第2節 観光先進国の実現に向けた取組み

■3 すべての旅行者が、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境に

(1)最先端技術を活用した革新的な出入国審査等の実現
 関係省庁と連携のもと、入国審査の待ち時間を活用して個人識別情報を事前取得するバイオカートの関西国際空港等3空港への導入が実現したほか、日本人用顔認証ゲートのシステム開発が始まった。また、成田国際空港・関西国際空港において入国諸手続時間の計測・公表の実証実験を行った。
 さらに、出発時の航空保安検査に係る旅客の負担を抑え、検査の円滑化を図りつつ厳格化を実現するため、欧米等で導入が進んでいる先進的なボディスキャナーを羽田、成田、関西、中部、新千歳、福岡など8空港に導入した。

(2)民間のまちづくり活動等による「観光・まち一体再生」の推進
 拠点駅周辺の案内サイン、バリアフリー交通施設、歩行空間等の整備を支援し、わかりやすく使いやすい歩行空間のネットワークの構築を推進した。加えて、都市再生特別措置法の改正により、都市公園における観光案内所等の占用を可能とした。
 また、日本の都市の魅力を発信し、インバウンド需要の取り込み、都市開発の海外展開につなげるため、シティ・フューチャー・ギャラリー(仮称)構想の検討を進めた。

(3)訪日外国人旅行者受入環境整備
 公共交通機関、観光案内所等における多言語対応、無料公衆無線LAN環境の整備等に対する支援を行った。
 また、約2,000の旅館・ホテル等宿泊施設におけるインバウンド対応経費の支援を行うとともに、既存の宿泊施設の有効活用を図るため、駅や空港などの観光案内所等、情報拠点における空室情報の発信機能を強化するための事業の支援を行った。
 地方の外国人旅行者向け消費税免税店の拡大と消費の活性化を図るため、一般物品の免税販売の対象となる購入下限額の引下げ等、外国人旅行者向け消費税免税制度の更なる拡充を実現した。
 
図表II-3-2-2 消費税免税店数の推移
図表II-3-2-2 消費税免税店数の推移
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 また、「道の駅」について、消費税免税店や観光案内所の設置、無料公衆無線LAN(「道の駅」SPOT)等のインバウンド対応を促進し、地域の情報発進の拠点とする取組みを推進した。

(4)急患等にも十分対応できる外国人患者受入体制の充実
 外国人旅行者を受入可能な医療機関について、厚生労働省との連携のもと、都道府県の協力を得て、平成28年度に約900の医療機関をリスト化し、情報発信を行った。また、外国人旅行者が医療費の不安なく治療が受けられるように、訪日後でも入れる旅行保険への加入を促進した。

(5)「地方創生回廊」の完備
 これまで外国人旅行者が出発前に海外の限られた旅行代理店でしか購入できなかった「ジャパン・レールパス」の日本到着後の購入を可能にするため、各旅客鉄道会社において実証実験を平成29年3月から開始した。
 また、地方空港の着陸料軽減などにより、ゲートウェイから地方、地方と地方を結ぶ低廉かつ持続的な航空網の構築を図った。
 さらに、多様な交通モードが選択可能で利用しやすい環境を創出し、人とモノの流れや地域の活性化を促進するため、バスを中心とした交通モード間の接続(モーダルコネクト)の強化を推進し、28年4月には、新宿駅南口に日本最大級のバスターミナルであるバスタ新宿が開業し、新宿駅西口周辺に19箇所点在していた高速バス停が集約された。
 高速道路に路線番号を付すことにより、わかりやすい道案内の実現をするため、28年4月に「高速道路ナンバリング検討委員会」を開催し、同年10月に提言を取りまとめ、29年2月には、同提言を踏まえ、「高速道路番号」の標識の新設等を行う関係省令を改正し、圏央道開通区間(境古河IC〜つくば中央IC)において、我が国で初めて高速道路ナンバリングに係る標識を設置した。加えて、利用者の利便性向上のため、同年2月に官民の各主体が協調し、高速道路ナンバリングの表示方法(道路標識における表示方法を除く。)、読み方の統一を図るガイドラインを定めるとともに、訪日外国人への適切な案内誘導のため、全国の主要観光地49拠点等において、各機関の案内看板等とも連携し、道路案内標識の英語表記改善を推進した。
 加えて、船旅に係る新サービス創出の促進を図るため、28年4月より、「船旅活性化モデル地区」での旅客船事業の規制を弾力化する運用を開始した(29年3月末現在13地区を設定)。
 過疎地域等における観光客の交通手段を確保するため、「自家用有償旅客運送制度」の対象を国家戦略特別区域において訪日外国人をはじめとする観光客に拡大した。

