第1節 社会のすがたの変化

第1節 社会のすがたの変化

■1 社会経済の動向

(1)我が国の社会経済の現状
(少子高齢化・人口減少の進展)
 我が国における合計特殊出生率は、2005年に戦後最低の1.26となった後、2016年時点では1.44を記録するなど微増傾向にあるものの、出生数は過去最低の約98万人となっている(図表1-1-1)。
 
図表1-1-1 出生数及び合計特殊出生率の推移
図表1-1-1 出生数及び合計特殊出生率の推移
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 また、我が国の高齢化率注1は、2017年に27.7%と過去最高となっており注2、さらに、諸外国と比較すると、世界で最も高いことがわかる(図表1-1-2)。我が国の高齢化率は、2025年には3割を超え、2050年には4割弱にまで達するなど、これまでにない超高齢社会を迎えると推計されている。
 
図表1-1-2 諸外国における高齢化率の推移
図表1-1-2 諸外国における高齢化率の推移
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 少子高齢化の進行により、我が国の総人口は2008年をピークに減少に転じており、生産年齢人口(15〜64歳)も1995年をピークに減少に転じている。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(出生中位(死亡中位)推計)によると、2065年には総人口は約8,808万人にまで、生産年齢人口は約4,529万人にまで減少すると見込まれている(図表1-1-3)。
 
図表1-1-3 我が国の人口推移
図表1-1-3 我が国の人口推移
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(我が国の経済状況)
 我が国のGDPの推移を見ると、近年の成長率は1980年代と比べて低下しており(図表1-1-4)、また、我が国と世界の各国・地域の実質GDP成長率の推移を比較すると、我が国の実質GDP成長率は低い位置にあると考えられる(図表1-1-5)。
 
図表1-1-4 我が国のGDPの推移
図表1-1-4 我が国のGDPの推移
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図表1-1-5 IMFの主要国・地域の実質GDP成長率の推移
図表1-1-5 IMFの主要国・地域の実質GDP成長率の推移
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 一方、中国、ASEAN−5、インド等アジア諸国の成長はめざましく、世界経済を牽引し、今後更なる成長が見込まれている(図表1-1-6)。我が国としてはこれらの国々と良好な関係を維持・構築するとともに、この地域の活力を取り込んでいくことが重要である。
 
図表1-1-6 世界のGDP成長率(2018年(推計))
図表1-1-6 世界のGDP成長率(2018年(推計))

(我が国の経済の将来予測)
 経済財政諮問会議の報告によれば、今世紀後半の実質GDP成長率は、1)現在の傾向で人口減少が続くとともに生産性が停滞した場合には、年平均0.2%程度のマイナスになると見込まれている。一方、2)人口が1億人程度で安定し、女性や高齢者の労働参加が進むとともに、生産性が向上する場合には、年平均2.0%程度のプラスになると見込まれている(図表1-1-7)。
 このようなシナリオ等を踏まえると、低迷する我が国の経済を、今後、維持・活性化させるためには、引き続き女性や高齢者等の就業を積極的に促進するなど労働に従事する人口を増加させるとともに、技術革新等による労働生産性の向上等が必要である。
 
図表1-1-7 将来の人口と実質GDP成長率の推計
図表1-1-7 将来の人口と実質GDP成長率の推計

(2)我が国の労働の現状
(労働力人口の現状)
 我が国の労働力人口は、2014年時点では約6,587万人であるが、今後、ゼロ成長に近い経済成長で、労働市場への参加が進まない場合、2030年には約787万人減少するとされている(図表1-1-8)。
 
図表1-1-8 労働力人口の見通し
図表1-1-8 労働力人口の見通し
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 また、現在、就業を希望する非労働力人口は女性や高齢者など約300万人存在する(図表1-1-9)。
 
図表1-1-9 就業を希望する非労働力人口
図表1-1-9 就業を希望する非労働力人口
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■高齢者
 2017年の労働力人口は、約6,720万人であり、そのうち65〜69歳の者は約454万人、70歳以上の者は約367万人であることから、65歳以上の労働力人口はあわせて約822万人となる。労働力人口総数に占める65歳以上の者の割合は12.2%となっており、上昇し続けている(図表1-1-10)。
 
図表1-1-10 労働力人口の推移
図表1-1-10 労働力人口の推移
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■女性
 女性の労働力率を年齢階級別にみると、結婚・出産期に当たる年代に一旦低下し育児が落ち着いた時期に再び上昇するという、いわゆる「M字カーブ」の状態になっている。しかし、育児休業の普及等により、結婚・出産期に当たる年代の女性の労働力率は高くなり、「M字カーブ」は改善傾向にある(図表1-1-11)。
 
図表1-1-11 女性の年齢階級別労働力率の推移
図表1-1-11 女性の年齢階級別労働力率の推移
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 一方で、諸外国を見ると、韓国では「M字カーブ」を描いているものの、他の欧米諸国では描いていない(図表1-1-12)。
 
