第3節 産業の活性化 ■1 鉄道関連産業の動向と施策 (1)鉄道事業 1)鉄道事業の動向と施策  平成27年度の鉄道旅客の輸送人員は、前年度と比較して増加している。JRでは、新幹線輸送は増加、在来線輸送も増加しており、民営鉄道も増加した。  27年度の鉄道貨物の年間輸送トン数、輸送トンキロは、コンテナ輸送については、前年度と比べて増加、車扱輸送については、若干の微減となった。  各鉄道事業者においては、鉄道の競争力向上、生活サービスとの連携等による更なる利便性の向上や、訪日外国人への対応として、案内表示の多言語化や路線名や駅名にアルファベットや数字を併記するナンバリング、無料公衆無線LANサービスの提供などを進めている。  また、13年にJR東日本が「Suica」を導入してから全国で交通系ICカードの普及が進んでいる。25年3月からは、JRと主な民鉄等の各エリアで導入されている10種類の交通系ICカードの全国相互利用が開始された。今後も順次、導入事業者やエリアが拡大するなど、更なる利用者の利便性の向上及び地域の活性化が期待される。 2)JRの完全民営化に向けた取組み  かつての国鉄は、公社制度の下、全国一元的な組織であったため、適切な経営管理や、地域の実情に即した運営がなされなかったことなどから、巨額の長期債務を抱え、経営が破綻した。このため、昭和62年4月に国鉄を分割民営化し、鉄道事業の再生が行われた。平成29年4月にはJR各社の発足から30年を迎えた。  国鉄の分割民営化によって、効率的で責任のある経営ができる体制が整えられた結果、全体として鉄道サービスの信頼性や快適性が格段に向上し、経営面でも、18年までにJR東日本、JR西日本及びJR東海が完全民営化し、28年10月にはJR九州が上場を果たすなど、国鉄改革の所期の目的を果たしつつある。  一方で、JR北海道、JR四国及びJR貨物については、未だ上場の目途が立っていない状況にあり、国としても、設備投資に対する助成や無利子貸付など、各社に対して経営自立に向けた様々な支援を行っている。  このうち、JR北海道は、地域における人口減少やマイカー等の他の交通手段の発達により、路線によっては輸送人員が大きく減少し、鉄道の特性を発揮しづらい路線が増加している厳しい状況に置かれている。国としても、北海道庁と連携しながら、関係者間の協議に参画し、地域における持続可能な交通体系の構築に向けた対応につき、検討していく。 (2)鉄道車両工業  鉄道新造車両の生産金額は、国内向けは横ばい傾向であり、一方、輸出向けはその年の受注状況によって波がある。平成27年度の生産金額は1,816億円(1,737両)であった。生産金額の構成比は国内向け80.6%(1,463億円)、輸出向け19.4%(353億円)であり、26年度比は国内向け6.7%減少、輸出向け205.2%増加であった。  また、鉄道車両部品(動力発生装置、台車等)の生産金額は3,236億円、信号保安装置(列車自動制御装置用品、電気連動装置等)の生産金額は1,145億円となっている。  車両メーカー等は、鉄道事業者と連携し、高速化、安全性・快適性等の向上、低騒音・バリアフリーといった様々な社会的ニーズを満たす車両の開発を進めているほか、昨今の海外案件の受注を契機として、米国や英国等で現地の生産拠点や保守拠点を設置、拡大している。