第2節 観光立国の実現に向けた取組み

■7 明日の日本を支える観光ビジョン

 訪日外国人旅行者数2000万人の目標達成が視野に入ってきたことから、次の時代の新たな目標の設定と、そのために必要な対応の検討を行うため、安倍総理を議長とする「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」を平成27年11月9日に開催し、28年3月30日に「明日の日本を支える観光ビジョン」(観光ビジョン)を取りまとめた。
 観光ビジョンにおいては、訪日外国人旅行者数、訪日外国人旅行消費額、地方部での外国人延べ宿泊者数、外国人リピーター数及び日本人国内旅行消費額について新たな目標を定めるとともに(訪日外国人旅行者数2020年4,000万人・2030年6,000万人、訪日外国人旅行消費額2020年8兆円・2030年15兆円など)、「観光は真に我が国の成長戦略と地方創生の大きな柱である」との認識の下、観光先進国をめざし、「3つの視点」に沿って35項目の施策を打ち出し、そのうち柱となる施策を「10の改革」として取りまとめた。

(1)視点1「観光資源の魅力を極め、地方創生の礎に」
 我が国の豊富で多様な観光資源を誇りを持って磨き上げ、その価値を日本人にも外国人にも分かりやすく伝えていくため、1)迎賓館などをはじめとした魅力ある公的施設を広く国民、そして世界へと大胆に開放し、観光の呼び水とすること、2)我が国の文化財について、保存優先から観光客目線での理解促進、そして活用へと大きく舵を切ること、3)豊かな自然が凝縮された国立公園を、世界水準の「ナショナルパーク」としてブランド化すること、4)主な観光地で「景観計画」をつくり、美しい街並みへと徹底改善させること等に取り組むこととした。

(2)視点2「観光産業を革新し、国際競争力を高め、我が国の基幹産業に」
 観光の力で、地域の雇用を生み出し、人を育て、国際競争力のある生産性の高い観光産業へと変革していくため、5)宿泊業や通訳案内士等に関連する60年以上経過した古い規制を見直し、生産性を大切にする観光産業へと変貌させる、6)観光の質の向上を目指して欧米豪や富裕層等を念頭に新しい市場を開拓し、長期滞在と消費拡大を同時に実現する、7)疲弊した温泉街や地方都市を、DMOの形成や人材育成等を通じた未来発想の経営で力強く再生・活性化させること等に取り組むこととした。

(3)視点3「すべての旅行者が、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境に」
 CIQや宿泊施設、通信・交通・決済など、受入環境整備を早急に進めるため、また、高齢者や障がい者等も含めた、すべての旅行者が「旅の喜び」を実感できるような社会を築いていくため、8)CIQ、通信、交通、決済、バリアフリーなどあらゆる場面でのソフトインフラを飛躍的に改善し、世界一快適な滞在を実現すること、9)高速交通ネットワークを活用した「地方創生回廊」を完備し、全国どこへでも快適な旅行を実現すること、10)「働きかた」と「休みかた」を改革し、躍動感あふれる社会を実現することに向け、取り組むこととした。


注 DMO Destination Management/Marketing Organization


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