を行っている。TDPCでは、国土・地域政策等に関する各加盟国の政策レビュー、グリーン成長戦略における都市政策等の検討や、コンパクトシティ政策、高齢社会における持続可能な都市政策等の調査等に積極的に取り組んでいる。また、26年度、27年度を通じて、二回目の我が国の国土・地域政策に関する国別レビューが実施されることから、これに伴う対応を進めている。  観光委員会では、国際的な観光振興を図るための協力を目的として、各国の観光関連政策のレビュー及び提言や、観光統計データの整備及び分析等を行ってきた。観光委員会の協力のもと、26年11月、日本において「第13回観光統計グローバルフォーラム」をアジアで初めて開催し、地域レベルの観光統計やビッグデータの活用等の課題や展望を議論した。また、これに合わせて来日したシュテファン・カプファーラーOECD事務次長が西村国土交通副大臣を表敬訪問し、OECDと日本の協力関係の強化について意見交換した。 意見交換をする西村国土交通副大臣及びシュテファン・カプファーラーOECD事務次長  JTRCでは、道路の運用、維持管理、整備のための財源の最適化、異常気象や気候変動に対応したインフラ等、加盟国に共通した政策課題について調査研究を行っており、我が国も異常気象や気候変動へのインフラの適応等のワーキングチームに参画している。 (4)国際連合(UN) 1)国際海事機関(IMO)、国際労働機関(ILO)への対応  IMOは、船舶の安全・環境等に関する国際ルールを定めている国連の専門機関である。我が国は、同機関の事務局長を輩出するとともに、世界の主要海運・造船国として同機関の活動に積極的に参加している。平成26年度には、船舶からの温室効果ガス排出削減対策についての議論、船舶バラスト水規制管理条約発効に向けた議論、新規航路として注目されている北極海等の極海を航行する船舶や近年開発が進んでいる低環境負荷で経済性に優れたガス燃料船に関する国際ルールの策定に積極的に貢献した。  また、ILOで採択された「2006年の海上の労働に関する条約」が同年8月に我が国において発行したため、関係者への説明会を開催するなど実効性の確保に努めた。 2)国際民間航空機関(ICAO)への対応  ICAOは、国際民間航空の安全かつ秩序ある発達及び国際航空運送業務の健全かつ経済的な運営に向け、一定のルール等を定めている国連のもとに位置づけられている国際機関である。我が国は加盟国中第2位の分担金を負担し、また、第1カテゴリー(航空輸送において最も重要な国)の理事国として、ICAOの諸活動に積極的に参加し、国際民間航空の発展に寄与している。  我が国は、平成26年3月に設置された国際航空分野の温室効果ガス排出削減制度の構築に係る勧告案策定に向け議論しているタスクフォースにおいて共同議長を務めるなど、積極的に貢献している。 3)国連人間居住計画(UN-HABITAT)への対応  UN-HABITATは、人間居住問題を専門に扱う国連の基金・計画の一つである。我が国は、設立以来の理事国としてUN-HABITATの諸活動に積極的に参加し、我が国の国土・地域・居住環境改善分野での経験、知見を活かした協力を通じ、世界、特にアジアでの人口爆発、急激な都市化に伴う人間居住問題の改善に貢献している。  平成28年10月には、20年毎に開催されてきた人間居住の国際的な取組みについて議論し、国際アジェンダの取りまとめを目指す国連会議である「HABITATIII」がエクアドルにおいて開催される予定であり、我が国は26年4月に国内委員会(外務省・国土交通省共同議長)を設置し、我が国の対応を取りまとめた国別報告書(中間報告)を作成し、国連ハビタット事務所に提出する等の対応を進めてきている。 4)国連水と衛生に関する諮問委員会(UNSGAB)等への対応  UNSGABは、国連事務総長に対する水問題への政策的・技術的助言を行う諮問機関である。平成26年10月に東京で開催された第23回会合では、水循環・水と災害特別セッションが行われ、健全な水循環を確保するための国際的協力や国際社会での水と災害の継続的な議論の必要性を国土交通大臣が強調するなど、国連における水問題解決に向けた議論に貢献した。また、水関連災害に対する各国の取組み強化を目指す水と災害ハイレベル・パネルについて、第3回会合(26年5月)及び第4回会合(26年10月)に参加し、気候変動への適応策や東日本大震災の教訓等の情報発信を行った。 5)国連防災世界会議(WCDRR)への対応等  WCDRRは、国際的な防災戦略について議論する国連主催の会議であり、これまで第1回(平成6年、横浜)、第2回(17年、神戸)と、日本で開催された。27年3月に仙台市において開催された第3回会議では、第2回会議で策定された国際的な防災の取組指針である「兵庫行動枠組」の後継枠組である「仙台防災枠組2015-2030」及び政治宣言である仙台宣言が採択された。  本体会議では、太田国土交通大臣が閣僚級円卓会合「災害からのより良い復興(Build Back Better)」に出席し、阪神淡路大震災や東日本大震災、水害等の教訓と、それを踏まえた防災・減災・復興の取組み等について発言し、「最悪の事態も想定して、ハード・ソフト一体となった防災・減災対策を行うこと」、「過去の教訓を活かし、より安全な地域づくりを進めるための予防的な投資を行うこと」の重要性を訴えた。会議最終日に採択された「仙台防災枠組」には、「災害リスクの理解」、「災害リスク管理のためのガバナンス強化」、「災害リスク削減への投資による強い社会づくり」、「効果的な応急対応のための事前準備の強化、復旧・復興におけるビルド・バック・ベター」の4つが、今後、世界が優先的に取り組むべき事項として位置づけられた。  国土交通省においても、今後、この「仙台防災枠組」を踏まえ、必要な施策に取り組んでいく予定である。