第2節 国際交渉・連携等の推進

■3 各分野における多国間・二国間国際交渉・連携の取組み

(1)国土政策分野
 韓国との間で定期的に局長級の二国間会合を開催し、国土・地域政策及び土地政策の両国間の類似課題に関する情報交換を実施している。今後は、急速な経済成長及び都市化に直面するアジア諸国等における国土計画のニーズの高まり、ハビタットIIIにおける戦略的な国土政策の推進に関する国際的な合意を踏まえ、我が国の国土・地域政策の海外展開を積極的に推進していく。

(2)都市分野
 平成28年度は、第17回都市計画、都市整備に関する日中交流会議を開催し、両国の政府及び企業が発表を行った。
 ミャンマーに対しては、同国建設省の要請を受け、都市・地域開発計画法及び同法施行規則の策定支援を実施するとともに、JICA専門家の派遣等を通じて技術協力を行った。

(3)水分野
 水問題は地球規模の問題であるという共通認識のもと、国際会議等において問題解決に向けた議論が行われている。平成28年7月にシンガポールで「ASEAN+3水担当大臣フォーラム」、同年10月にオーストラリアで「IWA世界会議」等の国際会議での議論に参画し、我が国の水資源管理施策などに関するメッセージを発信した。
 また、アジア河川流域機関ネットワーク(NARBO)と連携し、統合水資源管理(IWRM)の普及・促進に貢献している。
 さらに、米国及び韓国とは、河川・砂防・水資源管理等に係る二国間会合を開催し、各国の現状や先進的取組みの共有等を行った。
 このほか、地方公共団体、日本下水道事業団、国土交通省等による連合体である、「水・環境ソリューションハブ」が、セミナーや研修等を通じて、途上国に下水道事業のノウハウを提供している。

(4)防災分野
 世界の水災害被害の軽減に向けて、災害予防が持続可能な開発の鍵であるという共通認識を形成するため、我が国の経験・技術を発信するとともに、水災害予防の強化に関する国際連帯の形成に努めている。また、国立研究開発法人土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)では、総合洪水解析システム(IFAS)や降雨流出氾濫(RRI)等のモデルや開発及びリスクマネジメントの研究、人材育成プログラムの実施、UNESCOやアジア開発銀行のプロジェクトへの参画、国際洪水イニシアチブ(IFI)事務局の活動を通じ、水災害に脆弱な国・地域を対象にした技術協力・国際支援を実施している。
 この他、日EU双方の防災対策の充実を目的として、平成25年3月にEU防災総局と国土交通省の間で交換した書簡に基づき、28年12月には実務者級会合を開催した。また、砂防分野においては、イタリア、韓国、スイス及びオーストリアと砂防技術に係る二国間会議を開催しているほか、ブラジル、スリランカに対して、JICA専門家の派遣等を通じて土砂災害からの警戒避難や、土地利用規制などの技術協力を行っている。

(5)道路分野
 世界道路協会(PIARC)では、各技術委員会等に積極的に参画し、今後の方針策定をリードしている。また、平成28年9月には、南アフリカ共和国・ケープタウン市で開催されたPIARC年次総会において、ETC2.0を用いて収集した急ブレーキ挙動や速度データを地方自治体に提供し、事前に急所を特定して効果的な対策を実施するビッグデータを活用した交通安全対策を推進していくことを紹介した。

(6)住宅・建築分野
 国際建築規制協力委員会(IRCC)を東京で開催するなど、建築基準等に係る国際動向について関係国間での情報交換を行った。
 二国間としては、ドイツ、フランス、インド、インドネシア、ミャンマーとの会合を開催し、住宅政策、省エネ建築、住宅金融等に関する情報交換等を行った。
 ミャンマー・カンボジアに対しては、両国間の覚書等に基づきJICA専門家の派遣等を通じて幅広く技術協力を行った。

(7)自動車分野
 平成27年の第13回日ASEAN交通大臣会合にて承認された、「自動車基準・認証制度をはじめとした包括的な交通安全・環境施策に関するASEAN新協力プログラム」に基づき、28年10月にアジア地域官民共同フォーラムを開催し、アジア地域における基準調和・相互認証活動について情報交換を行った。また、昨年に引き続き、同プログラムに基づくマレーシアにおける自動車の交通安全・環境保全施策策定プロセスを改善する事業を実施し、必要となる情報・意見交換を行った。