図表1-1-12 主要国における女性の年齢階級別労働力率
図表1-1-12 主要国における女性の年齢階級別労働力率
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■外国人
 日本で働く外国人労働者数は、2017年10月末で、約128万人となっている(図表1-1-14)ほか、訪日外国人旅行者数は約2,869万人を記録するなど、いずれも過去最高となっており、より一層の国際化が進んでいることがわかる。
 現在、専門的・技術的分野の在留資格を持つ外国人については、積極的に受入れを行っているところであるが、それ以外の外国人についても、「未来投資戦略2017(平成29年6月9日閣議決定)」において、「経済・社会基盤の持続可能性を確保していくため、真に必要な分野に着目しつつ、外国人材受入れの在り方について、総合的かつ具体的な検討」を進めていくこととされている。
 
図表1-1-14 外国人労働者数
図表1-1-14 外国人労働者数
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■障害者等
 平成29年6月1日時点において、民間企業注4における「障害のある人」の雇用者数は、14年連続で過去最高を更新し、495,795.0人注5(前年同日474,374.0人)となっている(図表1-1-15)。
 
図表1-1-15 民間企業における障害者の雇用状況
図表1-1-15 民間企業における障害者の雇用状況
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(労働生産性の現状)
 日本の労働の質は一般的に高いと言われている。一方、労働生産性については、OECD加盟諸国における時間当たり注6の比較によると、日本は35カ国中20位であって、主要先進7カ国の中では最下位の状況が続いている(図表1-1-16)など、国際的に低い状況にあると考えられる。
 
図表1-1-16 主要先進7カ国の時間あたり労働生産性の順位の変遷
図表1-1-16 主要先進7カ国の時間あたり労働生産性の順位の変遷
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 生産性の向上には、ビッグデータや人工知能(AI)の活用をはじめとした第4次産業革命注7によるイノベーションが重要である一方で、我が国企業におけるIoTの導入の取組み等は他国に比べると遅れている(図表1-1-17)。
 
図表1-1-17 IoT導入状況(2015年)と今後の導入意向(2020年)
図表1-1-17 IoT導入状況(2015年)と今後の導入意向(2020年)
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(3)我が国の余暇の現状
(余暇の取得とその過ごし方の現状)
 我が国の余暇について、働き方改革の下、有給休暇の積極的な取得を推奨されているものの、未だその消化率は世界最下位となっている(図表1-1-18)。
 
図表1-1-18 有給休暇取得率の国際比較
図表1-1-18 有給休暇取得率の国際比較

 また、休暇を取得した際には、自宅で休養する人が多い(図表1-1-19)うえ、休暇の間も仕事のメールを確認する人が多い(図表1-1-20)など、休暇の過ごし方が十分に充実していないことがうかがえる。
 
図表1-1-19 実際の休日の過ごし方
図表1-1-19 実際の休日の過ごし方
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図表1-1-20 休暇中でも仕事のメールを見てしまうと回答している人の割合
図表1-1-20 休暇中でも仕事のメールを見てしまうと回答している人の割合


注1 総人口に占める高齢人口(65歳以上)の割合。
注2 総務省「人口推計」(2017年10月1日現在)
注3 全要素生産性(Total Factor Productivity、TFP)の略称。経済成長(GDP成長)を生み出す要因のひとつで、資本や労働といった量的な生産要素の増加以外の質的な成長要因のこと。技術進歩や生産の効率化などがTFPに該当する。
注4 常用雇用労働者数50人以上の民間企業。当該企業には身体に障害のある人または知的障害のある人を1人以上雇用する義務があり、障害者雇用の状況を厚生労働省に毎年報告することになっている。
注5 障害のある人の雇用者数をカウントするにあたっては、法律上、「重度身体障害者及び重度知的障害者」については、1人を2人に相当するものとしており、「重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者」については、1人を0.5人に相当するものとしている。
注6 労働生産性を国際的に比較するにあたっては付加価値(国レベルではGDPに相当)をベースとする以下の方式により、労働生産性を計測している。
労働生産性=GDP(購買力平価(PPP) により換算)/(就業者数×労働時間)
また、購買力平価とは、物価水準などを考慮した各国通貨の実質的な購買力を交換レートで表したものである。
注7 第4次産業革命とは、次の要素を核とする技術革新を指す。1)IoT及びビッグデータ(工場の機械の稼働状況から、交通、気象、個人の健康状況まで様々な情報がデータ化され、それらをネットワークでつなげてまとめ、これを解析・利用)2)AI(人間がコンピューターに対してあらかじめ分析上注目すべき要素をすべて与えなくとも、コンピューター自らが学習し、一定の判断を行うことが可能となっている。加えて、従来のロボット技術も、さらに複雑な作業が可能となっているほか、3Dプリンターの発展により、省スペースで複雑な工作物の製造も可能となっている。)


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