■2 自動車運送事業等の動向と施策
(1)旅客自動車運送事業
1)乗合バス事業
乗合バスの輸送人員及び収入は、人口が増加した大都市部において若干の増加がみられるものの、地方部においてはモータリゼーションの進展等に伴う自家用自動車の普及等により、依然として輸送需要の減少が続いており、乗合バスを取り巻く環境は極めて厳しい状況が続いている。
図表II-6-3-1 乗合バスの輸送人員、営業収入の推移
2)貸切バス事業
貸切バス事業については、平成12年2月の規制緩和後、低廉で多様なバスツアーが催行されるなど、利用者へのサービスの向上が図られる一方で、事業者数の増加に伴い競争は激化している。また、団体旅行の小口化、旅行商品の低価格化等により運送収入は減少傾向だったが、安全コストが適切に反映された新運賃・料金制度の導入や訪日外国人旅行者の増加等により、増加傾向に転じており、貸切バス事業を取り巻く環境は、改善しつつある。
図表II-6-3-2 貸切バス事業の概況
こうした中、28年1月に軽井沢スキーバス事故が発生し、同事故を受けて開催された「軽井沢スキーバス事故対策検討委員会」において取りまとめられた総合的な対策を踏まえ、貸切バス事業者等の遵守事項の強化等、安全・安心な貸切バスの運行を確保するための取組みを進めている。
3)タクシー事業
タクシー事業については、運転者の労働条件の改善やタクシーのサービス水準の向上等を実現するため、「特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法」が、26年1月に施行された。
図表II-6-3-3 ハイヤー・タクシーの日車営収等の推移
国土交通省では、法律の規定に基づき、特定地域(27地域)及び準特定地域(116地域)を指定し、供給過剰状態の適正化や需要を喚起する活性化を進めることにより、タクシー事業における生産性の向上を図ることとしている。
(2)自動車運転代行業
自動車運転代行業は、飲酒時の代替交通手段として活用されており、平成28年12月末現在、自動車運転代行業者は8,916者となっている。国土交通省では、自動車運転代行業の更なる健全化を図るため、24年3月に警察庁と連携した「安全・安心な利用に向けた自動車運転代行業の更なる健全化対策」を策定し、各種の施策を推進しているところである。さらに国土交通省では、自動車運転代行業の利用者保護の一層の確保を図るため、28年3月に「自動車運転代行業における適正な業務運営に向けた「利用者保護」に関する諸課題への対策」を策定し、28年4月から順次各種の施策を推進しているところである。
(3)貨物自動車運送事業
貨物自動車運送事業者数は長期にわたり増加していたが、平成20年度以降は約63,000者とほぼ横ばいで推移している。
図表II-6-3-4 トラック事業者数の推移
貨物自動車運送事業者の約99.9%は中小事業者であり、荷主等に対して立場が弱いことから、適正な運賃が収受できない、荷主都合の待ち時間を押しつけられている等の課題がある。このため、28年度は27年度より開催している協議会の枠組みの中で、貨物自動車運送事業者と荷主との協働による待機時間の削減等、長時間労働改善のためのパイロット事業を実施するとともに、「トラック運送業の適正運賃・料金検討会」を設置し、適正運賃・料金の収受に向けた議論を開始した。
また、貨物自動車運送事業者の取引条件改善に向けた取組みや生産性向上のための事業を実施した。
貨物自動車運送業界の魅力を向上させるためには、働き方改革を実現することが重要であるため、引き続きこれらの施策を総合的に実施していく。
(4)自動車運送事業等の担い手確保・育成
ヒト・モノの輸送を担っている自動車運送事業等(トラック事業、バス事業及びタクシー事業並びにこれらの事業の安全確保に貢献する自動車整備業)は、日本経済及び地域の移動手段の確保を支える重要な社会基盤産業である。
しかしながら、自動車運送事業等の就業構造をみると、総じて中高年層の男性に依存した状態であり、女性の比率はわずか2%程度に留まっている。こうした状態が続けば、将来的に深刻な担い手不足に陥る懸念がある。
図表II-6-3-5 自動車運送事業等における就業構造
こうした状況を踏まえ、平成27年を自動車運送事業等における「人材確保・育成元年」と位置づけ、業種横断的に現状の分析や課題の整理、若手や女性の活躍促進等の取組みを行った。
トラックについては、中継輸送の普及・実用化に向けた課題・方策について取りまとめるとともに、「準中型自動車免許」制度の周知や「トラガール促進プロジェクトサイト」等を活用した情報発信や経営者への啓発強化を行う等、担い手を確保するための対策に取り組んでいる。
また、バスについては、若年層や女性の求職者向けのチラシ・リーフレットを作成し、求職者に対してバス運転者を就職先の一つとしてもらえるようPRするとともに、事業者がバス運転者を募集する際や育成していく際の手引き書を作成することで、バス運転者の担い手確保・育成に努めている。
また、タクシーについては、平成28年6月に「女性ドライバー応援企業」認定制度を創設し、女性ドライバーの採用に向けた取組みや、子育て中の女性が働き続けることのできる環境整備を行っている事業者を支援・PRすることにより、女性の新規就労・定着を図っていくこととしている。
さらに、自動車整備については、官民が協力して、高等学校訪問やポスター等による女性・若者への整備士のPRやイメージの向上に取り組むとともに、有識者検討会で実施した労働環境・待遇に関する実態調査結果を踏まえ、関係者と連携して事業形態・規模等に応じた対策を検討する。