第2節 国土のすがたの変化

■3 地方のすがたの変化

 次に、地方について、そのすがたの変化を概観する。なお、ここで、地方とは主に人口5万人未満の市区町村(過疎地域を含む)を想定している。

(1)地方における人口の変化と今後の展望
 地方においては、65歳未満の人口の減少とともに、65歳以上の人口もすでに維持又は減少しており、今後は、更なる人口減少・高齢化に直面することが予想される(図表1-2-10)。こうした今後の人口変化について、より詳細に分析すると、人口規模が小さな市区町村ほど、人口減少率が大きくなっている(図表1-2-19)。具体的には、都市における人口減少率は最大でも28%であるにも関わらず、地方においては、人口1〜5万人の市区町村では37%、1万人未満の市区町村では48%となっている。したがって、こうした人口減少傾向への対策が、依然として地方における大きな課題であると言える。
 
図表1-2-19 市区町村の人口規模別の人口減少率
図表1-2-19 市区町村の人口規模別の人口減少率
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(2)地方のライフスタイルの特徴
(継続する車依存)
 内閣府の世論調査によると、地方では、日常生活において鉄道やバスといった公共交通機関を利用する人は少なく、7割近くが日常の交通手段として自動車を利用している(図表1-2-21)。また、2005年から2015年にかけての、世帯当たり人員の増加率と、自家用乗用車の世帯当たり普及台数の増加率を比較すると、この10年間で車依存の傾向が弱まっているのは、三大都市圏を構成する都府県の一部のみであり、その他の道県においては、車依存の傾向が強まっている(図表1-2-22)。さらに、その中でも特に強くなっているのは、人口の少ない市町村を多く抱える地方の県が多い。
 
図表1-2-21 公共交通機関の利用に関する意識調査結果
図表1-2-21 公共交通機関の利用に関する意識調査結果
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図表1-2-22 世帯当たり人員の増加率と自家用乗用車の世帯当たり普及台数の増加率との関係
図表1-2-22 世帯当たり人員の増加率と自家用乗用車の世帯当たり普及台数の増加率との関係
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(運転を続ける高齢者)
 運転免許証を自主返納する高齢者の数は、近年、全国的に急増しているものの、人口規模の小さい市町村ほど自主返納する意識は低い(図表1-2-23、図表1-2-24)。このことから、地方で暮らす高齢者は、今後、加齢に伴う様々な身体機能の低下により、交通事故を起こす運動リスクが高まっていくと考えられるものの、生活利便性を維持するために車の運転をせざるを得ない状況が継続すると考えられる。
 
図表1-2-23 高齢者の運転免許証返納件数の推移
図表1-2-23	高齢者の運転免許証返納件数の推移
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図表1-2-24 高齢者の運転免許証の自主返納に関する意識調査結果
図表1-2-24	高齢者の運転免許証の自主返納に関する意識調査結果
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 以上から、今後、高齢化がより一層進行していく中で、こうした高齢者への交通手段の確保が課題になると考えられる。

(コミュニティ維持への懸念)
 内閣府の世論調査によると、町村において地域での付き合いをしている人の割合(「よく付き合っている」「ある程度付き合っている」の合計)は、2018年において70%となっており、1975年時点と比べるとその割合は減少しているが、大都市に比べると地域内のコミュニティが機能していることが読み取れる(図表1-2-25)。しかしながら、将来の人口減少が最も深刻なのは人口が少ない町村であることから(図表1-2-19)、そのコミュニティ機能をどう維持するかが今後ますます大きな課題となっていくと考えられる。
 
図表1-2-25 地域での付き合いの程度に関する意識調査結果
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