■3 各分野における多国間・二国間国際交渉・連携の取組み (1)国土政策分野  韓国との間で定期的に局長級の二国間会合を開催し、国土政策、地域政策及び土地政策等の両国間の類似課題に関する情報交換等を実施しており、平成27年8月には第20回の会合(日本開催)を開催した。フランスとの間では、国土政策、地域振興政策について、仏国土平等委員会事務局(CGET、旧DATAR、国土整備・地域競争力庁)と意見交換を実施している。また、クウェートとの間で25年に締結された新しい国家開発計画策定に係る政策対話促進に関する覚書により、早期に技術協力協定を締結するよう準備を進めている。 (2)水分野  平成27年4月に韓国で開催された第7回世界水フォーラムの閣僚円卓会議「統合水資源管理」において国土交通大臣が議長を務めるなど、国際会議等での水問題に関する議論に積極的に参画し、水と衛生、防災に関する取組みの強化についてメッセージを発信した。  また、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)やアジア河川流域機関ネットワーク(NARBO)と連携し、統合水資源管理(IWRM)の普及・促進に貢献している。  さらに、米国、中国及び韓国とは、河川・砂防・水資源管理等に係る二国間会合を開催し、情報交換、技術協力等を推進している。  このほか、地方公共団体、日本下水道事業団、国土交通省等による連合体である、「水・環境ソリューションハブ」が、セミナーや研修等を通じて、途上国に下水道事業のノウハウを提供している。 (3)防災分野  世界の水災害被害の軽減に向けて、災害予防が持続可能な開発の鍵であるという共通認識を形成するため、我が国の経験・技術を発信するとともに、水災害予防の強化に関する国際連帯の形成に努めている。また、国立研究開発法人土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)では、総合洪水解析システム(IFAS)や降雨流出氾濫(RRI)モデル等の開発及びリスクマネジメントの研究、これらの成果を活用した人材育成のほか、UNESCOやアジア開発銀行のプロジェクトを通して、水災害に脆弱な国・地域を対象にした技術協力・国際支援を実施している。  この他、日EU双方の防災対策の充実を目的として、平成25年3月にEU防災総局と国土交通省の間で交換した書簡に基づき、27年12月には実務者級会合を開催した。また、同年11月には第4回日ブラジル科学技術協力合同委員会(東京)が開催され、我が国が有する優れた砂防技術について紹介し、情報・意見交換を行った。さらに、国土交通省から派遣した専門家が、災害状況の把握や今後の対策等について技術的助言を実施している。 (4)道路分野  世界道路協会(WRA)では、各技術委員会等に積極的に参画し、今後の方針策定をリードしている。また、平成27年11月には、韓国・ソウルで開催された第25回世界道路会議において、新たな日本の道路政策としてETC2.0等を活用した「道路を賢く使う取組み」を紹介した。 (5)住宅・建築分野  国際建築基準協力委員会(IRCC)等の国際会議へ出席し、建築基準等に係る最新動向について関係国間での情報交換を行った。  二国間としては、中国、ドイツ、ミャンマー、インドネシアとの会合を開催し、住宅政策、省エネ建築、高齢者向け住宅等に関する情報交換等を行った。  ミャンマーに対しては、JICA専門家の派遣等を通じて幅広く技術協力を行った。さらに、カンボジアにおいて、相手国大臣からの要請に応じ、公営住宅セミナー等を開催した。 (6)自動車分野  平成27年11月、第13回日ASEAN交通大臣会合にて既存の協力プログラムを拡大する「自動車基準・認証制度をはじめとした包括的な交通安全・環境施策に関するASEAN新協力プログラム」が承認された。これに基づき、同年12月にアジア地域官民共同フォーラムを開催し、アジア地域における基準調和・相互認証活動について情報交換を行った。また、同年12月、中国と第6回日中自動車交通交流促進会議を実施し、道路運送事業者の安全管理、事業用自動車の車検制度等をテーマに意見交換を行った。 (7)海事分野  海事分野では、IMOにおける世界的な議題への対応の他、局長級会談等を通じた二国間の議題への対応を行っている。平成27年度には、インド、米国、EU及び韓国と局長級会談を開催し、シップリサイクル、温室効果ガス排出削減対策、バラスト水管理及びサイバーセキュリティ等について情報共有や意見交換を実施した。