第5節 危機管理・安全保障対策

■3 海上における治安の確保

(1)テロ対策の推進
 テロの未然防止措置として、原子力発電所や石油コンビナート等の臨海部重要施設に対して、巡視船艇・航空機による監視警戒を行っているほか、多くの人が集まる旅客ターミナル、フェリー等のいわゆるソフトターゲットに重点を置いた監視警戒を実施している。
 また、事業者等に対する自主警備の徹底の指導、乗客等に対するテロへの危機意識の向上や不審事象の早期通報の呼びかけ、合同テロ対策訓練の実施等、関係機関や地域との緊密な連携のもと、官民一体となってテロ対策に取り組んでいる。
 平成28年度については、伊勢志摩サミット等の開催に伴い、重点的にテロ対策の推進を図ったほか、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向け、テロ対策の強化を検討中である。

(2)不審船・工作船対策の推進
 不審船・工作船は、我が国領域内における重大凶悪な犯罪に関与している疑いがあり、その目的や活動内容を明らかにするため、確実に停船させ、立入検査を実施し、犯罪がある場合は適切に犯罪捜査を行う必要がある。このため、不審船・工作船への対応は、関係省庁と連携しつつ、警察機関である海上保安庁が第一に対処することとしている。
 海上保安庁では、各種訓練を実施するとともに、関係機関等との情報交換を緊密に行うことにより、不審船・工作船の早期発見及び対応能力の維持・向上に努めている。

(3)海上犯罪対策の推進
 最近の海上犯罪の傾向として、国内密漁事犯では、密漁者と買受業者が手を組んだ組織的な形態で行われる場合や、暴力団が資金源として関与する場合などが見受けられるほか、処理費用の支払いを逃れるために廃棄物を海上に不法投棄する等の環境事犯も依然として発生しており、その態様も悪質・巧妙化している。さらに、外国漁船による違法操業事案も依然として発生しており、取締りを逃れるために、夜陰に乗じて違法操業を行うものなど、その態様も悪質・巧妙化している。その他、密輸・密航事犯の中には、国際犯罪組織が関与するものも発生している。各種海上犯罪については、依然として予断を許さない状況にあり、海上保安庁では、巡視船艇・航空機を効率的かつ効果的に運用することで監視取締りや犯罪情報の収集・分析、立入検査を強化するとともに、国内外の関係機関との情報交換等、効果的な対策を講じ、厳正かつ的確な海上犯罪対策に努めている。


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