■2 国際機関等への貢献と戦略的活用
(1)G7長野県・軽井沢交通大臣会合
平成28年、我が国はサミットの議長国となり、5月に開催される伊勢志摩サミットのほか、10の関係閣僚会合が全国各地で開催される。
国土交通省では、同年9月に長野県軽井沢町において、「G7長野県・軽井沢交通大臣会合」を開催する予定としている。本会合では、27年9月にドイツにおいて開催されたG7交通大臣会合における議論を踏まえ、「自動車及び道路に関する最新技術の開発・普及」及び「交通インフラ整備と老朽化への対応のための基本的戦略」について議論を行う予定である。
(2)アジア太平洋経済協力(APEC)
APECは、アジア太平洋地域の持続可能な成長と繁栄に向けて、貿易・投資の自由化、ビジネスの円滑化、経済・技術協力等の活動を行う経済協力の枠組みであり、国土交通省では、APECの交通・観光分野に係る大臣会合及び作業部会に積極的に取り組んでいる。
交通分野では、地域内のモノと人の流れを円滑化し貿易と投資を支えるべく交通大臣会合が開催されている。平成25年9月に東京で開催された第8回APEC交通大臣会合においては、「APEC域内の高質な交通を通じた連結性の強化」を基本テーマに議論が行われ、日本の提案により「大臣共同声明」に今後のAPEC地域における交通の発展の鍵となる3つの考え方、すなわち「連結性(コネクティビティ)の強化」、「民間資金を活用した交通インフラ整備」、「質の高い交通の展開」が盛り込まれた。27年10月にフィリピンで開催された第9回APEC交通大臣会合では、日本は第8回の議論の成果として、1)コネクティビティ・マップ、2)加盟国・地域の経験を持ち寄ったインフラの投資・資金調達・運営のベストプラクティスの共有、3)利便性・安全性・環境保護性に重点をおいた「質の高い交通(Quality Transport)」ビジョンの3つのイニシアチブについての取り組みを報告した。
(3)東南アジア諸国連合(ASEAN)
国土交通省は、平成15年に創設された日本とASEANの交通分野の協力枠組みである「日ASEAN交通連携」の下、様々な協力プロジェクトを実施している。これらのプロジェクトの進捗状況について確認するとともに、今後の方向性、新たなプロジェクトについて議論するため、「日ASEAN交通大臣会合」等の会合が毎年開催されている。
27年11月にマレーシアで開催された「第13回日ASEAN交通大臣会合」においては、「日ASEAN交通連携」の具体的実施計画である「日ASEAN交通連携ワークプラン 2015-2016」とともに、1)日ASEAN交通分野における新環境行動計画、2)国際物流網における道路技術共同研究プロジェクト、3)海の安全についての協力(VTS人材育成協力プロジェクト)、4)自動車基準・認証制度等包括的な交通安全・環境施策に関する日ASEAN新協力プログラムの4つの新規協力プロジェクトが承認された。また、これまでのプロジェクトの成果物として、1)交通安全・防災優良事例集、2)PPP優良事例集、3)ランドブリッジ実現のための調査報告、4)グリーン物流ビジョン及び行動計画の4つの文書が承認された。
なお、ASEANにおいては、平成27年11月開催の「第27回ASEAN首脳会議」において、ASEAN経済共同体(AEC)を含むASEAN共同体の同年末の設立が宣言されるとともに、新たな統合の目標年である2025年までの新たな行動計画が採択された。また、同年11月開催の「第21回ASEAN交通大臣会合」においても、2016年から2025年までの新たな交通分野の行動計画が承認された。
(4)経済協力開発機構(OECD)
国土交通省では、OECDの活動のうち、国際交通フォーラム(ITF)、造船部会、地域開発政策委員会(RDPC)、観光委員会並びにOECD及びITFが共同で設置している共同交通研究センター(JTRC)に参画している。
ITFは、57ヵ国の交通担当大臣を中心に、年1回、世界的に著名な有識者・経済人を交え、交通政策に関するハイレベルかつ自由な意見交換を行う国際枠組みであり、これまで、交通分野に関する気候変動問題、グローバリゼーション等に関して議論を行ってきた。平成27年5月の大臣会合では、「交通、貿易と観光」をテーマとして、貿易量や観光客数の増加による世界的な交通需要増への対応と、環境面などの社会経済的負荷への対応が両立可能な交通のあり方について、様々な角度から議論が行われた。
OECD造船部会では、造船市場の公正な競争条件を確保するため、各国の造船政策レビューの実施や、政策支援一覧表の作成などを通じて、政策の透明性向上に努めている。昨今では、国際造船市場において過当競争を引き起こす一因となっている供給過剰問題について、各国で講じられている政策の情報交換を通じ、その解消に向けた議論を行っている。