この他、マラッカ・シンガポール海峡における共同水路測量調査及び海図整備プロジェクトが27年10月に開始されたほか、26年の日ASEAN交通大臣会合で承認された「日ASEANクルーズ振興戦略」に基づき、クルーズのモデルルート調査を行った。 (8)港湾分野  北東アジア港湾局長会議やAPEC交通WG、国際航路協会(PIANC)等の国際会議の場を通じて、最近の港湾行政に関する情報交換や、クルーズの促進、我が国の技術基準の海外展開の推進等を実施している。 (9)航空分野  平成27年4月、フランスとの「民間航空分野における技術協力に関する覚書」に基づき、第1回日仏協力作業部会を開催し、今後も定期的な会合の開催など、協力を進めていくこととした。  また、同年10月、第52回アジア太平洋航空局長会議において、航空交通容量の拡大、航空分野における環境対策、航空専門家の教育訓練をはじめ、航空全般に関するアジア太平洋地域各国の取組みについて意見交換を行った。 (10)物流分野  平成26年8月に開催された第5回日中韓物流大臣会合における合意に基づき、シャーシの相互通行の拡大、北東アジア物流情報サービスネットワーク(NEAL-NET)の日中韓における対象港湾の拡大やASEAN諸国等への拡大に向けた検討等、日中韓3国間の物流分野における協力を推進している。  また、日ASEAN交通連携の枠組みの下、二国間政策対話において物流環境の改善に係る協議等を行っており、27年10月にはラオス及びカンボジアと、28年2月にはマレーシアと、物流政策対話を開催した。また、28年3月には、ASEANにおける優秀な現地人材の確保のため、学生等を対象とした人材育成事業をベトナムにおいて実施した。 (11)地理空間情報分野  地球規模の地理空間情報管理に関する国連専門家委員会(UNCE-GGIM)に職員を派遣し、地球規模の測地基準座標系(GGRF)の構築に向けた国連総会での決議に貢献するとともに、同アジア太平洋地域委員会(UN-GGIM-AP)に職員を会長として派遣し、当該地域の地理空間情報の整備・活用に寄与している。 (12)気象・地震津波分野  世界気象機関(WMO)の枠組みの下、気象観測データや技術情報の交換に加え、我が国の技術を活かした台風情報等を提供している。また、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)政府間海洋学委員会(IOC)の枠組みの下、北西太平洋における津波情報を各国に提供している。 (13)海上保安分野  北太平洋海上保安フォーラム(日本、カナダ、中国、韓国、ロシア及び米国6カ国)及びアジア海上保安機関長官級会合(アジア19カ国・1地域)並びに二国間長官級会合、連携訓練等を通じて、捜索救助、海上セキュリティ対策等の各分野で海上保安機関間の連携・協力を積極的に推進している。  また、我が国は国際水路機関(IHO)の各委員会等における海図作製に関する基準の策定、コスパス・サーサット機構における北西太平洋地域の取りまとめ、国際航路標識協会(IALA)の各委員会等におけるAISの開発に係る検討、アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)に基づく情報共有センターへ当庁職員を派遣するなど、国際機関へ積極的に参画している。このほか、開発途上国における海上保安分野の能力向上支援の取組み等を通じて、国際貢献を果たしている。 (14)国際運輸  平成28年1月、中国北京において、運輸分野における共通課題について日中間で討議する次官級政策対話「第8回日中運輸ハイレベル協議」を4年ぶりに開催した。運輸分野における安全確保の取組み、大規模災害における対応、地域における交通・物流サービスの維持・確保に関して、今後も両国間で情報交換等による協力を進展させることとした。また、海事分野においては、国際海事機関(IMO)における活動での協力の重要性を確認するとともに、海事局長級会合を開催していくことで一致した。  韓国との間では、平成11年の日韓閣僚懇談会における合意に基づき、運輸分野におけるハイレベルの政策調整を行うことを目的とした次官クラスの会合を開催している。28年3月、愛媛県松山市において「第11回日韓運輸ハイレベル協議」を開催し、自動運転の実現に向けた取組みや課題、インターネット通販市場の拡大と物流、公共交通の利便性向上と地域活性化等について、意見交換を行った。