一方、成田国際空港については、LCCターミナルの整備等により、27年3月に年間発着枠30万回化を実現した。今後とも、LCCを含む国際・国内の航空ネットワークの充実を図り、アジアのハブ空港としての地位を確立していく。
また、75万回化達成以降においても、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の円滑な開催、さらにはその先を見据え、首都圏の国際競争力の強化、増加する訪日外国人旅行者の受け入れ、地方創生の観点から、首都圏空港の機能強化に向けて、32年までに羽田・成田両空港の空港処理能力を拡大することに取り組んでいる。
具体的には、羽田空港における飛行経路の見直し等による機能強化方策の具体化に向けて、同年8月に関係自治体や航空会社等の関係者が参画した協議会を設置し、協議を進めているところである。
特に、羽田空港については、住民の幅広い理解を得るため、説明会の開催等を行った。今後は、頂いたご意見等も踏まえて、28年夏までに環境影響等に配慮した方策を策定する予定である。
また、32年以降については、成田空港における抜本的な容量拡大などの機能強化方策の具体化に向けて、関係自治体と検討を行っている。
また、若手操縦士の供給拡大を図るため、27年12月に航空に関する仕事の魅力を伝える共通ウェブサイト「skyworks」(
http://www.skyworks.info)を開設するとともに、航空会社における効率的な操縦士養成、私立大学等の民間養成機関の供給能力拡充、航空大学校の更なる活用等の取組みを促進している。
さらに、公共性の高いドクターヘリや消防・防災ヘリ等のヘリコプター操縦士の需要が増大する中で、ヘリコプター操縦士の養成・確保が重要な課題となっていることから、関係省庁による連絡会議を立ち上げ、ヘリコプター操縦士の養成・確保のあり方について検討を行い、27年7月に取りまとめを行った。この取りまとめを踏まえ、航空機操縦士養成連絡協議会の下に設置された「ヘリコプター部会」において、官民で連携してドクターヘリ等の操縦士に係る訓練プログラムの開発など具体的施策の検討が進められている。
(2)空港運営の充実・効率化
1)空港経営改革の推進
国管理空港等において、「民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する法律(民活空港運営法)」を活用し、地域の実情を踏まえつつ民間の能力の活用や航空系事業と非航空系事業の一体的経営等を通じた空港経営改革を推進し、空港を活用した内外の交流人口拡大等による地域活性化を図っていくこととしている。
国管理空港の第1号案件である仙台空港については、平成27年12月に公共施設等運営権者と実施契約を締結したところであり、28年7月の運営開始に向けて準備を進めている。
2)LCCの参入促進
平成24年3月に本邦初となるLCCが就航した。以降、28年3月時点で、ピーチ・アビエーションは国内14路線、国際10路線、ジェットスター・ジャパンは国内16路線、国際6路線、バニラ・エアは国内3路線、国際3路線、春秋航空日本は国内2路線、国際2路線へネットワークを展開し、28年中にはエアアジア・ジャパンの新規就航(エアアジアグループによる再参入)も予定されている。
LCC参入促進により、訪日旅行客の増大や国内観光の拡大等、新たな需要の創出が期待されている。政府の目標としては「2020年の航空旅客のうち、国内線LCC旅客の占める割合14%、国際線LCC旅客の占める割合17%」としている。LCC参入を促進させるため、我が国及び各空港では様々な施策を行ってきている。
国の施策としては、大きく以下の2点を実施・検討しているところである。1点目は、25年度において、地方路線維持やLCC支援による地域活性化実現のため、主に使用される機材(100t以下)に着目し実施した着陸料の引き下げを、27年度も引き続き実施している。2点目は、空港経営改革の推進である。日本の空港の多くは、国や自治体が管理しており、今後、滑走路等と空港ビルの運営を一体化するなどし、民間事業者による戦略的な料金体系や営業活動等を行うことによって、LCCを誘致することを期待している。
上記の施策に加え、各空港でもLCC受入の環境整備を行っており、大きく以下の2点を実施している。1点目は、LCC専用ターミナルの整備である。24年度には、成田国際空港においてLCCの暫定受入施設が供用開始されるとともに、関西国際空港において本邦初のLCC専用ターミナル(T2)が、那覇空港において既存施設を活用した暫定LCCターミナルが供用開始された。更に27年4月には成田国際空港では第3ターミナル(LCCターミナル)が供用開始された。また、関西国際空港では28年度中の供用開始を目指して新たなLCC専用ターミナルの整備が図られており、中部国際空港でも新ターミナルの整備が検討されている。2点目は、着陸料をはじめとする空港使用料の引き下げである。27年度も前年に引き続き、成田国際空港及び関西国際空港において、着陸料を含む空港使用料の引き下げ・見直しを実施している。
注1 航空会社の新規参入や増便、航空会社間の競争促進による運賃低下等のサービス水準の向上を図るため、国際航空輸送における企業数、路線及び便数に係る制約を二カ国間で相互に撤廃することをいい、近年、世界の多くの国がこれを進めている。
注2 当該27箇国・地域との間の旅客数は、我が国に発着する総旅客数の約94%を占めている。
注3 平成26年3月より、羽田空港昼間時間帯国際線発着枠を年間3万回(1日40便)から年間6万回(1日80便)に拡大。