(6)地方空港のゲートウェイ機能強化とLCC就航促進
 羽田空港の飛行経路見直しに必要な施設整備、成田空港の高速離脱誘導路等の整備、関西空港のCIQ施設の整備、新千歳空港の発着枠の拡大等、空港発着容量拡大等の取組みを進めた。
 また、民間の知恵と資金の活用を図ることにより空港の活性化を目指すため、高松空港、北海道内の複数空港等、空港運営の民間委託に向けた検討・準備を進めた。
 さらに、航空会社の新規路線開設・就航を促すため、各国の主要な航空会社や空港等が参加する「World Routes 2016」等の商談会へ出展し、商談を実施した。

(7)クルーズ船受入の更なる拡充
 観光ビジョンに掲げた「訪日クルーズ旅客を2020年に500万人」という目標の実現のため、既存ストックを活用して大型クルーズ船を受け入れるための係船柱、防舷材等の整備やクルーズ船社と港湾管理者の「マッチング」を図る「クルーズ船寄港地マッチングサービス」の提供開始など、クルーズ船寄港の「お断りゼロ」に向けた取組みを行った。
 また、新たに創設した民間事業者による旅客施設の整備等に対する無利子貸付制度の活用を促進するとともに、国土交通大臣が指定した国際旅客船拠点港湾において、旅客施設等を整備し一般公衆の利用に供する民間事業者に対し、岸壁の優先使用などを認める協定制度の創設等を内容とする「港湾法の一部を改正する法律案」を平成29年3月に国会に提出した。
 さらに、シンガポール及びタイにおいての現地旅行会社等を対象としたセミナーや、「全国クルーズ活性化会議」と連携した、クルーズ船社と港湾管理者等との商談会を開催したほか、港湾施設の諸元や寄港地周辺の観光情報を一元的に発信するウェブサイトの充実を図った。

(8)公共交通利用環境の革新
 訪日外国人旅行者等の高速バス利用を促進するため、外国人向け情報サイト「高速バス情報プラットフォーム- Japan Bus-Gateway -」を開設した。
 また、全国の公共交通機関を網羅した経路検索を可能にするため、交通事業者と経路検索サービス提供事業者等との間で、経路検索に必要な情報の受渡を効率的に行う手法等について検討を開始した。
 平成28年度中に、東京23区内の鉄道全駅での駅ナンバリングが完成したほか、2020年度目途での大都市バス路線におけるアルファベット・数字表記等のナンバリングの実施に向け検討を進めた。
 海外の主要都市に比べて高い水準にあるタクシーの初乗り運賃を引き下げ、訪日外国人の観光需要や高齢者等の日常生活需要の喚起を図るため、東京都内4カ所で実証実験を行った上で、29年1月より、東京地区におけるタクシー初乗り運賃の引き下げを行った。
 訪日外国人旅行者が鉄道等で大きな荷物を持ち運ぶ不便を解消するため、「手ぶら観光」共通ロゴマークを活用し、空港・駅等で荷物の一時預かり、空港・ホテル・海外の自宅等へ荷物を配送する手ぶら観光を促進した。(29年3月現在163箇所の手ぶら観光カウンターにおいて共通ロゴマークの使用を認定)

(9)オリパラに向けたユニバーサルデザインの推進
 平成29年2月にユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議において決定した「ユニバーサルデザイン2020行動計画」に基づき、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機としてユニバーサルデザインの社会づくり(心のバリアフリー、街づくり)を推進し、大会以降のレガシーとして残していくため、交通バリアフリー基準・ガイドラインの改正内容の方向性の整理、観光地全体のバリアフリー状況についてのモデル的な評価の実施等を行った。
 また、バス・タクシーのバリアフリー車両導入促進を図ったほか、旅客船についてバリアフリー優良事例を収集し、情報発信を行った。
 28年1月に東京都内における「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた道路標識改善の取組方針」を策定するとともに、同年9月に千葉、埼玉、神奈川県内における同様の取組方針を策定し、英語表記改善、路線番号の活用、ピクトグラム・反転文字の活用等による道路標識の改善に取り組んだ。
 さらに、全国の主要鉄道駅や観光地周辺における道路について、駅前広場等の歩行空間のユニバーサルデザイン化を重点的に支援した。
 加えて、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会関連駅へのエレベーターの増設やホームドアの整備などのバリアフリー化について支援した。
 空港においては、旅客ターミナルビルの対応に関する数値目標を設定するとともに、旅客利便性を向上させるため、羽田空港国際線ターミナルのタクシー乗り場再配置等を実施した。
 観光案内所においては、高齢者・障害者等を含む誰もが旅行を楽しむことができる環境を整備するため、バリアフリー旅行相談窓口機能を付加するモデル構築に取り組んだ。


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