第9節 効率的・重点的な施策展開

■2 公共工事の品質確保と担い手の確保・育成

 現在及び将来にわたる公共工事の品質確保とその担い手の中長期的な確保・育成を目的として、平成26年6月に「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(品確法)、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(入契法)及び「建設業法」の改正を受け(いわゆる「担い手3法の改正」)、同年9月には、「品確法」第9条に基づく「基本方針」及び入契法第17条に基づく「適正化指針」の改正について閣議決定された。さらに、27年1月に「品確法」第7条に規定された「発注者の責務」を果たすため、発注関係事務を適切かつ効率的に運用することができるよう同法第22条に基づき「発注関係事務の運用に関する指針(運用指針)」(公共工事の品質確保の促進に関する関係省庁連絡会議申合せ)が策定された。
 国土交通省では、担い手3法の本格運用を受けて、市町村をはじめとするすべての公共工事の発注者が本指針等を踏まえた具体的な取組みを進めるよう求めている。
 
図表II-2-9-2 「発注関係事務の運用に関する指針(運用指針)」の主なポイント
図表II-2-9-2 「発注関係事務の運用に関する指針(運用指針)」の主なポイント

(1)発注者責務を果たすための取組み
 国土交通省では、「適正化指針」や「運用指針」を踏まえた発注関係事務の適切な運用に向けて様々な取組みを行っている。また、各発注者においてこれらの指針を踏まえた発注関係事務が適切に実施されているか適正化法に基づき「入札・契約手続きに関する実態調査」を行うとともに、その結果を取りまとめ公表している。

1)予定価格の適切な設定
 適正な積算に基づく設計書金額の一部を控除して予定価格とするいわゆる「歩切り」の根絶に向けた取組みとして、総務省とも連携し、あらゆる機会を通じて早期に見直すよう求めてきた結果、平成27年1月時点で慣例や自治体財政の健全化等のため歩切りを行っていたすべての地方公共団体(459団体)が、28年4月時点で、歩切りを廃止することを決定した。また、公共建築工事積算基準とその運用に係る各種取組みをとりまとめた「営繕積算方式運用マニュアル」について、27年1月に作成した普及版に加え、29年1月には熊本被災地版を作成するなど積算に係る最新の各種基準・マニュアル類の整備・周知にも努めている。

2)ダンピング対策
 ダンピング受注は建設業の健全な発達を阻害することから、国土交通省ではこれらの制度未導入団体に対して、早急に導入に向けた検討を行うようあらゆる機会を通じて求めてきた。

3)適切な設計変更
 設計図書に施工条件を適切に明示するとともに、必要があると認められたときは、適切に設計図書を変更することとし、設計変更業務の円滑化を図るため、「設計変更ガイドライン」を改定した。

4)施工時期等の平準化
 計画的な発注の推進、適切な工期の設定、余裕期間制度の活用等を着実に進めるとともに、地方公共団体に対しても、平成28年4月には地方公共団体が取り組む先進的な事例を収集した「平準化の先進事例「さしすせそ」」を公表するなど、さらなる施工時期等の平準化の促進に努めている。

5)多様な入札契約方式の活用
 「品確法」では、多様な入札契約方式の選択・活用、段階的選抜方式、技術提案・交渉方式、地域における社会資本の維持管理に資する方式(複数年契約、包括発注、共同受注による方式)等が新たに規定された。国土交通省では、事業の特性等に応じた入札契約方式を各発注者が選定できるよう、平成27年5月に、「公共工事の入札契約方式の適用に関するガイドライン」を策定した。

(2)発注者間の連携・支援
 国土交通省では、地域発注者協議会や地方公共工事契約業務連絡協議会等を通じて、発注者間の一層の連携に努め、発注者共通の課題への対応や各種施策を推進している。具体的には、都道府県単位の部会を設置するなど地域発注者協議会の体制の見直し、各地方整備局における各種相談窓口の設置、各地方整備局等の長を本部長とする公共工事発注者支援本部の立ち上げ等を行った。また、公共建築工事の分野では、品確法に規定された「発注者の責務」も踏まえ、平成29年1月に社会資本整備審議会より答申された「官公庁施設整備における発注者のあり方について」の地方公共団体等への普及に努めている。


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