(8)海事分野
 海事分野では、IMOにおける世界的な議題への対応の他、局長級会談等を通じた二国間の議題への対応を行っている。平成28年度には米国と局長級会談を開催し、シップリサイクル条約発効促進、造船市場における供給能力過剰問題、温室効果ガス排出削減対策、バラスト水管理及びサイバーセキュリティ等について情報共有や意見交換を実施した。この他、マラッカ・シンガポール海峡の共同水路測量調査が日ASEAN統合基金事業として、同年7月に承認されたほか、26年の日ASEAN交通大臣会合で承認された「日ASEANクルーズ振興戦略」に基づき、シンガポール及びタイにて現地旅行会社等を対象としたセミナーを開催した。

(9)港湾分野
 北東アジア港湾局長会議やAPEC交通WG、国際航路協会(PIANC)等の国際会議の場を通じて、最近の港湾行政に関する情報交換や、クルーズの促進、我が国の技術基準の海外展開の推進等を実施している。
 ベトナム国の港湾施設の国家技術基準策定における協力に係る覚書に基づき、行政官及び専門家会合を実施した。

(10)航空分野
 平成28年3月、フランスとの「民間航空分野における技術協力に関する覚書」に基づき、フランス・トゥールーズにて第2回日仏協力作業部会を開催し、今後も定期的な会合の開催など、協力を進めていくこととした。
 また、8月には、スリランカにおいて第53回アジア太平洋航空局長会議が開催され、「環境に配慮した安心、安全そして効率的な航空システムの促進」をテーマとして、航空全般に関するアジア太平洋地域各国の取組みについて意見交換を行った。

(11)物流分野
 平成28年7月に開催された第6回日中韓物流大臣会合における合意に基づき、シャーシの相互通行の拡大、北東アジア物流情報サービスネットワーク(NEAL-NET)の日中韓における対象港湾の拡大やASEAN諸国等への拡大に向けた検討等、日中韓3国間の物流分野における協力を推進している。
 また、日ASEAN交通連携の枠組みの下、二国間政策対話において物流環境の改善に係る協議等を行っており、10月にはミャンマーと、29年1月にはタイと、物流政策対話を開催した。また、3月には、ASEANにおける優秀な現地人材の確保のため、学生等を対象とした人材育成事業をラオスにおいて実施した。

(12)地理空間情報分野
 地球規模の地理空間情報管理に関する国連専門家委員会(UN-GGIM)に職員を派遣し、地球規模の測地基準座標系(GGRF)の構築に向けた国連総会での決議に貢献するとともに、同アジア太平洋地域委員会(UN-GGIM-AP)に職員を会長として派遣し、当該地域の地理空間情報の整備・活用に寄与している。
 また、平成27年2月の日タイ首脳会談の共同プレス声明を踏まえ、国土交通省からは専門家を派遣する等して、タイの統合型電子基準点網の構築に向けた技術的支援を実施している。

(13)気象・地震津波分野
 世界気象機関(WMO)の枠組みの下、気象観測データや技術情報の交換に加え、我が国の技術を活かした台風情報等を提供している。また、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)政府間海洋学委員会(IOC)の枠組みの下、北西太平洋における津波情報を各国に提供している。

(14)海上保安分野
 北太平洋海上保安フォーラム(日本、カナダ、中国、韓国、ロシア及び米国6カ国)及びアジア海上保安機関長官級会合(アジア19カ国・1地域)並びに二国間長官級会合、連携訓練等を通じて、捜索救助、海上セキュリティ対策等の各分野で海上保安機関間の連携・協力を積極的に推進している。
 また、海上保安庁は国際水路機関(IHO)の委員会等における海図作製に関する基準の策定、コスパス・サーサット機構における北西太平洋地域の取りまとめ、国際航路標識協会(IALA)の委員会等におけるVDESの開発に係る検討、アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)に基づく情報共有センターへの職員の派遣など、国際機関へ積極的に参画している。このほか、開発途上国における海上保安分野の能力向上支援の取組み等を通じて、国際貢献を果たしている。


注 VHF Data Exchange Systemの略


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