第1節 我が国経済とこれを取り巻く環境 ■1 我が国の人口の動向及び将来推計 (1)人口及び生産年齢人口の推移  少子高齢化の進行により、我が国の総人口は2008年をピークに減少に転じており、生産年齢人口も1995年をピークに減少に転じている。2015年の国勢調査における人口速報集計では、我が国の総人口は1億2,711万人であり、5年に1回の国勢調査ベースでは調査開始以来、初めての減少となった。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(出生中位(死亡中位)推計)によると、総人口は2030年には1億1,662万人、2060年には8,674万人(2010年人口の32.3%減)にまで減少すると見込まれており、生産年齢人口は2030年には6,773万人、2060年には4,418万人(同45.9%減)にまで減少すると見込まれている(図表1-1-1)。 図表1-1-1 我が国の人口構造の変化 (2)深刻な高齢化  また、高齢化率注1は、2015年に26.7%と過去最高となっている注2。高齢化率の推移について諸外国と比較してみると、我が国の高齢化率が最高水準であるのみならず、群を抜いて高いことが分かる(図表1-1-2)。さらに、2025年には、我が国全体で高齢化率が3割を超え、2050年には4割弱にまで達するなど、世界で類を見ない超高齢社会を迎えると推計されている。 図表1-1-2 我が国及び諸外国における高齢化率の推移 (3)地域によって異なる人口動向  人口の地域分布の将来推計では、2010年から2050年の間に、居住地域の約6割以上で人口が半分以下に減少し、約2割は人が住まなくなると予測される(図表1-1-3)。また、地域別の人口の増減の見通しを更に細かい地域単位で見てみると、市区町村の人口規模別では、人口規模が小さい自治体ほど人口減少率が高くなり、2010年から2050年で見た場合、人口1万人未満の市区町村では約半分に減少すると見込まれている。人口が増加するのは、東京圏、名古屋圏等わずかな地域であり、過疎化が全国で一層深刻化すると予想されている。過疎地域においては既に、若年者のみならず高齢者の人口も減少する局面へと入りつつある。 図表1-1-3 人口分布予測 (4)人口減少社会と生産性の向上による我が国の経済成長  人口減少が我が国の経済全体の縮小につながることが指摘される中、経済財政諮問会議専門調査会「選択する未来」委員会の報告によれば、現役世代の減少ペースが強まる2030年代、2040年代には経済に対する下押し圧力がかかることが予想され、そのような人口減少下で経済が停滞した場合、2040年代にはマイナス成長に陥り、そこから脱することが難しくなるおそれもあるとされている注3。  一方で、人口減少下でも、生産性向上シナリオと生産性停滞シナリオを比較すると、実質GDP成長率で1%強の差が生じる(図表1-1-4)。生産性向上が労働力減少分のマイナスを補うことができれば、今後の人口減少下においても、経済成長を達成することが可能であると考えられる。 図表1-1-4 将来の人口と実質GDP成長率の推計 注1 総人口に占める高齢人口(65歳以上)の割合。 注2 総務省「人口推計」(2015年10月1日現在) 注3 「選択する未来委員会」の報告によると、人口については、1億人程度で安定するケースと現状のまま減少が続くケースの2つを、生産性については、改善により向上するケースと停滞するケースの2つを、それぞれ想定している。