■2 国土交通省における発災直後の対応  政府は、地震発生後、非常災害対策本部を設置し、関係機関の行う災害応急対策の総合調整を実施している。  国土交通省においても、2016年4月14日21時26分の地震発生と同時に非常体制をとり、同日22時10分に非常災害対策本部(国土交通省)を国土交通省本省に設置した後、同日23時00分には第1回非常災害対策本部会議を開催した。以後、同年5月19日時点で計20回の非常災害対策本部会議を開催している。  国土交通省は、地震発生当初から、被災状況の確認、TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)等の派遣、土砂災害警戒情報の発表基準の引き下げ等による警戒避難体制の強化、生活物資の提供、応急的な住まいの確保等、災害復旧対応や生活再建支援を行っている。具体的には以下の通りである。 (1)所管施設の被害状況調査  道路、河川、ダム、港湾、空港、下水道、官庁施設等の被害状況の調査を迅速に実施した。また、発災後直ちに巡視船艇及び航空機を発動し、沿岸部等の被害状況調査を行うとともに、航行警報等により付近船舶へ情報提供を実施した。 (2)TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)等による被災地方公共団体支援  国土交通省では、同年4月14日夜のマグニチュード6.5の地震発生直後の4月14日深夜より、被災した地方公共団体にリエゾン(情報連絡員)を派遣するとともに、15日には九州のほか、近畿、中国、四国地方整備局、国土地理院のTEC-FORCEが九州へ入り活動を開始した。北海道から沖縄までの全国の地方整備局等からリエゾン最大61人、のべ1,617人・日、TEC-FORCE等最大440人、のべ8,183人・日(同年5月16日時点の速報値)を17市町村に派遣し、被災地方公共団体の支援を実施している。 (被害状況調査の代行)  具体的には、リエゾンが収集した被災状況、支援ニーズに関する情報をもとに、地方公共団体に代わり被害状況調査を迅速に実施し、空中写真による被害判読等とあわせ、その成果は、激甚災害指定に係る所要期間の短縮に貢献した。 ( 土砂災害危険箇所の緊急点検)  余震や降雨に伴う二次災害の発生を防ぐため、緊急度の高い1,155箇所の土砂災害危険箇所を9日間で点検し、熊本県知事及び13の関係市町村長等へ報告の上、今後の対応について助言を行った。 ( 土砂災害対策アドバイザーによる支援)  地震により多数の土砂災害が発生しており、各地方公共団体から土砂災害に関する助言を求められた。このため、土砂災害対策アドバイザー班を設置し、土砂災害に精通した国土交通省の技術者が各地方公共団体や関係機関の要請に応じて、現地で助言することにより、捜索活動の安全確保を支援した。 ( 道路啓開による輸送路の確保)  道路陥没や土砂崩落等によって通行不能となった県道や市町村道の応急復旧を行い、熊本市内から南阿蘇方面への輸送路の啓開など、支援物資等の輸送路を確保した。 図表2 地方公共団体所管施設の被害状況調査の代行 図表3 土砂災害危険箇所の緊急点検 図表4 土砂災害対策アドバイザーによる支援 図表5 道路啓開による輸送路の確保 図表6 大規模路面陥没の復旧(国道443号の被災状況) (災害対策用機械の派遣)  九州をはじめとした関東・北陸・中部・近畿・中国・四国の各地方整備局から、衛星通信車をはじめ照明車、散水車等の災害対策用機械を派遣し、災害復旧作業を支援した。また、電気、通信等の途絶や庁舎が被災した市町村に対し、照明車、衛星通信車、対策本部車等を提供し、対策本部活動の継続に貢献するなど支援ニーズにきめ細かく対応している。  派遣実績は最大83台、のべ2,117台・日(同年5月16日時点)に及んでいる。 図表7 災害対策用機械の派遣 (先端的な災害対策用機械の活用)  二次災害の恐れがある危険箇所や地形的に立ち入りが困難な箇所において、マルチコプター(ドローン)等を使用し、安全かつ迅速に土砂崩壊箇所の被災状況や断層の状況の調査を行うとともに、地方整備局が保有する無人バックホウ(油圧ショベル)による土砂撤去を実施するなど、先端的な災害対策用機器を駆使した活動を展開している。 図表8 先端的な災害対策用機械の活用 (3)ヘリコプター・航空機・人工衛星・船舶の活用  防災ヘリコプター3機(「はるかぜ号」(九州地方整備局)、「愛らんど号」(中国・四国地方整備局)、「ほくりく号」(北陸地方整備局))により、土砂災害等の被災状況の全容把握のため、上空からの調査を実施した。  また、測量用航空機「くにかぜIII」(国土地理院)を用いた空中写真の撮影や航空レーザー測量による被災状況把握、地球観測衛星「だいち2号」による地殻変動把握等を実施した。  さらに、巡視船艇及び航空機(海上保安庁)を発動し、沿岸部等の被害状況調査を行うとともに、ヘリコプター画像伝送システムを利用し、リアルタイム情報の共有を行った。また、航行警報等により付近船舶へ情報提供を実施した。 図表9 測量用航空機による緊急撮影 (4)緊急医療支援  同年4月16日から22日にかけて、熊本県等の要請に基づき、海上保安庁のヘリコプターにより、負傷者2名及び医師11名を含む合計19名を搬送した。 図表10 海上保安庁ヘリコプターによる負傷者搬送