第1節 我が国を取り巻く環境と社会経済状況 ■1 我が国の社会経済状況 (1)少子高齢化社会、人口減少  少子高齢化の進行により、我が国の総人口は2008年をピークに減少に転じており、生産年齢人口も1995年をピークに減少に転じている。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(出生中位(死亡中位)推計)によると、総人口は2065年には8,808万人にまで減少すると見込まれており、生産年齢人口(15〜64歳)は2065年には4,529万人にまで減少すると見込まれている(図表1-1-1)。 図表1-1-1 我が国の人口推移  また、国土交通省の関連分野を見てみると、建設分野においては、建設現場で働いている技能労働者約326万人(2016年時点)のうち、55歳以上が約1/3を占める等、労働者の高齢化が進行している(図表1-1-2)。 図表1-1-2 建設業における高齢者の大量離職の見通し  さらに、今後、高齢者の大量離職の可能性に直面し、中長期的には担い手不足が生じることが懸念される。  また、交通運輸分野においても、鉄道、自動車、造船、海運、港湾、航空、物流の各分野において技能労働者の担い手不足や技術継承が懸念されている。  このような人口減少に伴う供給制約や担い手不足を克服するため、一層の担い手育成を進めるとともに、イノベーションによる生産性の向上が必須の状況である。 (2)経済成長率の鈍化  2016年度のGDPの動向については、名目及び実質ともに成長率がプラスとなるなど堅調な動きとなっている。中長期的に見れば、近年のGDP成長率は、1990年代以降おおむね0〜2%で推移している(図表1-1-3)。 図表1-1-3 我が国のGDPの推移 (3)科学技術の大きな進展  21世紀に入り科学技術は様々な分野で大きな進展を遂げてきた。特に、情報通信技術(ICT)の進展は目覚ましく、グローバルな環境において人、情報、モノ、資本等、あらゆるものが瞬時に結びつき、相互に影響を与え合う時代が始まっている。ICTの進展を背景に、ロボットや人工知能(AI)(注1)が産業や身近な商品・サービスなど生活の様々な場面に使われ、生産性の向上や人手不足の解消が期待されている。また、インターネットを媒体として様々な情報とモノがつながるIoT(注2)等が進められている(図表1-1-4)。 図表1-1-4 ICT等の科学技術の進展  一方、急速なICTの進展に伴い、サイバー攻撃が増加、巧妙化し、国民生活、社会経済活動の脅威となっている(図表1-1-5)。 図表1-1-5 サイバー空間における探索行為等  このような状況を踏まえ、「日本再興戦略2016」では「今後の生産性革命を主導する最大の鍵は、IoT、ビッグデータ、人工知能、ロボット・センサーの技術的ブレークスルーを活用する「第4次産業革命」である」とされており、「第5期科学技術基本計画」では変革の流れを社会にまで適用し「超スマート社会(Society5.0)(注3)」を目指すことが示されている(図表1-1-6)。 図表1-1-6 Society5.0イメージ 注1 Artificial Intelligence 注2 Internet of Things 注3 第5期科学技術基本計画によると、超スマート社会とは「必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会」とされている。また、Society5.0とは「狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続くような新たな社会を生み出す変革を科学技術イノベーションが先導していく、という意味を持つ。」とされている。