コラム 景気循環とイノベーション  シュンペーターは、イノベーションという概念によって、コンドラチェフのいわゆる長期波動説を説明しようと試みたとされています。コンドラチェフの長期波動説の第1波は1780年代末から1850年代初めまで、第2波は1850年代初めから90年代まで、第3波は1890年代から1920年代ごろまでとされていますが、シュンペーターによれば、こうした現象は、第1波においては産業革命およびその浸透の過程、第2波においては蒸気機関を軸とした鉄道の建設と鋼鉄の時代、第3波においては、当時第2次産業革命ともてはやされた電気・化学・自動車の時代としてとらえることによって説明されます。つまり、重要な発明が、旧来の技術を圧倒して企業のなかに取り入れられて、次から次へと関連部門に波及して新投資をよび、新しい企業経営や新しい産業が群生的におこることによって、景気の長期的上昇がもたらされると考えられます。  また、現在を第4の波として、これからナノテクノロジー、ライフサイエンス、ビッグデータ、ロボティクス、AIがけん引する第5の波が起きてくるとする考えもあります。 図表1-1-15 景気の波とそれを支えたイノベーション