RDPCでは、国土・地域政策等に関する各加盟国の政策レビュー、グリーン成長戦略における都市政策などの検討や、高齢社会における持続可能な都市政策、レジリエント・シティなどの調査等に積極的に取り組んでいる。また、26年度、27年度を通じて、二回目の我が国の国土・地域政策に関する国別レビューが実施された。同レビューは、人口減少・高齢化に直面する日本が、長期的、総合的な国土計画によってこの危機をチャンスに変えていこうとしている点を高く評価し、27年11月のRDPCにおいて採択された。
JTRCでは、加盟国に共通した政策課題について調査研究を行っており、我が国も道路交通安全に対するシステムアプローチの有効性と実効性等のワーキンググループに参画している。また、2016年以降のプログラムとして、我が国が提案した道路の賢い使い方等のプログラムが採択され平成28年3月より開始された。
(5)国際連合(UN)
1)国際海事機関(IMO)、国際労働機関(ILO)
IMOは、船舶の安全・環境等に関する国際ルールを定めている国連の専門機関である。我が国は、同機関の事務局長を輩出する(27年末で退任)とともに、世界の主要海運・造船国として同機関の活動に積極的に参加している。平成27年度には、船舶からの温室効果ガス排出削減対策及び船舶バラスト水規制管理条約発効に向けた議論、新規航路として注目されている北極海等の極海を航行する船舶に対する基準の策定及び乗船する船員の訓練要件の策定、低環境負荷で経済性に優れた天然ガスを燃料とする船舶の安全基準の策定等に積極的に貢献した。
また、ILOで採択され、平成26年に我が国において発効した「2006年の海上の労働に関する条約」では、船舶における適切な労働条件及び生活条件等を規定しているところ、同条約の適切な遵守に努めた。
2)国際民間航空機関(ICAO)
ICAOは、国際民間航空の安全かつ秩序ある発達及び国際航空運送業務の健全かつ経済的な運営に向け、一定のルール等を定めている国連の専門機関の1つである。我が国は加盟国中第2位の分担金を負担し、また、第1カテゴリー(航空輸送において最も重要な国)の理事国として、ICAOの諸活動に積極的に参加し、国際民間航空の発展に寄与している。
我が国は、国際航空分野における温室効果ガス排出削減制度の構築についての勧告案策定を行うタスクフォースにおいて、平成26年3月から共同議長を務めるなど、積極的な貢献を行っている。
3)国連人間居住計画(UN-Habitat)
UN-Habitatは、人間居住問題を専門に扱う国連の基金・計画の一つである。我が国は、設立以来の理事国としてUN-Habitatの諸活動に積極的に参加し、我が国の国土・地域・居住環境改善分野での経験、知見を活かした協力を通じ、世界、特にアジアでの人口爆発、急激な都市化に伴う人間居住問題の改善に貢献している。
平成28年10月には、20年ごとに開催されてきた人間居住の国際的な取組みについて議論し、国際アジェンダの取りまとめを目指す国連会議「HABITATIII」がエクアドルで開催予定であり、我が国は26年4月に国内委員会(外務省・国土交通省共同議長)を設置し、我が国の対応を取りまとめた国別報告書を提出したほか、準備会合等において国土・地域政策の知見・経験を積極的に情報発信している。
4)国連水と災害に関する特別会合等
国連水と災害に関する特別会合は、国連機関の高官、各国閣僚が参加し、各国の水関連災害対策を前進させるための国際社会の取組みを議論するハイレベル会合である。平成27年11月に米国(ニューヨーク)で開催された第2回会合のハイレベル・パネルディベートにおいて、石井国土交通大臣が、我が国がこれまで経験してきた東日本大震災、数多くの水害などの経験と、そこから得られた教訓に基づく我が国の水関連災害対策について紹介した。また、世界の水関連災害対策を強化するため、世界各国が水関連災害の経験と知見を共有し相互に学び合う機会を定期的に確保することの重要性を訴えた。また、水関連災害に対する各国の取組み強化を目指す水と災害ハイレベル・パネルについて、第5回会合(27年4月)及び第6回会合(27年11月)に参加し、気候変動への適応策等の情報発信を行った。
(6)世界銀行(WB)
国土交通省は、各国インフラ関係者に対する「質の高いインフラ投資」の効果的な情報発信のため、平成28年1月に「『質の高いインフラ投資』を通じた持続可能な開発」というテーマで国際会議を世界銀行と共催した。また、「都市開発とグリーン成長に関する日本・OECD政策フォーラム」の議長総括(26年10月)を受けて、日本の都市開発に関する知見をアジア各国と共有するため、27年6月及び10月に「公共交通指向型開発(TOD)オンラインセミナー」を共催した。